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まるで美術館、韓国で“商品のない店舗”が急増する理由

 3泊4日で韓国へ取材に行って来ました。そこでもっとも驚いたのが、“商品のないお店”が増えていることです。例えば、新沙洞にあるアイウエアブランドの「ジェントル・モンスター(GENTLE MONSTER)」は路面店にもかかわらず1階に商品がありません(笑)。すぐ近くのハンドクリーム専門店「チュンブリンス(TUMBURINS)」なんかも、ビル1棟を使ったお店に置いてある商品はたったの3つ(!)。弘大の「アーダーエラー(ADER ERROR)」も1階はもはや自宅を改装した美術館のような佇まいで、洋服は全て2階に集約されています。

 こうしたお店が増えている背景には、韓国人の“個の主張の強さ”があるんだと思います。現地取材を通じて、韓国人は自分の強い意志を持ち、それをオープンにすることが得意なように感じました。すごく象徴的だったのが、韓国ではネット広告に対する偏見がないという話です。日本では「ネット広告は宣伝だから信じない」という風潮がありますが、「韓国人はネット広告ですら情報ととらえ、自分でその内容を判断する。広告として表示された化粧品でさえ自分で使ってみるまで、その良し悪しを決めない」という現地で聞いた話には驚きました。

 そんな“個の強さ”がビジネスに直結するのは自然な流れです。そもそも、韓国には東大門市場というシステムがあり、誰でも1人でブランドを始めて有名になることができるので、自分の判断力がビジネスの全てになるのです。そして、自ら発信をしなければ、顧客も集まらないのです。だからこそ大企業と呼ばれる規模になってもオープンマインドで、まるでスタートアップ企業のような心構えを感じます。彼らは自社が成長していることをオープンにします。これもある意味セルフ・ブランディングだそうで、成長にともなってオフィスを移転したり、メディアに売り上げや成長率を公表したり、目に見える形でのアピールが上手なんです。

 たくさん出店をできるということは、成長している何よりの証です。いかに実店舗にお金をかけるかが1つの企業価値というか、信頼性でもあるのです。だからこそ、店頭に並べる商品の多寡に関わらず、お店には資金をつぎ込むのだそう。こうした店作りの裏側には、個人ブランドがたくさんある韓国において、みな差別化をしなければ競争に勝てないという本心もあるでしょう。しかも、こういったお店は間違いなく“インスタ映え”します。

 コスメブランドのアピール方法はもっとすごくて、例えば明洞なんかでは同じブランドの店舗が通りごとに、まるでコンビニかのごとく存在します。駅や街中、空港などで見る広告もほとんどがコスメブランド。ラグジュアリーブランドなんかは皆無です。どうやら複雑な交通網の韓国では通りごとに通行客層が異なるため、それを全取りしようとしているらしいんです。こうしたところでも、成長過程の企業の攻めっぷりを感じますよね。

 もちろん、みんながみんなこのような手法をとるわけではありません。一方でひっそりとビジネスを行う“職人系”のブランドもあります。このように、韓国には成功をオープンにして堂々とビジネスを展開するブランドもあれば、目立たない場所でひたすら世界観をアピールするショップもあります。しかし、そのほとんどが“個人発”のブランドであって、自分が意志を持ってクリエイションもビジネスも行うという点では共通しています。東大門市場という独特のシステムを抱える韓国において、誰もが“個の力”をフル活用してビジネスを展開するからこそ、トレンドが激しく入れ替わりながら、どんどん業界が活性化されているのだなと感心した4日間なのでした。