ファッション

1999年からアディダスが手掛けるサッカー日本代表の歴代15作のユニホームを振り返る

1999年にアディダス(ADIDAS)と日本サッカー協会がサプライヤー契約を締結して以降、「FIFA ワールドカップ 2026」で着用される最新作を含め、これまでに全15モデルが発表されてきた。サッカー日本代表のユニホームは、約2年に1度のペースで刷新されるごとに賛否両論を巻き起こしてきたが、果たして過去モデルのデザインはどうだったのか。ときにはファッションアイテムとして街で着用され、ときには日本人のアイデンティティーを映す“文化のキャンバス”として機能してきた全15作のホームユニホームを、それぞれのコンセプトとともに振り返る。

1999〜2000:機能美

「アシックス(ASICS)」と「プーマ(PUMA)」とのサプライヤー契約の持ち回りを廃止し、「アディダス」と現在に至るまでの独占複数年契約が始まった初代ユニホーム。青色で“日本の国土とスピード感”、白色で“信頼とフェアプレー精神”を表現し、“風”のモデル名で愛された。このユニホームを着用していた当時のイレブンは、2度目のAFCアジアカップ優勝を果たすなど、日本代表黄金期の礎を築いた世代として今なお語り継がれている。

2001:フューチャー プログレス

選手の動きが大胆に見えるようにと、首元から肩にかけて配された白のポイントと青色のボディーの対比から“コントラスト”モデルと呼ばれ、翌年に控えた自国開催のW杯を前に1年間限定で着用されたモデル。大きめの襟にクラシック感があり、このユニホームを最後に襟付きユニホームが発表されていないことからファンの間には根強い人気がある。

2002〜2003:富士山

前作と比べてかなりシンプルなデザインとなった本作は、自国開催のW杯で着用された記念すべき1着。左右の首元からそれぞれの袖口にかけて走る赤色のパイピングは、湖面に映る逆さ富士になぞらえるなど、細部で“日本の美”を表現。また、高温多湿の日本の気候を考慮して裏地にメッシュ素材を使用した二重構造で、エンブレムをプリント化するなど徹底的な軽量化も図られた。

2004〜2005:ブループライド

“経験と挑戦”を表現した濃淡の青色のグラデーションが、「アディダス」の“スリーストライプス”を想起させる。首回りには、日の丸をイメージしたという赤色がアクセントカラーとして用いられ、3度目の優勝を成し遂げたAFCアジアカップや、2006年ドイツW杯出場を世界最速で決めた試合で着用されていた。

2006〜2007:刃文

サポーター投票の結果から日本代表のキャッチフレーズに“SAMURAI BLUE”が選ばれたこともあり、デザインモチーフに日本刀の刃文(刀身に見られる波模様)を採用。両脇の幾重にも重なる流線型のラインで、美しい海に囲まれた国土から淡いブルーの空へ羽ばたくイメージを表現している。歴代ユニホームの中でも特異なデザイン性の高さから、いまだに2次流通市場では高値で取引されている人気作。

2008~2009:日本魂

これまでのどのモデルよりも明るい青色のボディーに、アクセントカラーとしてエンブレムにも使用されているイエローを襟と袖に用いた珍しい配色が特徴。また、前身頃の裾から胸元にかけて、“飛躍”をイメージした放射状のゴールドラインが伸びており、これが日の出を想起させることから一部のファンの間で“ご来光モデル”とも呼ばれた。

2010〜2011:革命に導く羽

2010年南アフリカW杯に向け、快適さを重視した従来型の“フォーモーション”と、運動能力を向上させるコンプレッションウエアとしての機能を持つ“テックフィット”という2タイプを、環境やコンディションに応じて選手自身が選ぶことができた革命的なモデル。前身頃にあしらわれた日本サッカー協会のシンボルマークにもなっている八咫烏(やたがらす)の羽のグラフィックが高い評価を受けたが、ファンの間で首元の大胆な赤色が「よだれかけ」「レッドカード」などと批判の的にも。しかし、男子はW杯で歴代最高成績タイとなるベスト16入りし、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)はW杯を制した歴史に残るモデルだ。

2012〜2013:結束の一本線

前年に発生した東日本大震災の復興をめざして一丸となる日本の姿に重ね、首元から裾までの一本線で日本人の結束を表現。さらに、一本線は“SAMURAI BLUE”がレッド、なでしこジャパンがピンク、フットサル日本代表がイエローと、各カテゴリーでカラーを変更していた。しかし、一部のファンからは「むしろ分断されている」との声も。また、肩部が異なる青色の切り替えになっていたりと、その斬新なデザインから前作に引き続き物議を醸したモデルに。

2014〜2015:円陣

2014年ブラジルW杯に照準を合わせて製作されたモデルで、鮮やかな青色のボディーの背中に毛筆タッチでネオンピンクの一本線が横向きに描かれ、円陣を組んだイレブンを上から見ると大きな輪になるようにデザインされている。また、試合開始前の円陣後にピッチへと広がる選手から着想した、左胸のエンブレムを中心に広がる11本のラインも特徴的。当時の“「アディダス」史上最軽量のサッカーユニホーム”としても知られる。

2016〜2017:イレブンブルー

鮮やかな前作から一転、ほぼ黒色ともいえる日本代表ユニホーム史上最も濃い青色を採用した。胸元の11本のボーダーから成るグラデーションで“個性の異なる11人の選手”を、その中央に走る12本目の赤色のラインで“12人目の選手”とされるサポーターを表現。また、1999年から継続して配されていた肩のスリーストライプスを初めて脇にあしらい、襟裏には八咫烏の羽のグラフィックをプリントするなど、真新しいデザインとなった。

2017〜2018:勝色

かつて武将が戦いに赴く際に身につけた鎧下と呼ばれる着物に使われる藍染めの生地の中で、最も深く濃い藍色とされていた“勝色”をコンセプトに採用。2018年がW杯初出場から20年という節目の年だったこともあり、20年分の思いを糸で紡ぐというイメージから前身頃の全面に刺し子柄を施した。さらに首元の内側には、過去に出場した5大会のW杯ユニホームの特徴的なデザインを組み合わせたロゴがあしらわれ、言葉そのままに歴史や経験を背負う意味が込められた意欲作。

2020~2021:日本晴れ

「日本代表が日本中に希望を与える晴れた存在であってほしい」という願いが込められた1着。ユニホームの前面には、“スカイコラージュ”と名付けられた迷彩柄のようなグラフィックが落とし込まれており、これは浮世絵を着想源に濃淡の異なる5色の青から構成され、1着ごとに柄の見え方が異なる仕様に。一方背面は、鮮やかな晴れた“日本晴れ”の空を想起させる単色の青となっている。なお、同モデルで東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に挑んだ日本代表は、1968年メキシコ五輪以来のメダル獲得を目指すも、3位決定戦でメキシコに1-3で敗れ4位に終わった。

2022〜2023:ORIGAMI

2002年日韓W杯決勝後に日本の空に舞い上がった折り鶴に着想した“ORIGAMI”をコンセプトに掲げ、同時に2022年カタールW杯が1993年の“ドーハの悲劇”を経験した国かつ、2011年にアジア王者となった場所でもあり、この“山あり、谷あり”の経験から“山折り、谷折り”で作る折り鶴にヒントを得たモデル。ジャパンブルーを基調にホワイトの折り鶴のグラフィックを大胆にデザインしたほか、スマートフォンなどの小さい画面での視聴を考慮し、背番号やネームには視認性が高いイエローを用いている。

2024~2025:FIRE

「ワイスリー(Y-3)」を招へいしたサッカー日本代表史上初のブランドコラボモデルで、パリで発表された「ワイスリー」2025年春夏コレクションのランウエイでお披露目されたエポックメイキングな1着。2020年代以降、フットボールとファッションの距離が急速に縮まるなか、世界的にも代表チームがデザイナーズブランドと協業する事例はまだ多くない。「ワイスリー」の起用は、日本代表ユニホームがスポーツウエアの枠を超え、カルチャー領域へと歩みを進めた象徴的な出来事だった。デザインは、赤い炎よりも高温である“青い炎”をモチーフに、完全燃焼をいとわないサッカー日本代表のプレースタイルからインスパイアされ、いくつもの小さな炎が大きな青い火柱を上げるグラフィックで、チームがひとつになった瞬間に力を発揮する日本代表を表現している。

2026〜:HORIZON

2026年北中米大会に挑む最新ユニホームは、水平線の先にある未だ見ぬ“最高の景色”(W杯優勝)を目指す志をデザイン。胴体中央全体に水平線を想起させる同心円状のリブ模様を施すことで、空と海が溶け合うような柔らかな霞を表現し、襟後ろには日本を背負いピッチに立つ代表選手の誇りと覚悟を象徴する日の丸があしらわれている。また、アウェイは36年ぶりにトレフォイルロゴを採用するなど、新たな時代の幕開けを印象づけた。

約四半世紀にわたって受け継がれてきたジャパンブルー。初期は富士山や刃文、日本魂といったモチーフを通じて、日本らしさを視覚的に表現する時代だった。しかし近年は“ORIGAMI”や“FIRE”、そして“HORIZON”に見られるように、より抽象的なコンセプトやストーリーによって日本代表像を描く方向へと変化。その時々の時代や価値観、日本サッカーの現在地を映してきた15着の系譜は、ユニホームが単なる競技用ウエアではなく、日本という国のアイデンティティーや文化も映し出していることを物語っている。2026年モデルは、その歴史の先にどんな景色を描くのだろうか。そして、その景色が日本サッカーにとって未踏の地であるならば、15着の系譜は新たな意味を帯びることになるだろう。

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