
3月14〜19日に、「楽天 ファッションウィーク東京(以下、東コレ)」が行われた。世界情勢が不安定な中、参加ブランドはファッションの醍醐味である”着る喜び”をそれぞれのショーで示し、逆境に屈しない力強いクリエイションを見せた。
今シーズンのハイライトのひとつが、田中文江による「フミエ タナカ」だ。ブランド名変更後の初のショーで、得意とするエレガンスな軸に、エキゾチックやアウトドア、ロマンチックなフリルドレスまで、幅広いテイストをミックスした。フィナーレでは一筋の光が差し込む中、モデルが集合し、大きな輪となって空を見上げた。「ショーが開催できたこの一瞬の幸せをかみ締めて、日々の感謝を伝えたかった」(田中デザイナー)。平和への祈りをささげ、希望を与える演出に、割れんばかりの拍手が起こった。(この記事はWWDジャパン2022年4月11日号からの抜粋です)

27歳の岡本大陸による「ダイリク」は、「東京ファッションアワード」受賞により念願のショーを実現。毎シーズン映画に着想してコレクションを制作する同ブランドは、撮影スタジオのような空間を作った。大阪や韓国など、自身のルーツと好きなものを凝縮し、見る人にファッションにのめり込んだころを思い出させるような、エモーショナルなショーを成功させた。

「トーガ」は、冠スポンサー楽天による日本ブランドのサポート枠「バイアール」に参加し、東京で5年ぶりのショーを開催。ストレッチ素材やボーンにより、”弾む”ギミックを加えたスーツスタイルには、「こういう時だからこそ、軽やかで、前向きになれる、弾む服を」という古田泰子デザイナーのポジティブな思いが込められていた。

同じく「バイアール」支援の「トモ コイズミ」は、俳優や歌手などを起用した華やかなレッドカーペットを演出。ファッションショーと蜷川実花による写真撮影の2部構成で、憧れのハリウッドの世界への布石を打った。

「ブラック ミーンズ」は、日本の文化を盛り上げたいとの思いで、文化庁のサポートを受けて東コレに初参加。西洋で生まれた洋服に、仏具や座布団など日本らしい要素を加えたコレクションからは、ファッションを自由に楽しむ作り手の姿勢が感じられた。
「ピリピングス」は、”道に迷っている人”にエールを込めたショーを披露。漁師の無事や成功を祈ったセーターとして生まれたアランセーターを再解釈し、花や昆虫のモチーフを加えて、多様な個性を実現した。
東京ではほかにも、ベテランと若手が入り混じり、コレクションを通じて前向きなメッセージを発信していた。東京発の”着る喜び”はきっと世界にも届き、日々を彩る希望へと変わるはずだ。(編集部記者 美濃島匡、ファッションリポーター 大杉真心、ソーシャル・エディター 佐立武士、副編集長 大塚千践)