スニーカーにまつわる噂話のあれやこれやを本明社長に聞く連載。スニーカーブームの中で、今ビンテージスニーカーが世界的に注目を集めている。価値あるものは数千万円で取引されることも。今回は、ブランド古着屋「ベクトルパーク(VECTOR PARK)」を運営するベクトルの村川智博社長がゲスト。村川社長は、ちまたで“ジョーダン村川”と呼ばれるほどのビンテージスニーカーのコレクターだ。そんな二人がビンテージスニーカー市場をぶった斬る。(この記事はWWDジャパン2021年10月4日号からの抜粋です)
本明秀文社長(以下、本明):「ベクトルパーク」 は、中途半端じゃない?今のファッション業界はスニーカーならスニーカーだけとかデニムならデニムだけとか、何かに特化した店じゃないとうまくいかない。
村川智博社長(以下、村川):うまくいってないわけじゃないんですけど、1000円から100万円までの商品を扱っていてマスを取ろうとしちゃってますよね……。だから11月にスニーカー専門店を原宿に開こうと思ってます。半分は珍しいスニーカーを展示しようかと。
本明:村川君がすごいのは、マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)のサイン入りスニーカーをいっぱい持っていること。今ジョーダンはサインしないし、手に入れるのは難しいよ。何足ぐらい持ってるの?
村川:20〜30足持っています。サインにも一つ弱点があって、年数がたつと消えるんですよね。モノによっては水性ペンで書いているので見えなくなる。証明書が残っているので価値はあるんですが。サインよりジョーダンが実際に試合で履いた靴の方が10倍ぐらい高いので、それも集めています。僕は本質的に値段が上がりそうなものが好きですね(笑)。
――今スニーカーは投機と言われますが、もう投資レベルですよね。スニーカーは時間を置けば値が上がりますか?
村川:もちろん種類にもよりますが上がります。僕も事業では売買しますが、個人的に集めたビンテージは売らないんで。
本明:一般投資家に機関投資家が負けるのは、一般投資家には時間が味方するからなんだよね。機関投資家は四半期ごとに数字を上げないといけないから、すぐに株を売っちゃうけど、一般投資家は長期保有できる。僕も個人的に買ったビンテージは売らない。だから村川君がビンテージスニーカーのコレクターだけやっておけば、今頃すごいことになっていたと思う(笑)。
――今ビンテージブームで、めちゃくちゃ盛り上がっています。
本明:でも僕たちもよくポップアップで古着屋と組んで、ビンテージスニーカーを並べたりするんだけど、若い子が全く興味を持ってくれない。
村川:そうですね。
本明:興味があるのは僕みたいなおじさんがほとんど。だから今ビンテージが高騰しているように見えるけど、同じモノが同じ人たちの中でグルグル回っているだけじゃないの?とも思う。
村川:そういう説はあります。コレクター品の多くがそうだと思いますが、例えば絵も描く前に売る人を決めるので。絵も持ってもらう人によって値段が変わるし、例えば、本明さんや前澤(友作)さんに持ってもらうと当然値段も上がります。だからそもそも一般には売らない思いっきりインサイダーの世界なんです。その高騰したモノを最後は誰かが他の人に売って大金をつかむ。
本明:そうなんだよね。「ベクトルパーク」は、1日に「ナイキ(NIKE)」の商品をどのぐらい買い取っているの?
村川:1000点はあると思います。全国の店舗(約50店)と宅配買い取りがあるので。それをピックアップした店をやりたいんです。そうすれば商品を毎日入れ替えられるし。リサイクルショップって良いモノはすぐに売れてしまって、売れ残りがずっとお店にある。それだとお客さんも店に来る理由が無くなってしまうので、毎日新しいものがお店に入荷するような状態にしたいです。
本明:それは面白い。みんなでスニーカーを盛り上げていければいいね。