ファッション
連載 小島健輔リポート

「ユニクロ:シー」に見る骨格タイプとパーソナルカラーというマーケティング視点【小島健輔リポート】

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ファッション業界のご意見番であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。ファッション業界で最近注目を集めているのが骨格診断やパーソナルカラー診断である。体形や色の知識を持った専門家が服選びをサポートする手法は、消費者に新しい買い物経験を提供している。小島氏はマーケティング視点から骨格診断とパーソナルカラーの可能性を考察する。

ショッピングセンターのイベントで申込者が殺到するのが骨格診断やパーソナルカラー診断で、ネットでもそれらをハッシュタグにして誘導するECサイトが少なくない。骨格診断やパーソナルカラー診断をメイクや装いの指標にする人も多く(大半は女性だが)、骨格タイプ別に商品企画しているのではと思われるアパレルチェーンもある。販売促進で効果を発揮している骨格診断やパーソナルカラー診断が、商品企画でも新たなマーケティング手法となるのではないか。

着崩しできる「ユニクロ:シー」ショック

新宿フラッグスのユニクロで「ユニクロ:シー(UNIQLO:C)」のキャンペーンで打ち出されていたトレンチコート(税込1万2900円)を試着してみたが、従来のユニクロとは全く異なる「ナチュラル系」(骨格質のスタイリッシュなタイプ)のオーバーサイズで抜けて着崩せるパターンにショックを受けた。

身長175cmの骨格質の男性の私が試着したと聞いて違和感を覚える方もあるかもしれないが、「ユニクロ:シー」はウィメンズだけの企画でも、メンズも着られそうなアイテムはメンズ売り場にもサイズをそろえて何カ所も陳列しており、男性客向けにも積極的に販売している。ウィメンズのLサイズを試着したら通常のメンズのXLサイズぐらい大きめで、Mでも抜けて着られそうなパターンだったのには驚いた。

アングロサクソン的な「ナチュラル系」(骨格質)のパターンはジル・サンダーと組んだ「+J」とも共通するステルスリュクス的品質表現で、セオリーから流れるユニクロのDNAにも潜んでいるはずだが、保守的なパターンの通常商品は骨格質に肩で抜く着崩しは望むべくもないと思ってきた。

ユニクロは男女兼用アイテムを強化しており、「バブアー(BARBOUR)」風のユーティリティショートブルゾン(税込6990円、襟コーデュロイ切り替えだがオイルコーティングではない)などXSから4XLまで8サイズ展開しているが(カラーはブラック、ブラウン、オリーブの3色展開)、丈短めの腰回りがやや台形に広がったパターンでレイヤードしやすく設計されている。オンラインサイトのスタイリング写真や店頭のディスプレイはそんなパターンを表現できていないのは残念だが(オーバーサイズで衣紋を抜くように着れば裾が広がる)、「ユニクロはかっちりした保守的なパターンで着崩せない」という固定観念を改めるべきかもしれない。

「ユニクロ:シー」のパターンはオーバーサイズの「ナチュラル系」(アングロサクソンタイプの骨格質)という話からユニクロのジェンダーレスな販売と着崩せるパターン進化に脱線したが、アパレルのマーケティングや商品企画は骨格タイプやパーソナルカラーという視点で見直されても良いのではないか。

集客効果からプロフェッショナルサービスへ

ショッピングモールからファッションビルまで、イベントに並ぶうら若い女性の行列を見かけたら、タレントがらみでなければ骨格診断かパーソナルカラー診断だと思えばよい。どちらも予約制で税込1000円の参加料金がかかるケースが多いが(所要時間15〜20分)、商業施設のアプリ登録による割引やお買い物券の進呈で実質、半額か無料になるケースが多い。

近年は商業施設の女性向けイベントの定番になった感があるが、それはECサイトも同様で、「骨格診断」や「パーソナルカラー診断」で検索すれば、ファッション系やコスメ系のECサイトがズラリと出てくる。ベルーナやセシール、ピーチジョンなどの通販系はもちろん、ユニクロやストライプインターナショナル、ユナイテッドアローズやベイクルーズ、コスメではアイスタイルや資生堂まで、こちらも定番になっている。骨格診断やパーソナルカラー診断の設問に回答すれば、タイプに合った自社商品のスタイリングやアイテムをリコメンドしてショッピングに誘導している。

ネットのリコメンドはもちろん商業施設のイベントも実質無料が多いが、サロンでの時間をかけたパーソナルカウンセリングとなると1万円を超えるようで、著名なイメージコンサルタントだと数万円という料金になる。それでも女性の関心は高く、チェーン展開しているサロンも少なからず見られる。

よほど志望者が多いのか、カウンセラー(あるいはセラピストとか名称もさまざま)を育成する協会やキャリアスクールも乱立気味で、資格取得(それぞれの団体の勝手資格であって国家資格は存在しない)の研修やイベントの運営を行なっている。資格取得の受講料はオンライン講習の数万円から10数回の講座に通うコースともなれば数10万円にもなるから、習い事の家元や専門学校のようなビジネスが成立している。女性の資格取得ニーズは強く、医療事務や介護事務からネイリストやカラーリストまで時々の流行もあるようだが、近年の骨格診断やパーソナルカラー診断の人気は突出している。

体形・骨格・肌の色はもちろん目の色や髪の色も多様な欧米では専門的なニーズが高く(金髪碧眼は少数派で赤毛を染めてカラーコンタクトを入れる人が多い)、特別料金を要するカラーリストが常駐するヘアサロンも少なくないと聞く。欧米に比すれば我が国の骨格診断やパーソナルカラー診断は未だ導入期のブーム状態だが、いずれ専門的スキルを極めたスタースペシャリストがブランド化し、衣料品や化粧品の流通のみならず商品開発も変えていく可能性がある。

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