ファッション

デザイナー交代の波がもたらす新時代  2026年春夏コレクションを大解剖【Learn with WWDJAPAN EDUCATIONS】

「WWDJAPAN」は11月11日、2026年春夏トレンドセミナーを開催した。セッションは三部構成となっており、第一部では今季のウィメンズトレンドが生まれた背景と、注目のムードやスタイルを発信するブランドについて、パリ・ミラノ・ニューヨーク・ロンドンコレクションを現地取材した「WWDJAPAN」記者が詳しく分析した。第二部では国内リアルクローズ市場に目を向け、「売れる服」「売れる着こなし」を分析。さらに第三部では26年春夏メンズトレンドについて、前シーズンまでの流れとリアルマーケットの動向を踏まえ、アイテム・素材・色柄・ディテール・バッグ&シューズまでを網羅的に解説した。


 

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【第一部】
26年春夏ウィメンズのトレンドを総括

2026年春夏は、ニューヨークをはじめとする4大ファッションウイークで15人超のデザイナーが新しいブランドでクリエイティブのトップに就任した激動のシーズンだった。第一部はそんな交代劇の解説から始まり、村上要編集長は「停滞するラグジュアリーに新デザイナーを起爆剤として迎え、“再定義”を期待する動きが目立った」と語った。また中国の長期低迷を受け、若年人口が増える米国へシフトする傾向が強まり、ショーに米国から顧客を招き、翌日から受注会を行うブランドも増加。結果として、「ミニマリズム」「機能性」「プレッピー」「マイアミ的なカラフルな色使い」などのトレンドが台頭した。

国内市場について本橋涼介ヘッドリポーターは、「“ヤングカジュアル”と“大人向け”の二軸」と整理。“ヤングカジュアル”のレファレンスは引き続き「ミュウミュウ(MIU MIU)」で、“Y2K”は沈静化しつつも浸透・定着。国内ブランドの展示会では「モードやグランジは不調」という声もあり、より甘めな傾向にシフトしている。フレンチガーリーにレザーやスエード、デニムなどを合わせ、“甘辛”に落とし込むのが今季のトレンドとなりそうだ。“大人向け”も主要レファレンスは「ミュウミュウ」や、マイケル・ライダー新体制の「セリーヌ(CELINE)」が中心で、スカーフの多様なVMDが広がりそうだ。さらにレースやクロシェ編みなどの精巧なディテールを、アイテムに奥行きを与える“クラフト”的要素として取り入れ、高単価帯に挑戦する動きも見られた。

その後は「パレード・オブ・カラーズ(高揚感あふれる色彩のコンビネーション)」「ライフ・イズ・ア・ビーチ(ビーチの楽観的ムードを都会の着こなしに)」「ツイステッド・プレッピー(ひねりをきかせた現代版プレッピー)」などの8つのキーワードを軸に、ランウエイ動画を鑑賞しながら今季のトレンドを丁寧に解説した。例えば「パレード・オブ・カラーズ」では「ヴェルサーチェ(VERSACE)」「フェンディ(FENDI)」を例に、強い色の掛け合わせや、パステルカラー、黒・白を合わせることでビビッドなカラーをさらに引き立てる提案などを紹介。「コロナ収束期にもみられたように、希望が差し込む局面では、デザイナーは明るい色を打ち出す傾向にある」と説明した。

参加者からの「ラグジュアリーブランドの停滞」への質問に対し村上編集長は、「コロナ後の好況を経て“新しさの不足”と“価格上昇”が顧客との距離を生んだ」と指摘し、「新デザイナーの投入による鮮度への期待と、『セリーヌ』のスカーフのようなエントリーアイテムの充実が復調のカギになる」と述べた。

【第二部】
国内リアルクローズ市場を展望

第二部には、阪急うめだ本店の源野里沙子バイヤーとエストネーションの飯島亜沙子ウィメンズディレクターが登壇。第一部で挙がったトレンドを日本のリアルクローズ市場でどのように提案するかを、具体例を交えて掘り下げた。

源野バイヤーは、「『D-ラボ』では一点で華やぐアイテムや、派手・アバンギャルドなブランドが堅調で、24年秋冬頃からフェミニン志向が一段と強まっている」と説明。「今季は『ニューロマンティック』『ハイパーフェミニン』を軸に、特に『クロシェ』素材をほっこり系ではなく、スタイリッシュ・モードに見せる着こなしの提案を強化する」と戦略を述べた。

一方、飯島ウィメンズディレクターは、「25年春夏には長い夏に対応するため涼しさとシルエットの美しさを両立させた別注トップスを開発し、インナーとアウターの境界を曖昧にする着方を提案した。見え方が“下着化”しないよう、コスメブランドと組み合わせて売り場を作った」と長期化する夏への対策を振り返る。26年春夏に向けては、「特別アイテムの販売といった従来型の施策から、デザイナーの思想を体感できるインスタレーションへと軸足を移し、ブランドの世界観を深く伝える取り組みを強化している」と次シーズンへの打ち手を明かした。単なる製品訴求にとどまらず、“ブランドのストーリーに触れる体験設計”を通じて購買意欲を喚起する方針だ。

今季のトレンドの一つである「メンズライクシャツ」に話題が及ぶと、村上編集長は「シャツonシャツ」「アウター代わり」「Tシャツとのレイヤード」など、着こなしの自由度が上がっていると指摘。飯島ウィメンズディレクターも、「タートルネックを差し込む」「スカーフやボウタイで首元にアクセントをつける」など、スタイリングのコツを伝授した。カラーでは源野バイヤーが「パレード・オブ・カラーズ」に通じるビビッドカラーの強化を示したのに対し、飯島ウィメンズディレクターはモノトーン派の顧客が多いことから、パステルカラーを差し色できかせるアプローチを紹介した。

【第三部】
26年春夏メンズの潮流を解説

第三部では、小山逸生「アマノジャク」ディレクターと共に今季のメンズのトレンドを多角的に解説した。小山ディレクターは、北千住と千駄木で約60ブランドを扱う同店で、ディレクションからバイイングまでを統括している。

近年のファッション市場を語る上で避けられないのが“酷暑”の影響だ。小山ディレクターも「18年のオープン当時はシーズンの立ち上がり需要が一定数あったが、近年は季節の先取りより“今着たいもの”を求めるオンタイム需要が増加している」と説明。「買い付けも、秋冬の立ち上がりに夏物、春夏の立ち上がりに軽アウターなど、気温にフィットするアイテムを柔軟に仕込む発想へシフトしている」と明かす。

さらにこの1年で手応えを感じているのが、「特徴的な定番スタイル」の台頭だという。「瞬発的なヒットを狙うのではなく、1〜3年先も置き続けられる『ステイプル』を軸にすることで、店のアイデンティティーがより鮮明になる」と語り、そうした考え方の下で別注品の開発を強化していることも共有した。

賛否両論があった「オーラリー(AURALEE)」のビーチサンダルについては、「今季最も注目しているアイテム」と高く評価。「当店にはハイエンドなブランドも多いので、オールレザーなどラグジュアリーに振り切ったスタイルで提案する予定」と展開の方向性を示した。

また「プライベートエスケープ(肌見せや透けもいとわぬ、自由で開放的な逃避)」というキーワードについては、「パジャマルックでも華美・派手になり過ぎず、ノンシャランで気取らないスタイルに仕上げるのがポイントだ」と具体的にアドバイス。「ユニバーサルマインド(異国文化への着想を普遍的なモードに昇華)」については「単に異国感が強いアイテムはハードルが高いが、スポーツやストリート、クラフツマンシップなどとの掛け合わせがキモになっている」と分析。シアー素材は24年春夏頃から取り扱っているが、「徐々に男性の支持も上がってきている」と現場での変化も共有し、来季以降の広がりを示唆した。

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