ファッション

「グッチ」「バレンシアガ」に行列 外出規制緩和で店舗営業再開のパリをリポート

 フランスでは、約2カ月続いた外出規制が大幅に緩和されました。5月11日から外出規制措置に段階的解除が始まり、自宅から100km以内の移動許可や、飲食業をのぞく商店も営業を再開できるようになりました。しかし重症者数・死者数が多いイル・ド・フランス(パリ首都圏)は要注意を示すレッドゾーンに指定され、ほかの地域よりも厳しい規制が残っています。映画館や大規模な美術館、公園などは封鎖されたままで、中学校以上の学校再開も遅れている状況です。4万平方メートル以上の大型商店は営業再開が許可されていないため、プランタン(PRINTEMPS)やギャラリー・ラファイエット(GALERIES LAFAYETTE)のオスマン本店は引き続き閉鎖中。ブリュノ・ル・メール(Bruno Le Maire)経済・財務大臣によると、11日からフランス全土で飲食業以外の商店約40万(約87万5000人)が営業を再開し、その他の企業も在宅勤務奨励を続行しつつ活動の平常化を図るといいます。公共交通機関では11歳以上はマスク着用が義務化され、国民には週2000万枚のマスクが供給されています。政府は営業を再開する商店に、顧客同士の距離を1メートル以上保ち、入店時には消毒液の塗布やマスク着用を要請しています。これらに加えてLVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン(以下、LVMH)やケリング(KERING)は、ブランドの旗艦店の営業再開に際し、各店に消毒専任の清掃者を配備して店内を常に清潔に保つと宣言しました。

「ザラ」や家電量販店に行列

 外出規制解除の初日となった11日のパリは冷たい風が吹き、雲がかかった天候で外出日和とはいきませんでしたが、街は少し活気を取り戻した模様でした。AFP通信や複数のフランスの新聞の報道によると、パリや地方都市では「ザラ(ZARA)」の店舗に顧客が殺到したようです。店の前で行列を作る光景がツイッター上でも話題となり、11日には「ザラ」がフランスのツイッターで一時トレンド入りするほどでした。各店の入り口には消毒液が常備され、マスクを着用していない場合は警備員が入店を断ります。ほかにも家電量販店のフナック(FNAC)も行列を作る盛況ぶりでしたが、多くの人が殺到しすぎたことで一部からは批判もありました。地元の新聞「ロブス(Lob’s)」紙は、顧客の大半は家電やスマートフォンの修理のために訪れたのだと報道しています。また、商店以外に人が集まったのは、セーヌ川沿いやサン・マルタン運河沿いです。レストランやバーは営業していないため、多くのパリジャンはワインを持って屋外での飲食で友人らとの再会に祝杯をあげていたようです。しかし政府が濃厚接触による第二波を警戒し、数日後には屋外での飲酒行為を禁止すると発表しました。

試着などの対策はそれぞれ

 私は商況を調べるため、外出規制が緩和された週の土曜日15日に街へと繰り出しました。シャンゼリゼ通りの消費者の3分の2が観光客だというこの大通りでは、まだまだ人影がまばらです。普段なら多言語が飛び交うシャンゼリゼ通りですが、この日聞こえてきたのはフランス語ばかり。それも訛りの交じったフランス語が多いことから、首都圏ではなくほかの地域から訪れているフランス人のようでした。凱旋門近くの「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の店舗は少しだけ顧客が列をなしていました。11日のAFP通信の報道によると、外出制限を終えた自分へのご褒美や娘の誕生日プレゼントなどを買い求めて郊外からの顧客が訪れたものの、大盛況とまではいえない様子でした。シャンゼリゼ通りに昨年新店をオープンしたギャラリー・ラファイエットも、人影は少なめ。顧客よりも販売員の方が多く、時間を持て余しているようにも見られました。「ザラ」は商品の試着を禁止しているため試着室は開いていませんでしたが、ギャラリー・ラファイエットでは試着が許可されています。同店では「一度試着された商品は、陳列棚に戻していません」と注意書きが掲示され、商品は全て24時間の検疫を経て店頭に並んでいるとのこと。また同店は会員顧客向けにショッピングイベントを開いており、百貨店側が会員顧客に自宅と店舗までの送迎車を用意し、店内でパーソナル・スタイリストからのアドバイスを受けながら買い物ができる催しを行っているようです。同店のすぐ近くに構えるLVMH傘下の化粧品や香水を扱う専門店セフォラ(SEPHORA)は、比較的客数が多かったように思います。商品の試供は禁止されているため、試供品は全て透明のビニールテープで封印されていました。店員によると「普段なら使用後の返品は認められないが、試供が禁止されている期間は返金・交換を可能にしている」とのこと。

高級店ではマスクを無料配布

 ラグジュアリーブランドの旗艦店が多く軒を連ねるモンテーニュ通りでは、いくつかの店舗で行列ができていました。私が訪れた昼の時間帯に列を作っていたのは「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」です。列はなくとも店内に入ると「ディオール(DIOR)」「セリーヌ(CELINE)」「ロエベ(LOEWE)」にも客がいました。ラグジュアリーブランドの旗艦店では、入り口に使い捨てのマスクが用意されています。そんな中で「ジル サンダー(JIL SANDER)」の旗艦店には良質なコットン素材のマスクが置かれていて、洗濯すれば繰り返して使用できるため、私の最近の必需品となっています。

 セーヌ川を渡って左岸、百貨店のボン・マルシェ(LE BON MARCHE)周辺は大変混雑していました。私は5年ほどこの周辺に暮らしていますが、一年で最もにぎわうクリスマス時期と同じくらいの盛況ぶりにとても驚きました。シャンゼリゼ通りとは違い、地元民が多かったようで、家族連れから友人、カップルまで世代もさまざまです。感染防止には十分注意しつつも、人に溢れて活気がある街の光景を見たのは久しぶりだったので、なんだかうれしい気持ちになりました。閉鎖中の百貨店の顧客がボン・マルシェに流れてきたことと、同店はもともと地元の顧客が多いため、これだけにぎわっていたのでしょう。もう一つは、ひと足先にセールを行っていたことも挙げられます。フランスのセールは毎年夏と冬の2回に、国が定めた日程で一斉にスタートします。今年の夏のセールはまだ日程が決まっていなかったのですが、ボン・マルシェは会員限定で先行セールを開催していたようです。ちなみに会員になるには、窓口でカードを受け取り、簡単な登録で完了します。

セレクトショップにも客足戻る

 小規模な商店や飲食店が多いマレ地区は、若者で溢れ返っていました。ブロークン・アーム(THE BROKEN ARM)やトム・グレイハウンド(TOM GREYHOUND)、レクレルール(L’ECLAIREUR)、メルシー(MERCI)などのセレクトショップの店内にも顧客の姿がちらほら。このエリアの場合は、商店よりもテイクアウトのみで営業を再開したレストランや惣菜店、ベーカリーなどにたくさんの列ができていました。ベンチのある広場でのんびりしているパリジャンが多く、のどかな光景は日常のシンプルな幸せを思い起こさせてくれます。

 外出規制措置の緩和で再び自由を手にして歓喜する人もいれば、第二波を恐れてさらなる不安を覚える人もいます。段階的な解除措置の第二段階は5月末までの状況を見て、6月初めに決定される見通しです。フランスを含め各国で重症者・死者数は減り続けているものの、小規模クラスターもすでにいくつか発生しています。街や経済活動が平常のリズムを取り戻すのには、まだまだ時間を要しそうです。

ELIE INOUE:パリ在住ジャーナリスト。大学卒業後、ニューヨークに渡りファッションジャーナリスト、コーディネーターとして経験を積む。2016年からパリに拠点を移し、各都市のコレクション取材やデザイナーのインタビュー、ファッションやライフスタイルの取材、執筆を手掛ける

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