「WWDJAPAN」には美容ジャーナリストの齋藤薫さんによる連載「ビューティ業界へのオピニオン」がある。長年ビューティ業界に携わり化粧品メーカーからも絶大な信頼を得る美容ジャーナリストの齋藤さんがビューティ業界をさらに盛り立てるべく、さまざまな視点からの思いや提案が込められた内容は必見だ。(この記事は「WWDJAPAN」2025年12月22&29日合併号からの抜粋です)
化粧品の世界は全くもって不可解だ。大昔から“夢を売るもの”だったからか、真実が見えにくい。化粧品は角層より奥に効いてはいけないし入ってもいけない。なのに、真皮ケアが存在する宿命的矛盾。またエビデンスよりイメージが優先し、今やマーケティングよりSNSが優ってしまう。改めて思うのはこんなにも不確かな世界はないくらい。
そんな中で目にさせられたのが、資生堂の業績不振、過去最大の赤字を記録というニュース。業界最大手である以上に、ネガティブな報道が最もそぐわない“美の担い手”である分だけ、インパクトが強いからだろう。昨年から何度か書かれていたものの、今回は一般のマスコミでも大きく取り上げられた。正直、ひどく胸が痛んだ。業績不振に対してと言うより、このニュースによって資生堂のイメージがゆがめられてしまうことへの悲しみからだった。
言うまでもなく中国市場やトラベルリテール事業の減収、買収した米国ブランド「ドランク エレファント(DRUNK ELEPHANT)」の販売不振が主な要因。中国の需要に依存しすぎたのは事実だが、それは資生堂に限ったことではない。ただ海外ブランドをうまく成長させられないのは、以前もベアエッセンシャル買収の失敗があり、体質的な弱点と言わざるを得ない。もちろん“株主”には由々しき問題だけれど、こうした報道が、一般消費者の間で「資生堂の製品ってダメだよね」という空気を生んでいくとしたらあまりに残念なこと。美容マスコミにおいては全く逆の評価だからだ。皮肉にも業績悪化が顕著なこの5年は特に、やっぱり資生堂はとてつもない、研究開発の実力はもうダントツで、他の追随を全く許さないと。
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