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紳士淑女からパンクな少年少女まで リカルドの「バーバリー」は懐が深い!

 今季のロンドン・ファッション・ウイーク最大の話題は、リカルド・ティッシ(Ricardo Tisci)による新生「バーバリー(BURBERRY)」のお披露目だ。ウイーク開幕前から、街には新モノグラム柄でラッピングしたタクシーが走り、リージェントストリートの旗艦店外壁ではショーまでの時間をカウントダウンするなど、お祭り気分を盛り上げていた。蓋を開けてみると、ショーはまさにお祭りと呼ぶにふさわしい一大エンターテインメント。迫力の134体で、ブランドの新章が幕を開けた。

 会場に案内されると、そこは真っ暗闇。「『ジバンシィ(GIVENCHY)』時代に続き、やはりリカルドの作風といえば暗闇や夜のムードなんだな」などと思っていたが、いざショーが始まると天井の覆いが外れ、日の光が差し込む。どうやら「バーバリー」でのリカルドは、これまでよりも健康的なイメージだ。格子模様の壁やカーテンが動き出し、広い会場がいくつかに仕切られてサロンのようになると、いよいよモデルが歩いてくる。

 登場したのは、ブランドを象徴するトレンチコートやステンカラーコートのウィメンズルック。それに続くのも、コートの色に使われるベージュを絶妙なカラートーンで組み合わせた、エレガントでクラシカルな淑女たちだ。淑女の後には当然紳士が続く。スーツをビシッと着こなしたモデルが、ジェントルマンに欠かせない小道具である傘をスパイ映画の秘密道具のように背負っているのには、思わずクスっと笑ってしまう。

 淑女に紳士で終わりかと思いきや、今度はミニスカートに「ドクターマーチン(DR.MARTENS)」風のストラップ靴を合わせたパワフルガールが現れ、さらには今のストリートのトレンド感満載なやんちゃなボーイズへと移っていく。ガールズとボーイズには、ロンドンならではのパンクの匂いがぷんぷん漂う。

 これだけの量のルックを見せるのだから、ランウエイ上はモデルの大渋滞だ。大御所のステラ・テナント(Stella Tennant)から今をときめくケンダル・ジェンナー(Kendall Jenner)までがそろって非常にゴージャス。リカルドの若かりし日からの盟友、マリアカルラ・ボスコーノ(Mariacarla Boscono)ももちろんいる。

 パンク少年のルックはかなりリカルド色が濃かったものの、それ以外はメゾンのアーカイブを紐解きつつ、そこにリカルドらしい遊びを差し込んでいくという手法。自分の好きな道を突き進むイメージのあるデザイナーだっただけに、その冷静でクレバーな手法にいい意味で驚かされた。もう1つ驚いたのは、会場にセレブの姿がなかったこと。リカルドといえば、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)らなどとの華やかな交遊も強みのはず。それがなぜ。

 聞けば、「フロントローのセレブではなく、ちゃんと服を見て欲しい」という思いから、セレブの来場を断ったという。ショー開始前に空間を壁で仕切って、昔ながらのサロンのようにしたのも、1着1着を集中して見て欲しいという思いの表れとも読める。SNSを駆使する最も現代的なデザイナーの一人であるリカルドがそういったことを考えているのだとしたら、なんだか非常に示唆深い。

 そんな原点返りともいえるマインドの一方で、非常に今っぽい試みも行っている。ショー後すぐに、インスタグラム上とリージェントストリートの旗艦店では、ナイロンのトレンチコートやブルゾン、新ロゴのTシャツ、トートバッグ、チェック柄のスニーカーなどを24時間限定で販売。これは、近頃ラグジュアリーブランドに拡がる“ドロップ”と呼ばれる売り方で、今後も同様に販売期間を区切って新商品を次々と仕掛けていくという。