ファッション

合成ダイヤで「時代遅れの業界に改革を」 27歳の女性デュオ「キマイ」が急成長

 合成ダイヤモンドの市場が急速に拡大している。ダイヤモンド専門の市場調査を行うポール・ジムニスキー・ダイヤモンド・アナリティクス(Paul Zimnisky Diamond Analytics)によると、2018年の世界のダイヤモンドジュエリー市場の年間売上高は約9兆円で、うち合成ダイヤが占める割合は3%だったのが現在は22%に伸び、35年には売上高が現在よりもさらに8倍に拡大すると見られている。国内では合成ダイヤモンドに特化した「シンカ(SHINCA)」や「プライマル(PRMAL)」がデビューし、欧米でも新たなジュエリーブランドが続々と参入している。

 中でも注目なのが、ロンドン発の「キマイ(KIMAI)」だ。同ブランドは18年に約100万円の資本金で設立し、19年には約1億3000万円の資金調達に成功。20年には売上高は非公開ながら、約2500%増という年間成長率を記録したという。ブランド設立後すぐにメーガン・マークル(Meghan Markle)やエマ・ワトソン(Emma Watson)、ジェシカ・アルバ(Jessica Alba)らのセレブリティーが着用したことも後押しし、ファッション誌やビジネス誌で数多く取り上げられた。

 同ブランドを立ち上げたのは、ベルギー・アントワープのダイヤモンドトレーダーの家庭で育った27歳のシドニー・ノイハウス(Sidney Neuhaus)とジェシカ・ワーチ(Jessica Warch)の2人だ。合成ダイヤモンドと100%リサイクルのゴールドを使用したジュエリーと、ビスポークの婚約・結婚指輪を約2万5000円〜20万円の価格帯で提供している。英セレクトショップのブラウンズ(BROWNS)とブラウンズ イースト(BROWNS EAST)で取り扱われているものの、基本はDtoCでの販売が中心だ。合成ダイヤの市場は今後どこまで拡大するのだろうか。またし烈な争いを制するために他ブランドとの差別化すべきこととは。「キマイ」共同創業者のジェシカ・ワーチに聞いた。

合成ダイヤで業界を進化させられる

ーー「キマイ」立ち上げまでの経緯は?

ジェシカ・ワーチ(以下、ワーチ):私はロンドンのビジネススクールで金融を学び、新興企業に勤めていたの。20年来の幼なじみであるシドニーはロンドンで宝石鑑定士として働いていて、2人で合成ダイヤを知った直後から試作品を一緒に作っていたわ。その後私たちは仕事を辞め、互いの貯金を崩して資本金約100万円で18年に「キマイ」のECサイトを立ち上げた。2カ月後、当時は公的な立場にあったメーガン・マークルが私たちのイヤリング“フェリシティ”を着用したことで売り上げは一夜にして急増し、その年に資金調達に成功したわ。現在も“フェリシティ”はベストセラー商品の一つよ。

ーー合成ダイヤについて知ったのはいつ?

ワーチ:シドニーと一緒に、地元アントワープの宝石商の元を訪れたときね。合成ダイヤモンドの普及によって、私たちが愛するダイヤモンドジュエリー業界をよりサステナブルかつエシカルに進化させ、次世代のニーズに合った商品を提供できると感じたわ。

ーー合成ダイヤになぜ可能性を感じた?

ワーチ:私たちはダイヤモンドトレーダーの家庭で育ったから、ダイヤモンドジュエリー業界で働きたいとは長年思っていたの。でも18歳のころ、この業界がいかに環境破壊に加担し、サプライチェーンの透明性が欠如しているかという深刻な問題に気づいて、時代遅れの業界に幻滅したわ。それから何か新しい方法で改革したいと模索し、合成ダイヤなら業界の問題解決につながると確信したのよ。

ーー業界が抱える問題とは?

ワーチ:原石を採掘するために大量の土を掘ることで土壌汚染を引き起こしやすくなるし、採掘時に排出する二酸化炭素も問題ね。また“ブラッド・ダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)”と言われているように、ダイヤモンドの原石の売買が紛争の原因になっていることもある。サプライチェーンが不透明だから、ダイヤがどこから採れたのかを知るのはほぼ不可能だし、採掘場での児童労働から低賃金、無償労働、人権問題などはとても深刻よ。

ーーその問題が合成ダイヤによってどう改善される?

ワーチ:現在契約しているインドの生産工場は太陽光発電を用いているから、二酸化炭素排出量は大幅に削減できる。工場の労働環境と賃金も基準を満たしているし、良好な信頼関係を築けているわ。天然ダイヤは、採掘から購入者の手元に届くまでに15のプロセスを要するのだけど、「キマイ」の商品は6に短縮して追跡もできる。それに作業工程を省くことで、価格帯を一般的な相場よりも30〜40%下げることができたわ。製品はアントワープにあるアトリエで職人が手作業し、パッケージはリサイクルダンボールで、配送はカーボンニュートラルで徹底しているわ。

最終的にはデザインと品質

ーー天然ダイヤと合成ダイヤは生産背景以外でどう違う?

ワーチ:合成ダイヤは天然ダイヤと物理的な特性が同じで、見た目だけでは宝石商でも区別ができないの。旧式のダイヤモンド検出器でも鑑別できないから、特別な機械が必要なぐらいよ。「キマイ」の合成ダイヤはIGI(International Gemmological Institute)鑑定書付きで、0.5カラット以上の場合は要望に応じてGIA(Gemological Institute of America)、またはHRD(Hoge Raad voor Diamant)の鑑定書を取得できるわ。

ーー「キマイ」の顧客層は?

ワーチ:欧米の28〜45歳の女性ね。婚約・結婚指輪に関しても、女性の顧客が大半を占めているわ。新製品を毎月発売するサイクルが奏功して、リピートにつながっている。ダイヤモンドをより身近に感じてもらいたいという思いでブランドを立ち上げたから、女性顧客のリピート率が高い現状に満足しているわ。今後は消費者と情報を共有し、コミュニティー作りに力を入れていくつもりよ。特に、消費者に合成ダイヤについて伝えていくことが必要ね。合成ダイヤが宝石か否かという定義や、ダイヤの種類についても基準がまだあいまいなの。だから、調達した資金を教育のコンテンツ制作にもあてて、合成ダイヤの正しい知識を伝えていきたいわ。

ーー合成ダイヤの市場はさらに拡大しそうだが、ほかとの差別化はどう図る?

ワーチ:合成ダイヤを扱うブランドが増えた理由は、製造技術の向上によって品質が格段に上がったことと、消費者が環境負荷が少ない製品を望んでいるから。これからはサプライチェーンの透明性がさらに重要になるわ。同時に、再生可能なエネルギー源や、リサイクル貴金属をどう使うかも大事ね。でも、私たちがここまで成長できているのはサステナビリティの取り組みだけでなく、デザインと品質にこだわってきたからこそ。これからも顧客からの意見を取り入れて、ほかと差別化を図っていきたいわ。

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

2022年春夏速報第二弾は、注目の3大ムードを解説 日本から唯一現地入りしたビームスのリポートも

今週号は、日本からパリコレ入りしたおそらく唯一のショップ関係者であるビームスの戸田慎グローバル戦略部長によるパリコレダイアリーからスタート。来年本格始動する海外ビジネスのために渡航した戸田部長が目にしたパリコレ、展示会、パリの街並みをお伝えしつつ、そこから感じたこと、業界人がみんなで再考・共有すべきファッションへの想いを存分に語ってもらました。トラノイやプルミエール・クラスなどの現地展示会の雰囲気…

詳細/購入はこちら