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「効率」と「能率」のお話 エディターズレター(2021年7月2日配信分)

※この記事は2021年07月02日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

「効率」と「能率」のお話

 シェアオフィスなどを手掛けるリアルゲイトの株式を売却して60億円強(「WWDJAPAN」推定)の資金を手にしたトランジットからは、「アフターコロナに向けて、準備着々」というムードを感じます。飲食、イベントオーガナイズ、ケータリングなどを生業としてきたトランジットを襲った、コロナという試練は想像に難くありません。と思ったら、大きなパーティから親密なコミュニケーションにシフトしたブランドからは「手土産」の開発を請け負い、イベントに送り込んでいたイケメンボーイズは今、「検温ボーイズ」として活躍中とのこと(笑)。ニューノーマルに対応できるようになったのは磨き続けたオペレーション能力の賜物とのことで、今後は、それを活かせる事業が矢継ぎ早に立ち上がる予感ヒシヒシです。

 この場合のオペレーションというのは、一連の業務のマニュアル化というより、手持ちのアセット(資産)の共有から生まれた自律的に考えるムードの醸成という印象です。イベントオーガナイズのマニュアルがしっかりしていても、「手土産」の開発には活かせそうにありません。飲食メニューの開発力はもちろん、長年の付き合いで培ったブランドの世界観に対する理解度などのアセットを活用し、そこに「どんな包み紙がいいのかな?」などの新たなアイデアをプラスしている印象です。

 話は大きく変わって、東京・両国にある下町のOEM企業、精巧も、マニュアルではなく、設備というアセットのシェアで「考えられる人材」の育成に成功しました。同社は、1人の人間は1つの作業を延々と繰り返すだけのロット生産を改め、1人の人間が複数の作業を経て最初から最後までを担う、立ちミシン方式・トヨタソーイングシステムを導入。つまり、例えば1人の人間が独占していた“襟をつけるためのミシン”を複数の職人がシェアし、結果社長は「単能工」が「多能工」に変わった、と言います。これにより、精巧における縫製のリードタイムは3日から最短4時間に短縮。臨機応変に対応できる体制も整いました。トランジットも、精巧も、オペレーション能力を高めるのは財産のシェアであり、作業のマニュアル化ではないのかもしれないと教えてくれます。

 個人的には長年、問題が起こるたびにルールを設けてしまいがちな編集部に疑問を持っていました。正直、それで業務が「能率化」した印象はありません。「早く」なったり、「楽に」なったり、「揉めなく」なったり、「効率(使った労力に対する成果)」は良くなったかもしれません。でも、「能率(仕事の達成度)」はどうなのだろう?そんな風に思っていました。アセットのシェアは、個々人の意識を高め、仕事の「能率化」を導く。そんな仮説を立て、日々の仕事に取り組んでみようかな?と思っています。

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