ショーの後のバックステージに駆け込むと、2025-26年秋冬シーズンは多くのデザイナーが「不安で、不穏な時代」と語り始めた。果たして彼らは今をどのような時代と捉え、ゆえにどんな想いを込め、どんな洋服を作ったのか?彼らが見つめる現代と少し先の未来、そしてサステナビリティやZ世代との向き合い方など、4人のデザイナーに話を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年4月21日号からの抜粋です)
デムナ(BALENCIAGA)
アーティスティック・ディレクター

受章時はTシャツでも
バックステージではスーツ
“デムナ 2.0”になったんだ
前回のバックステージで語った、「次は、スタンダードに挑戦したい」を有言実行した。なぜなら、それが一番難しいから。「デムナのスタンダードってなんだろう?」と考え、ついにスーツにたどり着いた。作るのは難しいが、スーツこそ今のアーバンルック。男性でも女性でも、オンでもオフでも楽しめる。そして「スタンダードでも、他とは違うスーツってなんだろう?」を模索したんだ。中にはニットも着られるよう袖のパターンを変えたし、ダブルのパンツはハイウエストでもローウエストでも履ける。パターンメイキングという工夫こそ、アートな洋服よりもずっと今のファッションに必要だと考えた。結果、これまでで一番“着られる”コレクションに仕上がったと思う。
今シーズンのランウエイは、“迷路(maze)”。(入口と出口が一本道でつながっている)“迷宮(labyrinth)”ではなく、迷路だ。人生にはさまざまな選択肢があり、千差万別のゴールがあることを表現したかった。それぞれが決断を下し、導いた未来に対応しなくてはならない今の社会、そしてファッション業界と似ている。細いランウエイは、招いたゲストとの親密性も表現している(こちらの記事参照)。みんなには生地感や細かなディテールまで観察して欲しかった。細部への意識は、今のファッションに欠けており、一刻も早く取り戻すべきもの。そんな緊急性を表現するため、モデルは細くて長いランウエイを瞬く間に歩き去るんだ。
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