ファッション

三度目の復帰&価格帯引き下げの「フルラ」CEOが宣言する「価値が価格をはるかに上回る」商品づくり

PROFILE: エラルド・ポレット/フルラS.p.A. 最高経営責任者(CEO)

エラルド・ポレット/フルラS.p.A. 最高経営責任者(CEO)
PROFILE: イタリアのトリノ大学で経済学の学士号を取得後、米国でリテール・ブランド・アライアンスの米国本社で主要業務を統括。「ブルックス ブラザーズ」のグローバル展開にも貢献した。2010年から12年、13年から16年かけてはフルラのCEOとして世界的な拡大とブランドの向上をけん引した。その前後には「ダンヒル」や「フェラガモ」「スチュアート ワイツマン」「ディーゼル」「サントーニ」などで最高経営責任者(CEO)を務めた。24年8月にCEO兼取締役としてカムバックしている PHOTO:DAISUKE TAKEDA

イタリアのバッグブランド「フルラ(FURLA)」が、かつての輝きを取り戻そうとしている。ブランドは10年ほど前からしばらく、アイコンバッグの“メトロポリス”やメンズラインのスタートなどでアフォーダブル・ラグジュアリー市場をけん引したが、その後はラグジュアリーブランドの勢いに押されたり、自らも価格帯をジワジワと上げたりで失速。この間はCEOも相次いて入れ替わり不安定だったが、24年にはエラルド・ポレット(Eraldo Poletto)が三度CEOとしてカムバックして立て直しに尽力している。同時に日本市場でも14〜19年まで社長を務めた倉田浩美フルラジャパン社長がカムバックして組織固め。今年に入ってからはバッグの中心価格帯を引き下げ、メード・イン・イタリーなのにアンダー5万円の商材を拡充し、ラグジュアリーブランドの高騰の中で存在感を増しそうだ。ポレットCEOは、「フルラ」を再びどのようにして輝かせる考えなのか?

WWD:CEOを務めるのは、これで3度目になる。今回の目標は?
エラルド・ポレット=フルラ最高経営責任者(以下、ポレットCEO):「フルラ」に三度加わり、故郷に帰ってきたような気持ちだ。2度にわたり会社を率いてきた経験から、私は「フルラ」の伝統や人々、そして可能性に感銘を受けている。離れている間も、大きな愛情と敬意を持って「フルラ」を見守ってきた。「フルラ」のDNAの強さを感じ続けてきた。と同時に、お客さまとの間に築き上げてきた感情的価値にも改めて気づかされた。我々は最高級ブランドに匹敵する洗練されたデザインを提供しながら、手頃な価格帯を維持している。消費者はステータスだけではなく意味や感情的な繋がりを求める時代に、本物で、創造性に溢れ、価値のある商品が提供できるブランドは、これまで以上に重要になっている。

WWD:近年ラグジュアリーブランドの商品価格は高騰し、日本の一般的な消費者には手の届かないものになっている。一方で「フルラ」は、手の届きやすい価格に再度フォーカスしてきた。
ポレットCEO:ラグジュアリー市場は現在、非常に興味深い岐路に立っている。少数の主要プレーヤーを除き、多くのブランドは、生活費の高騰に起因する消費者のラグジュアリー疲れと、画一化などの課題に直面し、消費者との繋がりを築くのに苦労している。と同時に若い世代は所有よりも体験を重視し、ハイエンドなラグジュアリーの本質的な価値に疑問を抱き始めている。
だから「フルラ」は、非常に有利な立場にある。最高級のラグジュアリーブランドにも匹敵する洗練されたデザインを体現しながらも、数十年にわたる職人技と製造の専門知識のおかげで、商品を求めやすい価格で提供しているからだ。私たちは常にお客さまに価格以上の価値を感じていただけるよう努めている。以前はより手頃だったブランドの中にもラグジュアリー・ブランドとしての地位を築こうとしているところがあるが、「フルラ」はコアに注力し、今後も品質とデザイン、価格のバランスに優れた製品を提供していく。私たちの基本的なコミットメントは変わらない。それは、価値が価格をはるかに上回る商品を作り続けることだ。
と同時にファッションにおける遊び心と色彩への関心は高まっており、エレガンスと現代的な精神のバランスは私たちの強みになっている。消費者が意味と価値の両方を求めている時代に、刺激的で喜びに満ち、手の届きやすい、心地よいラグジュアリーを提供できる。「フルラ」を今まで以上に明るく、新鮮で、親しみやすいブランドにしたい。

WWD:価格帯の再定義と共に、強化する商品や市場も変更する?
ポレットCEO:「フルラ」は今、大きなリニューアルの最中だ。まずは総売上高の約4割を占めるアイコニックなアイテムに注力する。特に新しい“イリデ”を、かつての“メトロポリス”のような真のマスト・ハブ・アイテムにすることを目指している。

市場ではEMEA(ヨーロッパと中東、アフリカ)と日本、そして東南アジアに集中する。中でも創業者一族の2代目にあたるジョヴァンナ・フルラネット(Giovanna Furlanetto)が初めて東京に足を踏み入れた創業当時から、日本は私たちにとって重要な市場。日本は「フルラ」にとって最も強力な単一市場であり、メンズライン発祥の地でもある。日本のお客さまのニーズに耳を傾けてきた結果だ。阪急うめだ本店で開催した“イリデ”のポップアップストアのように、喜びと彩りをもたらす、新しい体験型のアプローチを模索したい。また日本ではYouTuberからアーティストまで、日本の著名または新進気鋭のクリエイターともコラボレーションしている。

特に日本の「フルラ」は、さまざまな年齢やスタイル、そして背景を持つ人々と繋がっている。ルーツに立ち返り、シンプルに、真にユニークな特徴に焦点を絞りながら、ソーシャルメディアを通じたコミュニケーションを強化して若い世代のエンゲージメントも高めたい。主要な商品を軸に、多様性とパーソナライゼーションはさらに強化する。毎シーズン遊び心のあるチャーム、調節可能なストラップ、そして多様なシェイプのバッグを提案することで、特に女性たちがそれぞれのバッグを真に自分らしくカスタマイズできるよう支援する。
ミラノ・ファッション・ウイーク中に開催した“イリデ”のローンチイベント、観光バスを移動式ネイルサロンに改造したイベントなどを積極的に手掛ける。お客さまとユニークでクリエイティブ、そして記憶に残る方法で繋がり、長期的なロイヤルティを築きたい。

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