小さなブランドが群雄割拠する東京のファッション・ウイークを取材していると、「ブランドが長く愛されるために、必要な条件は?」とふと考える。他にまねできない世界観や、それをデザインに落とし込む表現力はもちろん重要だ。しかし、“自己満足”にとどまり、服が着る人の手に渡った先を想像する力が不足しているショーも少なくない。そんな中で参考にしたいのは、「タオ(TAO)」「フミエ タナカ(FUMIE TANAKA)」「アカネウツノミヤ(AKANE UTSUNOMIYA)」の2025-26年秋冬コレクションだ。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月12日号からの抜粋です)
「タオ」
DESIGNER/栗原たお
純真無垢なイメージを拡張、
硬派にも見せる
服は人の変身願望をかなえるツールだ。ピュアな雰囲気を醸し出す白をメインカラーに、フリルやプリーツを多用して彫刻のように立体的なフォルムを作り上げる。それが、かわいらしく繊細な従来の「タオ」で、着用者を無垢な少女のように飾ってきた。だが今季は同様のモチーフを登場させつつも、“ブラック&ゴールド”をテーマに、強く華やかなルックを連打。栗原たおデザイナーは、「黒い世界に何かがキラキラ光る様を表現したかった」と話す。
明確なコンセプトやメッセージを打ち出したわけではなく、あくまでもデザイナーの頭に素直に浮かんだ光景や概念を具現化している。「タオ」ならではのかわいさを愛するファンや、エッジの効いたシルエットやアクセサリーを求める女性の期待に応えながら、着る人に多彩な表情を与えてくれる。
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