ファッション

「エルメネジルド ゼニア」の圧倒的軽やかさの真意 2022年春夏はパンデミックからの解放を祝福

 「エルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)」は6月18日に2022年春夏コレクションをデジタル形式で発表した。“THE (RE) SET”と題した前シーズンからの続編として、今季は”THE (NEW) SET”と銘打った。 映像は、迷路に閉じ込められて混乱する様子から始まる。入り組んだ建物と広大な自然を行き来しながら徐々に自分を再発見し、最後は美しいディナーで仲間との再会を果たすという、パンデミックからの解放を表現している。「私たち全員が心の中に閉じ込められ、内面に自分だけの場所と感情を作り上げた。それを客観的に捉えることで少しずつ本来の自分を取り戻し、私たちは以前にも増して自由を得たとを感じられるのだ」と、アレッサンドロ・サルトリ(Alessandro Sartori)=アーティスティック・ディレクターは映像について説明した。昨今の人々の変化を見て「着る人に、自由と快適さを与えるコレクションが必要だ」と考えたという。

「予期せぬ繊維にたどり着いた」

 今シーズンは、1940〜50年代のワークウエアの実用性と、仕立ての技術を融合したアウターが豊富だった。着物風ジャケットやロングダスターコートは、体の動きに柔軟に適応する平面裁断で仕立てている。深いポケットが付いたワークジャケットとチョアコートにはドローストリングが内側に隠さており、サイズ感を2サイズ幅で変えられる機能性をプラス。ジャケットの袖やワイドレッグパンツの裾には、ほつれを防ぐためにゴムで加熱処理を施すなど、ディテールも抜かりない。これらのアイテムはウールやリネン、コットン、ジャガード、紙のように薄いレザーを用いており、芯地や余分な構造を除くことで圧倒的な軽さと流動性を実現した。「自由と快適さを手に入れるには、軽量性が不可欠だ。絶え間ない素材への探求によって、リネンやシルクなど、これまで予期していなかった繊維にたどり着いた」とサルトリは語った。個々の軽さにこだわった今季を最も象徴するのが、ウオッシュ加工を施したシルクや、フェザーライトのナイロンによるブレザー、レザーのような光沢を放つウールのサマーコートだ。軽量性を備えたウエアが着る人の動きによって一層の自由を手にする一方で、美しいシェイプと端正なディテールによって、フォーマルという軸はぶらさない。パッドが入ったスリッパやトートバッグ、クラッチバッグとハンドバッグの2wayで持てるこれらアクセサリーにはペーパーレザーを使用し、軽さと耐久性を兼ね備える。

 カラーがカルサイト、ミネラルグリーン、サイプレスといった淡いトーンで構成されているのは、着る人のクローゼットの中にすでにある服との合わせやすさを考慮したからだ。「新しい物ではなく、すでに所有している物に目を向け、季節ごとに選択肢を増やして個人のスタイルを拡張していく方法を考えた。全ての根底にあるのは、コンフォートとエフォートレスだ」とサルトリは述べる。合理的に計算されたテーラリング、特徴的な色彩と質感がフォーマルを緩やかに崩してエフォートレスなルックを完成させる。現代のニーズに合わせて新たなテーラリングが再構築された”THE (NEW) SET”のコレクションは、隔離時代から解放されつつある人々の自由な感覚と呼応していくだろう。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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