ファッション

仏レザーバッグ「ポレーヌ」は店舗営業日激減でも売り上げ倍増 好調の日本にも出店へ

 フランスでは度重なるロックダウンによって多くの中小企業が苦境を迎えているが、パリ発のレザーグッズブランド「ポレーヌ(POLENE)」は好調だ。アイテムはバッグ14型(2万〜6万円)と、財布やコインケース(5000円〜2万円)など。販路は自社ECとパリの旗艦店のみで、卸は行っていない。売り上げの8割を海外が占め、昨年10月には日本版ECを開設。予想を超える売れ行きで、全体の売上高を大きく押し上げたという。昨年は実店舗の営業日が4分の1に激減したものの、売上高は倍増した。

 同ブランドはフランス人3兄妹が2016年に立ち上げ、5型のバッグからスタート。自社ECと20平方メートルほどの小さな店で売り始めると、口コミと地道なマーケティング活動によって売り上げを徐々に伸ばしていった。現在は、スペインのアトリエとパリの本社を合わせて100人超の従業員数を抱えるまでに成長。20年8月には売り場面積130平方メートルの物件に旗艦店を拡張移転し、今後はニューヨークと東京への出店準備を進めている。共同創設者で36歳のアントワーヌ・モテ(Antoine Mothay)に、ビジネス成長の要因やブランド理念、今後の展望についてを聞いた。なお、彼らの曽祖父はフレンチカジュアルを代表するブランド「セント ジェームス(SAINT JAMES)」の創設者である。

王道のPR戦略だからこそ際立った品質

ーーブランド立ち上げの経緯は?

アントワーヌ・モテ「ポレーヌ」共同創設者(以下、モテ):僕ら兄妹はファッションに興味があったし、曽祖父が「セント ジェームス」でファミリービジネス(事業はすでに売却済み)を行っていたので、そこから継承したノウハウを生かしたかった。フランスには長い歴史を持つラグジュアリーブランドはたくさんあるが、実用性と高品質にこだわり、なおかつ手が届きやすい価格帯であれば勝算はあると考えた。

ーー3兄妹のそれぞれの役割は?

モテ:兄は生産管理とデザインを管轄し、生産地であるスペインのアトリエとのやり取りを担っている。僕はビジネススクール出身なのでファイナンスと撮影やPRなどのコミュニケーションを、妹は主にECサイトの管理を担当している。それぞれに役割はあるものの、全ての情報を共有できているし、ファミリー企業ならではの連携は常に意識している。

ーーブランドの理念や強みとは?

モテ:品質の高さと実用的なデザインだ。バッグの核となるレザーは、LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)やケリング(KERING)に革を長年提供しているスペインのタナリー(革の製造業者)の、フルグレインカーフレザーを使っている。タナリーは、革のなめしと仕上げに関する専門知識と技巧で世界で名高い名門。上質な革がしなやかな曲線を描き、かつ耐久性や良質な手触り、構築的なデザインの立体感を実現させてくれる。生産は、最高品質な皮革製品の職人技術を伝統的に受け継ぐスペインの小さな街ウブリケで行なっている。「ポレーヌ」創設前に僕ら3人はこの街に9カ月滞在し、革の裁断や組み立てから、縫製、染色、刻印までの全工程を職人と相談しながら決めた。サヴォアフェール(匠の技)を誇る高品質なバッグでありながら、日常的な使いやすさに重きを置いており、ミニマルで他にはないデザインをコンセプトにしている。

ーーどのようなPR活動を行なっている?

モテ:創設時は兄妹3人だけだったので、雑誌記事の掲載やインスタグラムの広告、インフルエンサーへのギフティングをPRとして行なった。ギフティングといっても広告費を渡したわけではなく、SNS投稿するかどうかは今でも彼らに委ねている。その手法が顧客からの信頼につながったのか、ブランド立ち上げ後から急成長し、小さなスペースの旗艦店はたくさんの来店客でいっぱいになった。特に変わった手法を用いているわけではなく、口コミでの反響が大きかったのでPRのやり方は今でも変えていない。良い製品を作ることが売り上げにつながると自信になったので、PRやマーケティングよりもデザインと生産に予算をかけている。

ーービジネスが軌道に乗るまでに大きな転機はあった?

モテ:特に転機と呼べるものはなく、地道にコツコツ積み重ねてきただけだ。ここまで成長できたのは、事業を自社で完結しているからこそ実現できた品質と価格帯だろう。現在100名ほどの従業員が在籍し、7割は提携しているスペインの生産工場から近い倉庫兼オフィスで品質管理と配送業務を、3割はパリの本社でデザインとPR、マーケティングなどを行なっている。

日本人PRの熱意がきっかけで日本進出へ

ーー人気商品は?

モテ:“ナンバーワン(Number One)”と、小さいサイズの“ナンバーワン ナノ(Number One Nano)”がトップ3の常連だ。創設時に発表した5型のうち、“ナンバーワン”だけがヒット品番としてブランドの顔になった。フルグレインカーフレザーに加えてクロコ型押し、スムースレザーなど、カラーバリエーションを増やして、現在も不動のベストセラーである。昨年発表したショルダーストラップ付きのハンドバッグで、丸みのある柔らかな曲線を描くクラシックな“ナンバーナイン(Number Nine)”もトップ3に入る勢いで売れている。日本では、彫刻のような形状の“ナンバーエイト(Number Eight)”が売れており、アジア全体ではアクセサリー感覚で持てるミニサイズのバッグが好調だ。顧客全体の20%は2回以上購入したリピーターというデータもある。

ーー日本市場に参入したきっかけは?

モテ:現在日本市場を担当するPRは日本人女性で、面接時に彼女が「日本で必ず人気になる」と熱弁してくれたこと。日本出身で、フランスのファッション企業でPRをしていた彼女の言葉には説得力があった。日本版のECサイトを開設すると、日本のメディアでの露出はほとんどなかったのに、予想以上の売り上げを記録した。品質に対して非常にこだわりの強い日本で受け入れられたのはとてもうれしいこと。今後は雑誌とのタイアップや、インフルエンサーへのギフティングでPRを強化していきたい。

ーー卸を行う予定はある?

モテ:一切ない。全ての事業を社内で行うことが、ブランドのDNAだから。兄妹で運営しているから“ファミリー”というだけでなく、会社全体が家族と考えてファミリービジネスを継続するつもりだ。品質と価格、デザインに顧客の声をフィードバックできるのは、全て自社で完結しているからこそ。ニューヨークと東京に開く予定の旗艦店も、全て社内で事業を行う。

ーー旗艦店について立地や規模など、現在決定していることはある?

モテ:まずはニューヨークのソーホーに、約350平方メートルの路面店を来年には開く予定。東京は表参道エリアを検討しており、日本への渡航が許されれば可能な限り早く現地で決めたい。創業からデジタルに注力してきたため、コロナ禍でも売り上げを伸ばすことができたが、実店舗も必要不可欠だ。商品に触れられて、ブランドの世界観を体験し、コミュニティーの一員であることを感じてもらえる場にしたい。

ーー今後、バッグ以外の商品を展開する予定はある?

モテ:ジュエリーを発表する予定。レザーグッズでもメタルパーツは美しさを引き立たせる大切な役割があり、高い宝飾技術が求められる。バッグのディテールにもサヴォアフェールを感じてもらえるが、職人の技術をより一層生かしたジュエリーを提供したい。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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