
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2025年1月13日号からの抜粋です)
村上:特にラグジュアリーの世界でホスピタリティーという言葉を頻繁に聞くようになり、実際ホスピタリティーを感じると、私もそのブランドを好きになってしまいます。今の時代におけるホスピタリティーの定義や実践を知りたいと考え、特集を企画しました。
益成:私は「ルレ・エ・シャトー」という世界各地580軒のユニークなホテルとレストランが加盟する非営利団体の日本・韓国の支部長を取材しました。その土地の“本物”を提供し、現地のコミュニティーを大事にするムーブメントを1954年から推進していて、加盟し続けるには2年に1度の覆面審査に合格するなど、厳しい基準が設けられています。
提供するのも、されるのも“人”
村上:加盟店のメリットは何ですか?
益成:“「ルレ・エ・シャトー」加盟店”と謳えることと共に、世界中のオーナーやシェフが集まって交流する機会が設けられ、理想のホスピタリティーを実現できるかという情報交換ができることが大きいようです。
村上:ナレッジの共有は魅力ですね。
益成:日本で一番長く加盟し続けている1489年創業の伊豆の旅館「あさば」にもオンラインで取材しました。能の舞台が見られる客室もあるそうで、その「景色」もホスピタリティーの一つのようです。
村上:まさにLVMHジャパンのノルベール・ルレ社長も「まず空間から感動していただくことが大事」と語っていました。加えて竹芝のラグジュアリーホテル「メズム東京、オートグラフコレクション」と同様に「ホスピタリティーを提供する側と提供される側は、フェアであるべき」と語っていたのが印象的でした。プロとして対等にサービスを提供する。「ルイ・ヴィトン」で欲しいバッグを気持ちよく買えるのは当たり前です。ブランドの歴史が紡ぐ夢や新たなインスピレーションを感じてもらうには、召使いのように指示を待つだけではダメなんでしょうね。
益成:提供するのも、されるのも“人”。感じ方は千差万別なので、絶対的な正解はありません。それをどう恒常的に提供するか。“人”にしかできない仕事だと思います。