
コレクションのヘアメイクには、アーティストたちが意識せずとも“今”のムードが醸し出される。今回取材した3ブランドは共に、ヘアで前衛的な姿勢を表現し、メイクはナチュラルに仕上げて“引き算”する姿勢が見えた。ストリートでも髪で個性を主張してメイクはさりげなく仕上げる傾向がある中で、「フェティコ(FETICO)」「ノントーキョー(NON TOKYO)」「カミヤ(KAMIYA)」のヘアメイクには、東京の“今”が映し出されている。(この記事は「WWDJAPAN」2025年3月31日号からの抜粋です)
「フェティコ」
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1950年代の世界観を“引き算”で現代的に
舟山瑛美デザイナーから「ミューズはベティ・ペイジ(Bettie Page)」「1950年代のクラシカルな雰囲気をミックスしたコレクション」と聞いたヘアスタイリストの森岡祐介は、50年代の要素はダンスホールの会場が担っていると考え、ヘアには「違う年代のクラシック」を取り入れた。カールが大きい巻き髪のポニーテールやしっかりと立てた生え際で、リッチで着飾った女性像を表現する。メイクの主役は、ベティ・ペイジを思わせるアイコニックな赤リップ。目元はマスカラやライナーを施さず、ベージュから寒色系のグレーが混ざったトープの間の色味のアイシャドウで自然な陰影をつくり、現代的な印象を持たせた。
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森岡祐介/ヘアスタイリスト
これまでは抜け感を感じる毛先を流したスタイルが気分だったが、今回はここ最近やらなかったクラシカルな巻き髪で仕上げた。パワーショルダーの服にはシャープなラインのヘアを施すなど、シルエットのバランスを大事にした。
白石理絵/ヘア&メイクアップアーティスト
クラシカルな世界観で現代的な女性をどう表現するか模索した。肌やリップはマットからセミマットでクラシックに、すっぴんに見えない程度に引き算したアイメイクでモダンな印象を引き出した。
「ノントーキョー」
上品に落とし込むカギは「艶」
「ノントーキョー」は、“下町ギャンブラーの生き様”が着想源。競馬新聞と鉛筆を手に、競馬に集う人々に共通するスタイルや漂う哀愁感を出発点に、「それをどのようにおしゃれにできるかを考えた」(雑賀英敏)という。ヘアは馬のたてがみやしっぽをイメージし、後頭部の髪は逆毛を立て、ヘアアイロンやスプレーなどを駆使して風になびく様子を演出した。一方でサイドはタイトになでつけ、乾かずに光沢が持続するトリートメント剤を塗布することで上品に仕上げた。メイクは、プールから上がったような血色感のなさが特徴だ。肌はブルーの下地で青白く整え、セミマットに。目元はくまをイメージし、赤茶のアイシャドウで囲んだ。リップは青みのあるピンクを採用。一方で品のある印象を保つため、グロスでしっかりと艶を与えた。
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POINT
主な使用アイテム。「ウォンジョンヨ(WONJUNGYO)」“トーンアップベース NA 01 スカイブルー”[SPF43・PA+++](25g、1430円)
「ソマルカラボ(SOMARCA LAB.)」“ジェリーメディウム”
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雑賀英敏/TONI&GUY ヘアスタイリスト
重力に逆らって立てた髪を浮かせた状態に保つのに苦労した。逆毛を立ててボサボサなだけだと品がなく見えるので、トリートメント剤の光沢を与えることでメリハリを出した。
森田三琴/TONI&GUY メイクアップアーティスト
アジア系のモデルが多く、肌にもともと黄みがあるため青みに寄せるのが難しかったが、ブルーの下地とパウダーで青白い肌を演出した。唇に艶を与えることで、バランスを取った。
「カミヤ」
やんちゃさの中に、洗練された大人っぽさ
「カミヤ」はこれまでのユースなイメージから脱却し、より上品で大人っぽい印象へ成長を遂げたコレクションのムードをヘアメイクにも反映。ヘアを担当したMIKIOは、「神谷康司デザイナーから『カチューシャを使いたい』と依頼があったが、きれいにカチューシャを装着しても、今シーズンのテーマの“メッセンジャーズ”らしくないと思い、使わない方法を考えた」という。カチューシャはオリジナルで制作し、髪にランダムな跡をつけるために使用した。メイクは肌をきれいに作り、ほどよい艶でフレッシュさや躍動感を表現。目元はトープやブラウンを重ね、骨格を引き出しながらモードな立体感を演出した。
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POINT
「ディオール(DIOR)」“バックステージ アイ パレット 001 ウォーム”(7040円※旧版)
「ピース(PEACE)」“プロデザインシリーズ フリーズキープスプレー”(140g、2200円)(左)と“プロデザインシリーズ グロススプレー”(121g、2200円)
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MIKIO/ヘアスタイリスト
バイクに乗ることを想定し、髪が顔にかからないなど実用性を反映。モデルが持つヘアスタイルを生かし、「ヘアスタイリストがしっかりとセットをした」ようには見えない仕上がりを意識した。
吉田佳奈子/メイクアップアーティスト
個性豊かなキャスティングに合わせてアイラインを入れるなど、パンクなエッセンスを取り入れた。眉毛は立ち上げて少しスパイキーな印象にし、リップは自然に整えてフレッシュに仕上げた。