ファッション

ダニエル・リーによる新生「バーバリー」がデビュー 英国らしさを軸に描く、英国を代表するブランドの新章

 「バーバリー(BURBERRY)」は2月20日、昨年10月に就任したダニエル・リー(Daniel Lee)=チーフ・クリエイティブ・オフィサーが初めて手掛ける2023-24年秋冬コレクションのショーをロンドンで開いた。ショーに先駆け、今月6日にはフォント(字体)を変えて刷新したロゴやデザインをアレンジして復刻した“プローサム”エンブレム(馬上の騎士を描いたもの)を用いたビジュアルを公開していたが、ようやく新たな方向性の全貌が明らかになった。

 デビューショーの会場は、ロンドン南東部にあるケニントンパーク。住宅街にある公園の中に、巨大な特設テントを構えた。中に入ると、メタルのマグカップに入ったホットチョコレートやホット・トディー(ホットウイスキー)が振る舞われ、客席にはチェックのブランケットを敷いた上に席番号を記した“湯たんぽ”が置かれている。そこから浮かぶのは、ブランドのルーツである「アウトドア」や「カントリー」というキーワード。スモークで霧がかった暗い空間は英国らしい冬の自然を感じさせるが、その中に「コージー(暖かで心地よい)」な雰囲気が漂う。英国を代表する老舗ブランドのクリエイションを担うことになった英国人のダニエルは、その伝統や文化、アイデンティティーを現代、そして未来に向けていかに提案するかということを考えているようだ。

 ファーストルックは、予想を裏切ることなくギャバジンのトレンチコート。ただし、色はブラウンがかった深いアーミーグリーンで、シルエットはかなりオーバーサイズ&ロング丈。襟にはボトルグリーンのファーパーツ(ファーは全て人工)を重ね、モデルは湯たんぽを抱きかかえながら歩く。今シーズン最も際立ったのは、ブランドの強みである実用性に重きを置いたアウターのラインアップ。体を包み込むようなオーバーサイズなシルエットを中心に、トレンチをはじめとするベルテッドコートや、ブランケットコート、ダッフルコート、レザーブルゾン、プロテクティブ(防護的)なアノラック、ハンティングジャケットなどをそろえたほか、ドレスへのアレンジも見られた。

 もう一つのポイントは、シグネチャーであるチェックの再解釈だ。今回のショーでは、ベージュやキャメルと白、黒、赤で構成する定番の配色は皆無。その代わりに、ボトルグリーンと紫やバーガンディーと赤、ベージュと黄色、新たな“プローサム”エンブレムにも用いた鮮やかな青と白、黄色と紫といった大胆なカラーリングで、斜めに配した柄を大ぶりなスケールで描いている。

 そんなチェックアイテムのラインアップは、ボックスシルエットのメンズスーツやボンバージャケット、タートルネックのリブニットから、柔らかなドレス、キルト風のスカート、腿にファスナーポケットをあしらったリラックスシルエットのパンツ、タイツ、ブランケットマフラーまで。アーガイルを想起させるダイヤモンド柄や英国とつながりの深いバラ、公園の池でよく目にするカモのモチーフも同様のトーンで染め、全身に色と柄を取り入れた若々しいスタイルを数多く打ち出した。エッジの効いたデザインやユニークなシルエットでモダンなイメージを作り上げた一方で着る人をかなり選ぶウエアが多かった前職の「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」時代に比べ、今回はアイテムごとに見ると着やすそうなデザインも多く、幅広い層に訴求できる可能性を感じる。パンクムードのグラフィックTシャツに白鳥のプリントと共に記されたのは、「THE WINDS OF CHANGE(変革の風)」や「CHANGE IS INEVITABLE(変化は避けられない)」という言葉。それは、ダニエルの決意表明とも取れる。

 また、「ボッテガ・ヴェネタ」ではヒットアクセサリーを数多く生み出し、トレンドセッターとしての地位を確立すると共にビジネスの発展に貢献したとあって、「バーバリー」でも新たなバッグやシューズの提案に大きな期待がかかっている。結果、ダニエルはこれまでのデザインを踏襲することなく、新作を豊富に打ち出した。バッグは、ファーのトリミングを施したレザーのボックスショルダーや「b」モチーフの金具をあしらった半円型のサドルデザイン、丸みを帯びたホーボースタイルから、アウトドア用品の金具のようなカラビナをアクセントにしたソフトなショルダー、チェックのビッグトート、バラをモチーフにしたようなクラッチまで充実。一方、シューズは、「B」を象ったバックル付きのベルトをたくさん配したパンキッシュなショートブーツや乗馬ブーツ、ファーをあしらったサンダルにモカシン風のスニーカー、ゴツいトレッキングブーツ、膝下丈のラバーブーツなど。ファーのトラッパーズハットやカモモチーフのニット帽、キツネのしっぽのようなチャームで、ルックにキャッチーなアクセントを加えている。

今回のショーで披露したのは、男女合わせて55ルック。カジュアルからフォーマルまで100ルック以上を披露して「バーバリー」というブランドの幅の広さを見せていたリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)の初期とは異なるアプローチだが、新たな方向性を示すには十分なものだった。ダニエルはこれから、シーズンごとに多様な英国らしさの中から異なる要素を取り入れていくのか?そして、ショーでは披露されなかったよりクラシックなデザインのコートやテーラリングといった定番商品にはどのようなアップデートや変化をもたらすのか?就任から4カ月強という限られた時間で作られたコレクションだけで全てを語ることはできないが、今後の展開が楽しみだ。

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