ファッション
連載 見果てぬ街づくり

新丸ビルの「天井のアーチ」をめぐる激論:見果てぬ街づくりvol.3

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 2007年4月に建て替え開業した新丸ビルは、丸ビルと並ぶ大規模プロジェクトだった。東京の表玄関にふさわしい施設にする必要がある。安田氏は妥協なく本物を追求することにした。(この記事はWWDジャパン2022年7月18日号からの抜粋です)

 2005年、三菱地所のSC営業部長として新丸ビルの商業開発責任者に就いた。02年に開業した丸ビルは、丸の内の新しいランドマークとして大成功を収めていた。丸ビルとは異なるもの、しかも共存共栄できる施設はどうあるべきか?単体の収益ではなく、街全体の価値を上げ、丸の内で働くオフィスワーカーたちの喜びや誇りにつなげたい。オフィス賃料の0.1%でも下支えになれば、たとえ数値化できなくても意味がある。

 丸ビルはカジュアルなファッションに、高級飲食店(35、36階)を組み合わせている。これに対し、新丸ビルは少しアッパーなファッションに、カジュアルな飲食店を組み合わせて相互補完する形をとった。さらに建築費削減のために高層階の飲食はとりやめて、商業ゾーンは7階までにした。

トイレのタイル一枚までこだわりぬく

 一方、内装は細部まで本物にこだわった。プレーンな丸ビルに対し、新丸ビルは大理石、木材、鉄をできる限り使った。会社からは「金をかけすぎだ。商業ゾーンは10年ごとに改装するんだろ?」と言われた。私は「新丸ビルは50年改装しなくていい。本物の木材を貼った床にハイヒールの跡がつくことで味が出る」と譲らなかった。

 建物全体の設計は英国のマイケル・ホプキンス卿に三菱地所が依頼し、商業ゾーンも彼の担当だった。計画段階では新丸ビルの外観に通じるメタリックで無機質なものだった。開発部門からは契約済みだと言われたが仕方ない。私は英国まで飛び、ホプキンスの事務所と必死の英語で談判してデザイン権を取り戻した。

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