ファッション

頭が大きい人のための帽子ブランド「アンネームドヘッドウェア」が絶好調 元ZOZO社員が立ち上げ

 “頭が大きな人”に向けたヘッドウエアブランド「アンネームドヘッドウェア(UNNAMED HEADWEAR)」が売れている。昨年9月にクラウドファンディング「マクアケ」でブランド立ち上げのサポートを募ると、目標の20万円を大きく上回り、4日間で300万円を調達した。その後、公式サイトを開設し、新作入荷のたびに完売が続出。入荷待ちリストに100人近くの名前が連なることもある。平均月商は600万円前後だ。

 同ブランドの商品企画から生産管理、サイト運営、梱包・発送まで1人で行うのが、渡邉貴浩ディレクターだ。渡邉ディレクターはZOZOでEC運営と物流の経験を積み、31歳で独立。コンプレックスだった大きな頭に勝機を見出し、同ブランドを立ち上げた。「入ればいいってもんじゃない」と語る帽子デザインのこだわりと、コンプレックスを逆手にとったマーケティング戦略について聞いた。

きっかけは単純な疑問
「帽子の“フリーサイズ”って何?」

WWD:「アンネームドヘッドウエア」を立ち上げた理由は?

渡邉貴浩ディレクター(以下、渡邉):僕の頭にフィットする帽子がなかったからです。靴や服って複数のサイズが用意されているのに、帽子はフリーサイズが当たり前。いやいや、フリーサイズって何?27.0cmしか扱わない靴屋があったらイヤでしょ?(笑)と思って始めました。

WWD:後頭部のアジャスターで、ある程度はサイズ調節できるのでは?

渡邉:そう言う人も多いんですけど、入ればいいってもんじゃないんです。デコが広くて頭が長い人は高さのある帽子が似合うし、ハチが張って頭周りが大きい人は、被り口が広くて浅めのキャップがいい。世の中にはいろんな頭がある。僕は、それぞれのニーズに応えたいんです。

パッと見は「ほぼ一緒」
それでもこだわる
帽子の“高さ”

WWD:アイテムのこだわりは?

渡邉:同じ型でハイ、ミドル、ローの3種類の高さを用意しています。パッと見ほぼ一緒なんですけど、深さが微妙に違っていて、ツバの大きさも最適なバランスに設計しています。提携先の工場に協力してもらいながら、サンプルを何度も確認して、納得のいくアイテムに仕上げます。素材もこだわっていて、最近はコットン100%のカツラギをよく使います。厚手で重厚感があり、チープに見えないのがポイントです。大きめのキャップってネットで探せば見つかるんですけど、どれもアイデア商品というか、サクッとつくったものばかり。「アンネームドヘッドウェア」は、大きめだけど、モノづくりもしっかりしているところが強みです。

WWD:型数は今後増やしていく?

渡邉:現在、10型弱とそれほど多くないので、もっと増やそうと思っています。例えばフェルトのハットとか、キャケットとか。今はサファリハットを開発中です。インスタのDMで「この形を作って!」とお客さまの声が頻繁に届くので、「その声を無下にはしない」と実際の企画に反映しています。

WWD:サイト立ち上げから入荷と完売を繰り返し、最近ようやく在庫が安定してきた印象だ。

渡邉:おっしゃる通りです。そもそも「マクアケ」での資金調達は2カ月を予想していたのに、4日でリターン枠が埋まっちゃって。大量のウェイティングリストができました。一般販売しても供給が追いつかず、「まだ売り切れですか?」とDMが届くような毎日でした。今は即完売のアイテムも減ってきて、一定の在庫を置けるようになりました。ニッチな市場だと思っていたのですが予想以上に大きなニーズがありました。

ZOZOでECの裏方を経験
学生時代は“ササゲ”に捧げる

WWD:ZOZOから独立してブランドを立ち上げた経緯は?

渡邉:大学在学中にZOZOでアルバイトを初めました。業務は、商品の撮影や採寸、原稿という、いわゆるECの“ササゲ”です。週5で働き、学生時代をササゲに捧げました。みんなが就活している時も、「正社員になれるのでは?」とバイトばかりしていたら、運良く社員登用制度で正社員に採用されました。正社員1年目はカメラマンとして毎日撮影ばかり。その後、撮影や管理、商品の出荷、梱包などの現場や管理職などを経験しました。ECの裏側は一通りやりましたね。

WWD:そこからプロダクトを作りたくなった?

渡邉:「自分で何かやりたい」と思い独立しましたが、当初は帽子と決めていたわけではありませんでした。最初はインフルエンサーを起用したウィメンズアパレルをやろうと、事業計画書を綿密に作り込んで公庫と面談し、事業をスタートさせました。でもZOZOとは勝手が違って、自社サイトにお客さまが全く集まらず、売り上げが立たなかった。在庫もかなり積んだのに、全く動かない。「これはやばい」と、なんとなく構想していた帽子の事業を1〜2カ月で詰めて、クラウドファンディングに着手しました。

コンプレックス商材でも
嫌悪感を抱かれないSNS戦略

WWD:「アンネームドヘッドウェア」はいわゆるコンプレックス商材にも分類されるが、マーケティングで気をつけていることは?

渡邉:ブランド名は何度も考え直しました。サイジングが最大の特徴なので、それに関連する名前をつけようとしたのですが、例えば「ビッグキャップ」なんて名前だったら、友達にバレたら恥ずかしいし、自分じゃ買わない。ならば、「名前なし」をブランド名にしちゃおうと、「アンネームド」に決めました。あとはSNSの打ち出し方も気をつけています。個人アカウントで「頭の大きな人向けに帽子作っています」と全面にアピールする一方で、ブランド公式アカウントでは“オリジナルサイズヘッドウエア”としか謳っていません。その方が、ユーザーがシェアしやすいし、フィード投稿を見ても嫌悪感を抱かないはず。コンプレックス広告なども問題になってますが、気持ち良いプロダクトや広告の方が刺さると考えています。

WWD:今後の展望は?

渡邉:まずはアイテムを増やしたい。お客さまが、自分のキャラクターを踏まえて帽子を選べるようにしたいです。それと、オフラインでコミュニケーションできる場を作りたい。実際に被り比べて、初めて納得して買ってもらえる商材なので、ポップアップや試着専用のショールームなどを用意しようと構想しています。最近法人化したから、いろいろと動きやすくなるはず。帽子が似合わないとお悩みの皆さん、ぜひ期待してください。

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