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ストリートファッションを記録し続けて35年 「ストリート」「フルーツ」編集長が見据えるコロナ後の原宿

 海外ストリートスナップ誌の草分けとして1985年に創刊した「ストリート(STREET)」はこのたび、創刊号から100号(85~97年)までを電子書籍化し、自社サイトで販売を始めた。電子書籍化のきっかけは、「『メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)』のチームが、『ストリート』のアーカイブを見るために来日し、文化学園図書館を訪れたといった話を耳にしたこと」と、同誌を運営する青木正一ストリート編集室代表は話す。80~90年代のムードは近年トレンドとして注目を集めていることもあり、「海外メディアでも取り上げられ、販売は順調な滑り出し」だ。国内外のストリートをまるで文化人類学者のような目線で見続けてきた青木代表に、電子書籍についてや、コロナショックでストリートファッションがどう変わっていくかを聞いた。

WWD:「ストリート」を電子書籍化したのはなぜ?

青木正一ストリート編集室代表(以下、青木):35年分のデータのうち、フイルムで撮っていたころのデータが段ボール10箱分ほどあったが、それを記録用として電子化し始めた。その流れで、どうせだったらアーカイブとして電子版を発行しようとなった。若い人にストリートファッションを広く見てほしい。創刊号から100号までの全巻セット(3万円)が既に結構売れていて、購入者を見ると海外のハイブランドのデザイナーであることも少なくない。アーカイブをそのまま自分のデザインに落とし込むというより、空気を感じて、新しいものを作るためのインスピレーション源としてもらえたら嬉しい。80~90年代ファッションの記録は今すごく求められていると感じる。蓄積してきたデータを生かして、今後はファッション業界のプロ向け分析サービスのようなことも行っていきたいが、システムを作るのに時間がかかってしまってなかなか実現していない(笑)。

WWD:今、80~90年代ファッションが求められているのはどうしてだと思うか。

青木:数年間にわたって市場を席巻した“ラグジュアリーストリート”のトレンドから今は次に進もうとしている時期で、みな模索しているんだと思う。“ビンテージ”がこれからはキーワードとしてより強くなっていくと感じる。「どうでもいいもの」は今後は今まで以上に求められなくなる。「どこにでもあるデザインならいらない」「他にない、1点ものがほしい」という考え方の人が増えているように感じていて、それはまさにビンテージに通じる。昨年、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が雑誌のインタビューで「ストリートウエアに代わって、ビンテージが表現手法として広がる」といった趣旨の発言をしていたが、コロナショックでの意識変化もあって、そういったムードが拡大するように感じている。

WWD:コロナショックで街から人が消えて、ストリートファッション自体が今はなくなっている。

青木:現時点では確かにそうだが、若い人のファッション意欲はこれからも下がらないんじゃないかと思っている。原宿は店が休業し、人もいなくなったが、おしゃれな10~20代の子を見かけることがある。そういう子からは、「早く服が買いたい!」というムードを感じる。緊急事態宣言下でお金もしばらく使っておらず、デザイナーブランドの服など「いいものがほしい」という気持ちが盛り上がるんじゃないか。コロナショックの前から、男の子だけでなく女の子にも原宿っぽいファッションが戻ってきていると感じていたので、土台はある。景気悪化で、大手のメーカーや小売企業など、“どうでもいい服”をたくさん作って売ってきた会社はコロナショックで元気がなくなるだろうが、そうなると逆にストリートは盛り上がる。90年代に原宿ストリートファッションが花開いた時も、80年代のDCブランドブームがダメになった後だった。ロンドンのストリートスタイルが80年代後半以降に盛り上がったのも、「いい服が売っていないから古着屋で探そう」というマインドからだ。それと反対に、大手のファストファッションが全盛だった頃はストリートファッションがつまらなくなって、それで原宿のストリートスナップ誌「フルーツ(FRUiTS)」も2016年12月に休刊した。

WWD:「ファストファッションはファッションを民主化した」とも当時はよく言われたが?

青木:確かにファストファッションがファッションを一般に普及させた面はあるが、そのイノベーションは中小のデザイナーのクリエーションを破壊することで生み出したものだと思う。アイデアをコピーされる小さい規模のデザイナーにとってはたまったもんじゃない。ファッション業界を一つの大きな会社にたとえれば、クリエーション担当部署にあたるのが真剣にモノを作っている中小のデザイナーたちだ。その部署単体ではなかなかお金にならないが、彼らは新しい芽を生み出して、業界を前に進めている。だから、大きな企業は彼らを破壊するようなことはしないでほしい。コロナショックでも、アパレル産業や国には、そういった中小のデザイナーを守ってほしいと思う。そうじゃないと、ファッションという産業自体が弱くなってしまうと思う。

WWD:「フルーツ」も復刊を予定しており、その資金を作るために「フルーツ」のロゴ入りのドッグタグを現在販売している。

青木:4月から撮影を始めて6月に発行しようと思っていたが、コロナショックに重なってしまった。5月末から撮影しようと思っているので、発行は夏以降になりそうだ。紙の雑誌として発行するが、ウェブ版でも何かしらやっていきたい。復活号では、90年代の東京ストリートをけん引した「トライベンティ」とのコラボ企画も仕掛けたいと思っている。96年の創刊号で「トライベンティ」の特集を組んでいたので、それを今もう一度やってみるのも面白いなと思って。「トライベンティ」は「ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)」や「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」などと共に、二次流通市場で今価格が上がっていると聞く。それだけでなく、国内外の若手ブランドともコラボして、あえてコーディネートが難しいアイテムを作っていきたい。大喜利のお題のように着こなしが難しいアイテムを出すことで、ファッションが盛り上がっていけばと思っている。

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