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Bコープ取得で目指す地域活性 社員数11人の下町バッグ工場の挑戦

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中村賢治/エヌ・ケー社長 プロフィール

1971年東京都足立区生まれ。88年、都立高校を卒業後、家業の建築会社に入社。施工管理やグループリーダーを務める。95年、ザンビ機工入社。営業、機械メンテナンス、加工、経理、役員を務める。2002年から個人事業主として独立機械販売やバッグ工場のサポートを行う。09年、エヌ・ケー設立

岡田康介/シソンズ社長兼エヌ・ケー社外取締役兼CFCLエグゼクティブ・アドバイザー プロフィール

1978年神奈川県生まれ。2002年京セラ入社。07年からドイツ駐在、欧州全域の再エネなど9事業の経営管理や事業統合を担う。 帰国後、ベンチャー企業で脱プラ素材の開発、海外事業を統括。21年シソンズ設立。23年エヌ・ケー社外取締役就任

足立区の町工場エヌ・ケーがこのほどBコーポレーション認証を取得した。スコアは85.6点。エヌ・ケーは2009年設立。ハンドバッグの製造や精密裁断加工、製造加工コンサルティングを行う。取引先には東レやカッシーナー・イクスシー、イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)や「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOCHI)」の黒河内デザイン事務所などが名を連ねる。不良率0.01%を誇り、コロナ禍でも業績は上昇基調を維持し、2022年の売上高は前期比167%増の1億5000万円と好調だった(加工賃がベース)。なぜ社員数11人の町工場がBコープ取得に挑んだのか。中村賢治社長と岡田康介・社外取締役に話を聞いた。

WWD:なぜBコープ取得を?

中村賢治社長(以下、中村):一言でいえば生きていくため、そして社員を守るためだ。Bコープ取得に向けて挑戦を始めたのは21年4月。新型コロナウイルスの感染拡大による非常事態宣言真っ最中だった。これからどうなるのかわからないという不安が大きく、会社を継続するには何か行動しなければいけないと考えていた。

WWD:Bコープ取得に向けた経営コンサルティングを行うシソンズ(SISON’S)の岡田康介社長(現・社外取締役)の講習がきっかけだったとか。

中村:その講習で初めてBコープの存在を知った。当社はバッグメーカーとしては後発。生き残るためにデザイン力や技術力など必要なことを検討していたときにサステナビリティだと考えた。

WWD:取得にあたり評価された点は?

中村:大きく2点ある。1つ目は自然環境の領域における経営のインパクトだ。動物福祉におけるベストプラクティスの探求が評価された。生物多様性という脱炭素と並ぶテーマをビジネス現場でいかに実践するかは、日本においてはまだ認識されておらず、動物皮革が人々の手元に届くまでのサプライチェーンはとても長く未知な部分が多い。その皮革を扱う企業の見本となるべく、皮革調達のポリシーを構築して実践している。2つ目は鋼材資源を99%削減している点。一般的な裁断は金型を用い抜型でプレスし、後にバッグが販売されなくなればそれらの金型を廃棄するのが一般的。鉄は再生されることもあるが、その工程で大量のエネルギーを使い温暖化ガス排出につながる。一方でわれわれはコンピューター制御のレーザーカッター「キャドカム(CAD/CM)」を用いているので金型を必要としない。裁断時の刃物で使う鉱物は2g程度で、年間で70回程度交換するので年間使用量は約140g。一般的なハンドバッグ製造に必要な金型に必要な鉱物は約2100g。「キャドカム」を導入した17年前から、サンプル作成から量産までのプロセスを効率化して、製造工程での廃棄量の削減にも取り組んでいる。また、1年半前から再エネ100%で製造している。

岡田康介・社外取締役(以下、岡田):コミュニティのスコアが高かった点も挙げておきたい。30km圏内の協力工場やサプライヤーと協働しており、東京23区内でモノ作りを行うことで地域経済の振興や経済格差の是正にコミットしており、同時に輸送距離が短いため温暖化ガスを抑制している。ハンドバッグは生産工場の国内回帰が可能な分野だが、存続がギリギリな状態でもある。今まで通りモノ作りをしていても発展性がないし価値を見出してもらえない。Bコープを取得することで高付加価値のモノ作りを行い、地域に還元していくことも大きな目的のひとつだ。

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