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ダンスの枠を超えてライフスタイル強化 70周年「チャコット」の新たな成長戦略

 今年で創業70周年を迎えたダンス用品のチャコットは、ブランディングを方針転換する。これまでバレエ、社交ダンスやチアリーディングなどの分野で多岐に渡っていたブランド群を、「チャコット(CHACOTT)」の傘の下に集約。加えて、これまでは競技者向けの商品を主力としてきたが、ダンスになじみのない一般消費者との接点拡大に向け、商品と出店の両面を見直す。馬場昭典会長に今後の成長戦略を聞いた。

WWD:事業を「チャコット」ブランドに集約するが、どのような体制になる?

馬場昭典チャコット会長(以下、馬場): “バレエ”はプロ向けのラインを加え、社交ダンスの“ダンス”、新体操・フィギュアスケート・チアダンスなどの“アートスポーツ”を用意する。加えて一般消費者もターゲットに、競技と日常の垣根を超えるアクティブウエアをそろえる“バランス”と、ビューティ用品の“コスメティクス”の計5つだ。

WWD:事業体制変更の狙いは?

馬場:ダンスで培ってきた専門性をコアバリューに、より開かれたマーケットで企業としての存在感を高めていくためだ。当社はバレエから社交ダンス、チアリーディングからコスメまで幅広く展開しているが、どの事業を切り出しても哲学や思想がしっかり現れるよう、ガバナンスを強化する狙いもある。今は企業として社会にどんな価値を提供できるのかを明確に示せなければ、生き残れない時代だ。私自身、会長に就任(2018年3月)してから、創業当時の文献に当たったり、創業者の土屋誠氏にお会いしたりして、ブランドのルーツを掘り下げた。われわれが社会に広く提案すべき価値は「人生を芯から美しくする」ということだと再確認した。特に“バランス”と“コスメティクス”の2つは、一般消費者との新しい接点になり、今後の伸びしろとして期待している。コスメティクスに関しては秋に大きな宣伝を仕掛ける。

WWD:なぜ専門領域を超えて裾野を広げるのか?

馬場:一つに、競技者の減少。現在、バレエの参加人口はプロ・アマ合わせて約35万人ほどだが、少子化に伴い参加者の先細りは必然だ。一方で、より美しくなるために体を動かしたい、鍛えたいという一般女性が増えている。子どものころにやっていて再開する人、年を重ねてから初めてやってみるという人も驚くほど多い。バレエという文化に、多くの女性は潜在的な憧れがあるはずだ。

WWD:“チャコット バランス”は競合するアクティブウエアブランドとどう差別化する?

馬場:われわれには専門分野で培ってきたノウハウがある。バレリーナの開脚の可動域に耐える素材を徹底的に研究してきたし、デコルテをきれいに見せる首の空きの深さなども知っている。これらは全てアパレルに生かせる。“チャコット バランス”ではバレエらしいチュール素材を日常使いできるデザインに落とし込んだスカートが売れ筋だ。コスメは口コミで広がり、ダンサー以外のユーザーが6割を超える。汗に強く、子どもの肌にも使える安全性などが評価していただけている。他のブランドで売れている商品だからといって、うちでもやろうという発想はない。「ダンス」という太い根っこを強みとすることを、ぶらさずにやっていきたい。

WWD:出店戦略はどうする?

馬場:店舗の立地も、内容も変えていく。当社の直営店は32店舗(19年3月時点)。これまでは百貨店のインショップはスポーツフロアなどが中心だった。路面店も繁華街や駅から離れた立地で、目的意識をもったお客さまが来てくださっていたが、新規客の獲得が見込めるトラフィック型の店舗は少なかった。渋谷・公園通りの本店も、どこか敷居が高い雰囲気で、一般のお客さまの来店が多いわけではなかった。そこで、もっとオープンな店構えの路面店を増やしていく。3月に関西、九州に1店舗ずつオープンし、秋には名古屋の店舗を移設・リニューアルする。これらの店はコスメの試用やウエアの試着など、気軽な体験を重視したセミセルフ型の店舗として、今後の出店のモデルケースにする。玉川高島屋S・Cのショップのように、ベビーカーを引いているような方をターゲットとした地域密着型の店も重要だ。市場に合った形で、“コスメティクス”のラインだけを切り出した小型店舗の出店なども検討していく。

WWD:会社組織のあり方も変わる?

馬場:これまで縦割りだった組織に横串を通し、属人的だった知見を蓄積できるようにしていく。当社はバレエ教室へのセールスがルーツ。今も、各ブランドの営業担当者はダンス教室などに出向いて商品をおすすめしており、個人プレーが基本だ。市場での圧倒的なシェアは営業員1人1人の努力の結果だが、一方で彼らのノウハウが企業に蓄積されてこなかったという負の側面も生んでしまった。今は本社が渋谷、企画が三宿(世田谷区)、営業が青葉台(目黒区)と機能もバラバラで、ゆくゆくは集約したい。また、これまでは異なる事業部同士だった社員を隣同士の席にするなど、現場レベルでも工夫していくことが必要になる。