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今さら聞けない“D2C”と“通販”の違いとは? バルクオムの野口卓也代表に聞いてみた

 ここ1~2年で頻繁に聞くようになった“D2C”という言葉。今さら言うまでもないのだが、D2Cは「Direct to Consumer」の略で、”消費者に対して製品を直接的に販売する”というビジネスモデルのことだ。ただその言葉の意味においては、「これまでも多くの存在していた通販ブランドも当てはまるのでは」といった疑問も浮かんでくる。D2Cという言葉がここまで広まってしまって、今さら聞けない「D2C」と「通販」の違いを、D2Cメンズコスメの先駆者である野口卓也バルクオム代表に聞いた。

WWD:最近はD2Cというのがトレンドワードになっています。正直、これまでの “通販”との違いはどこにあるんでしょうか?

野口卓也代表(以下、野口):D2Cブランドと通販ブランドの一番の大きな違いは、D2Cはブランドサイトの立ち上げから顧客への情報発信、広告、マーケティング、購入まで全てがデジタルで完結している点だと思います。立ち上がったブランドに関しては、O2O(Online to Offline)のようにリアル店舗への送客も見られますが、あくまでD2Cというトレンドが発生した本質は、これまで消費者はテレビCMや新聞、雑誌などで情報を得ていたのが、スマホの登場以降、SNSやウェブなど全てデジタルで情報を収集するようになり、それが一般化してきたことで、デジタルだけで完結するようになったところにあります。またD2Cブランドは、創業者の強い思いから製品を作っている企業がほとんどで、製品の品質はもちろん、どのように広告を展開し、販売していくのがいいかなど、デジタルマーケティングにも創業者が大きく関わっている点も特徴です。

WWD:「バルクオム(BULK HOMME)」は2013年からスタートしました。当時はまだD2Cという言葉も一般的ではありませんでした。

野口:そうですね。だから「D2Cブランドを作ろう」と思ってスタートしたのではなく、続けていたらD2Cブランドと言われるようになった感じです(笑)。日本で18年からすごくD2Cのスタートアップ企業が増えました。

WWD:日本でもそうしたD2Cブランドが増えた要因はどこにあると思いますか?

野口:まわりに20代の起業家が多いのですが、彼らには「メディアってもう一巡したよね」という思いがあって、次に何をしようか考えていたら、そこにD2Cというトレンドがきて、「自分が好きなものを作って普通に売ってもスタートアップとして認められるんだ」という気づきがあったと思うんです。加えて、デジタルマーケティング次第では、スタートアップでも大手企業に勝てる可能性があるのもD2Cの魅力的なところだと思います。

WWD:資金も集まりやすくなっているんでしょうか?

野口:メディアと違って、「製品を作るのにお金が掛かる」というのが分かりやすく、投資家だけではなく、クラウドファンディングも含めて、資金が集まりやすくなっています。またD2Cがトレンドとなったことで、投資家の注目度も高まり、これまで個人投資家が多かったのが、最近はベンチャーキャピタルなども出資するようになって、5億円、10億円といった資金調達もかなりできるようになったと思います。また資金だけではなく、マーケターや営業でも優秀な人材がこの分野に入ってくるようになりました。

WWD:たしかにひと昔前だとスタートアップというと「MERY」のようなキュレーションメディアが多かった印象です。

野口:まさにそうで、大学生から20代半ばまでの、資金と経験はないけどいくらでも働けますといった人たちが始めやすかったんです。そこから“モノづくり”に移行する人がかなり増えました。一方で、インターネットサービスを主とする起業家もまだまだ多くいます。

WWD:今後はさらにD2Cブランドは増えると思いますか?

野口:まだまだ増えると思います。7割ほどは女性向けの化粧品やアパレルのブランドだと思います。それと同時に女性の起業家も増えてくると思います。その中でマスを狙ったり、よりニッチな方を狙ったり、それはさまざまだと思います。でも、みんな信念を持ってやっていますよね。例えば30年以上も続いている大手企業と比べて、広告運用だけではなく、インスタグラムのアカウント運用でもタグ付けしてくれたら“いいね”を押しにいくといった、大手企業だとそこまでやらないような細かいことを積み重ねていかないと勝てない。そういった感覚はデジタルネイティブの起業家だから持ちやすいんだと思います。

WWD:D2Cブランドだと初期段階では店舗を持たないことで費用が抑えられたりしますか?

野口:それは関係ありません。D2Cはメーカー業なので、どこかに卸せば自前の店舗は不要ですが、むしろ最初の頃は思った以上に費用が掛かると思います。ただD2Cの方法論だと、ユーザーの意見を聞いてすぐに商品と(ウェブ上の)売り場の改善ができるのが、従来のメーカー業と違って有利な点です。

WWD:D2Cブランドだと顧客のデータを活用して製品開発をしているのでしょうか?

野口:顧客データを一番活用するのはマーケティングです。製品開発に関しては、したりしなかったりとバラバラだと思います。弊社の「バルクオム(BULK HOMME)」の場合は、ずっとグローバルで成功するブランドを目指してやっているので、日本人の顧客データを活用して製品開発をしてもグローバルで勝てるブランドにはならない。自分たちが本当にいいと思うものを信じて製品は開発しています。

WWD:野口さんが注目しているD2Cブランドは?

野口:ドッグフードのD2Cブランド「ココグルメ(COCO GOURMET)」です。この分野では「ココグルメ」以外に、デジタルマーケティングをしっかりと行っている会社が見当たらないし、製品の品質もかなりシビアにこだわっています。これは大手だとできないだろうなというやり方を徹底してやっているので、さらに伸びていくと思います。あとは僕も投資しているD2Cコスメ「フィービービューティーアップ(PHOEBE BEAUTY UP)」やカスタマイズサプリ「フジミ(FUJIMI)」などは女性起業家の思いが詰まっているブランドで、今後が楽しみです。

WWD:最近はメンズコスメのD2Cブランドも増えていますが、意識はしていますか?

野口:先ほども言ったように、僕たちの目標はグローバルで成功することなので、日本の他のメンズコスメブランドを意識することはありません。でもそうしたブランドが増えることで、メンズコスメ業界にも注目が集まるし活性化していくので、いいことだと思っています。