ファッション
特集 人気再燃の理由 第7回 / 全10回

「フェイラー」顧客との深い関係を築くファンマーケティング

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ファッション業界は移り変わりが激しく、ブームを迎えたブランドが反動に苦しむケースも少なくない。しかし今は、低迷や停滞期を経て人気が再燃したり、ブームが落ち着いた後の再加速に成功したりのケースが散見される。さまざまな人気再燃ブランドを取材した。(この記事は「WWDJAPAN」2024年8月5&12日合併号からの抜粋です)

FEILER

ファンマーケティングで
顧客と深い関係をつくる

ドイツ東部の小さな町で作られるシュニール織のブランド「フェイラー(FEILER)」が好調だ。フェイラージャパンの売上高は、2022年度に102億円、23年度に123億円へと拡大。6年前と比べると倍増している。消費をけん引するのは30〜50代の幅広い世代。インスタグラムには「#フェイラー」で1日130〜150件の投稿があり、愛用するハンカチや小物が紹介されている。25cm四方のハンカチにかわいい柄が描かれる「フェイラー」はインスタと相性がいい。ディズニー、ポケモン、ちいかわ、シナぷしゅ、ファミリアなど、話題のコラボレーションも新規客の入り口になる。

八木直久社長は「育児中のお母さんが赤ちゃんのスタイ(よだれ掛け)のかわいい柄を見てほほ笑む。ビジネスマンが大事なプレゼンの日にたくさんのハンカチの中から特にお気に入りを選ぶ。『フェイラー』は吸水性や肌触りといった機能的価値だけでなく、情緒的価値で生活に寄り添っている」と胸を張る。

一昔前まで黒地に花柄のハンカチを年配の女性がハンドバッグに忍ばせているイメージだった。リブランディングに着手した15年当時、年齢層のピークは65歳で、若い世代の獲得が急務だった。年配の顧客を大切にしつつ、その娘世代に当たる30代向けに明るい色柄のMDを強化した。ギフトの新業態「ラブラリー バイ フェイラー(LOVERARY BY FEILER)」のファッションビルへの出店に乗り出す。それまで百貨店の卸売りが主体だったが、これを機にECを含めて自社での販売に軸足を移す。顧客と直接コミュニケーションをとる態勢への転機になる。

インスタを通じたファンマーケティングにも力を入れた。今でこそ約30万のフォロワーを持つが、最初は手探りだった。愛用品に「#フェイラー」をつけて投稿するファンに対し、公式アカウントとして丁寧にコメントすることで、少しずつ交流の輪が広がる。自発的に投稿する人がじわじわと増えた。定番のハイジ柄シリーズの語呂合わせで、8月12日を「#ハイジの日」として投稿しようというイベントは、インスタの顧客の声から始まった。ギフト需要が多い「フェイラー」は3月と12月が商戦の山場だったが、8月にも盛り上がりを作ることに成功した。

実店舗は約100店舗、売上高に占めるEC化率は約3割。今後の課題はこの数年で増加した識別顧客のデータを分析し、それぞれに合った提案を行うことだ。「『フェイラー』の商品力で魔法をかける。お客さまのデータをロジカルに生かす。この両輪でLTVを高めたい」と話す。

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