ファッション

エリザベス2世のファッション展がロンドンで開催 装いの哲学と秘蔵アーカイブに迫る

エリザベス2世女王のファッションをテーマにした史上最大規模の展覧会「Queen Elizabeth II: Her Life in Style」が、10月18日までロンドン・バッキンガム宮殿内のキングス・ギャラリーで開催中だ。同展覧会では、国家行事で着用された豪華なドレスやイギリス王室御用達のデザイナー、ノーマン・ハートネル(Norman Hartnell)による戴冠式・結婚式の衣装といった作品に加え、英国史上最長在位を誇る女王の内面やスタイルのインスピレーション源にも焦点を当てている。

会場では300点以上の品々が展示され、その多くが初公開だ。中には、エリザベス2世女王が幼少期に着用したボンネットや、若い頃に愛用していた「ランバン(LANVIN)」のゴールドラメドレス、そして母であるエリザベス皇太后のロマンティックなスタイルからの“自立”を示すジュエルトーンのベルベットコートなどが並ぶ。

本展のキュレーションを手掛けたのは、ロイヤル・コレクション・トラストで王室美術品調査官を務めるキャロライン・ド・ギトー(Caroline de Guitaut)。30年以上にわたり同機関に携わってきた彼女は、これまでにもエリザベス2世女王のファッションに関する展覧会や書籍を手掛けてきたが、「今回の展示はこれまでとは一線を画すもの」だと語る。本展は、1926年の女王誕生100周年を記念すると同時に、デザイナーのスケッチや生地見本、1966年の「バーバリー(BURBERRY)」からの請求書などを含むファッションアーカイブが、正式に王室コレクションへ移管されたことを記念するものでもある。

ド・ギトー氏が女王のワードローブ全体を初めて目にすることができたのは今回が初めてのことだという。「私たちは、エリザベス2世女王の人生を通じたファッションとの関係を立体的に描きだすことができた。結婚式や戴冠式、即位記念式典といった重要な出来事だけでなく、その間にある日常の出来事についても掘り下げることができた」と語る。

彼女は約5000点に及ぶ品々を整理し、スチュワート・パーヴィン(Stewart Parvin)、イアン・トーマス(Ian Thomas)、アンジェラ・ケリー(Angela Kelly)といったデザイナーの作品のほか、「バーバリー」、「バーナード ウェザリル(BERNARD WEATHERILL)」などのブランドの衣装や記念品を集めた。さらに、女王の靴にも焦点を当て、「ジョンロブ(JOHN LOBB)」や「チャーチ(CHURCH'S)」のブローグシューズ、「マックスウェル(MAXWELL)」や「シュナイダー(SCHNIEDER)」の乗馬ブーツ、さらには幼少期のバレエシューズやベビーシューズといった貴重なアイテムを収集した。

調査はまるで宝探しのようだったという。特に印象的だったのが、1954年のオーストラリア訪問時に着用された“ワトルドレス”だ。アカシアの花をモチーフにした装飾をあしらったゴールドのシルクチュールドレスで、当時はそれに合わせたストールも着用していた。しかし、多くの写真や肖像画に残されている一方で、その実物は長らく所在不明とされていた。

調査を進める中で、ドレスに合わせていたストールが、薄紙に丁寧に包まれた状態で箱に収められているのが見つかった。「何十年も探し続け、女王でさえその行方を覚えていなかったストールです。それを見つけたときの私の興奮と喜びは言葉にできません」とギトーは振り返る。このストールは、「ノーマン・ハートネル(NORMAN HARTNELL)」のオリジナルスケッチとともに展示されている。

また、女王の幼少期や若き日が垣間見える資料も数多く見つかった。19世紀のベビーボンネットとともに発見された彼女の直筆メモには、それらが自身と妹マーガレット王女によって着用されたものであり、大切に保管するよう記されていたという。

若き日のエリザベス2世がファッションに強い関心を抱いていたことも明らかになった。展示されている「ランバン」のゴールドラメドレスは、裾に生地を足して長さを調整した痕跡があり、繰り返し着用されていたことが分かる。幼い頃から芽生えたファッションへの関心は次第に高まり、その後、独自のスタイルを確立していった。ギトーによると、ジュエルトーンのベルベット素材を用いた「ノーマン・ハートネル(NORMAN HARTNELL)」のコート4着が見つかっており、そこからエリザベス2世の好みが、母の好んだ淡いパステルカラーやフリル主体のスタイルとは明確に異なり始めていたことがうかがえる。18、19歳頃には自ら「ノーマン・ハートネル」にオーダーを出し始めるなど、スタイルの主導権を握るようになった。女王はより個性の強いスタイルを志向し、母の淡い色調とは対照的に、より濃く力強い色を着ることを望んだため、ハートネルは大胆なコートを仕立てたという。その後は「ハーディ エイミス(HARDY AMIES)」とも協働し、自身のスタイルをさらに発展させていった。

公務においては、衣服は重要なコミュニケーション手段でもあった。訪問先の国に合わせた色使いや、象徴的なモチーフを取り入れることで、敬意や理解を表現していたという。「デザイナー任せではなく、最終的な判断は常に女王自身が行っていた」とギトーは語る。

私生活でもファッションへのこだわりは強く、仕立ての良い服や上質なスコットランド産カシミア、アイルランドのアランセーターなどを好み、より実用的でリラックスした装いを取り入れていた。チェック柄のツイードジャケットとキルトを組み合わせた、あえて外しを効かせたコーディネートも見られ、この装いは繰り返し着用していたという。

さらに本展では、現代のデザイナーによるオマージュも紹介される。ロンドンを拠点とするデザイナー、アーデム・モラリオグル(Erdem Moralioglu)、リチャード・クイン(Richard Quinn)、クリストファー・ケイン(Christopher Kane)の3人が、女王に着想を得た過去の作品を出展し、アーカイブの関連アイテムと並べて展示している。

また、英国王室御用達ブランドも本展に合わせてトリビュートアイテムを発表しており、「バーバリー」は限定コレクションを制作。同コレクションは女王のカントリースタイルに着想を得たもので、ホリーグリーンにきらめくコットンギャバジン製カーコートや、スコットランド・ハイランド地方にある英国王室の邸宅バルモラル城を手描きで表現したシルクツイルスカーフ、さらにコーギーをモチーフにしたゴールドプレートのブローチなどをそろえる。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

色で着崩すクラシック 2026-27年秋冬ウィメンズリアルトレンド特集【WWDBEAUTY付録:2026年上半期ベストコスメ発表】

「WWDJAPAN」6月22日発売号は、「リアルトレンド」ウィメンズ編です。国内アパレルやセレクト各社の2026-27年秋冬の打ち出しを一挙に紹介。シーズンのトレンド傾向から「今っぽい」をかなえるスタイリング術までを読み解きます。今季のキーワードは、「クラシック」と「エレガンス」。多くのブランドが、端正なジャケットを主役にしたトラッドスタイルをベースに、独自の解釈を加えた提案に挑戦しています。また…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。