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老舗アパレルの「生存本能」 エディターズレター(2020年7月9日配信分)

※この記事は2020年7月9日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

老舗アパレルの「生存本能」

 ワールドの社長に6月23日付で就任したばかりの鈴木信輝氏を取材しました(記事は「WWDジャパン」7月6日号掲載)。鈴木氏は45歳。大手総合アパレルのサラリーマン社長としては異例の若さで、連結売上高2362億円、従業員数1万人のトップに立ったわけです。

 社長人事が発表された3月、鈴木氏を後継者に指名した前社長の上山健二会長の言葉が印象的でした。「45歳の力ある新社長に若返ることは、社内外問わず、あらゆる局面でポジティブなインパクトをもたらすと確信している」。

 記事でも少し触れましたが、この若返りに老舗企業のしたたかな「生存本能」を感じずにはいられません。時代の節目で若い改革者を抜擢し、ビジネスモデルを大転換させる。ワールドの過去を振り返ると、そうやって生き残ってきたことが分かります。

 ワールドの“中興の祖”である創業家出身の寺井秀藏シニアチェアマンは、1997年に48歳でワールドの社長に就任しました。寺井氏は93年にスタートした婦人服「オゾック」を手始めに、専門店への卸売メーカーだったワールドをSPA(製造小売り)企業に大転換させた立役者です。大店法の廃止によって2000年以降に日本中に作られたショッピングセンターで一気に業容を拡大します。

 しかし2010年代に入ると大量出店・大量生産の手法は行き詰まります。そこで社長に抜擢されたのが上山氏でした。当時49歳。住友銀行(現三井住友銀行)出身の上山氏は、中古車販売のジャック、スーパーの長崎屋などを再建した実績を買われて、業績が悪化していたワールドの構造改革を断行します。500店舗前後を閉鎖する荒療治でしたが、収益性を回復させ、18年には再上場を果たしました。さらにM&Aや提携などによってオフプライスストアやリユース、サブスクリプション、D2Cなどと既存事業を連携させる「ワールド・ファッション・エコシステム」の構築にも乗り出します。

 この間、上山氏の参謀役として構造改革や成長戦略のシナリオを書いてきたのが鈴木氏でした。2012年に入社する以前は、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)、ローランドベルガー、企業再生支援機構、ボストンコンサルティング・グループでキャリアを重ねてきました。デジタルに強く、自身でプログラミングを行える経営者です。

 「ワールドは時代に合わせて常に挑戦し続ける会社でなくてはならない」と話す鈴木氏。変化の激しい時代は、挑戦しないことが最大のリスクになる。老舗企業が生き抜くため本能なのです。

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