
サザビーリーグは国産オーガニックスキンケアブランド「ネロリラ ボタニカ(NEROLILA BOTANICA)」をビーバイ・イーから譲受した。今後はサザビーリーグの100%子会社で「アフタヌーンティー・リビング(AFTERNOON TEA LIVING)」を運営するICLがブランド名を「ネロリラ(NEROLILA)」に変更してリブランディング。公式ECを立ち上げ、全国でポップアップを実施するなどして、育成する。なぜサザビーリーグは、国産のオーガニックスキンケアブランドを手掛けるのか?ICLの高下泰幸社長に聞いた。
PROFILE: 高下泰幸/ICL社長

ブランドの骨格を踏襲しつつ、ICLの知見を活用
WWD:「ネロリラ ボタニカ」の譲受を決めた経緯は?
高下泰幸ICL社長(以下、高下):製品のクオリティーが高く、ブランドストーリーもしっかりしているので、「このブランドをもっと成長させたい」という気持ちが強かった。ビーバイ・イーの杉谷惠美代表やブランドを立ち上げた早坂香須子さんとも話してストーリーの素晴らしさに触れ、「こんなに素晴らしいブランドが多くの人に知られていないのはもったいない」と思った。サザビーリーグのマーケティング力や店舗開発・運営力を活用し、一人でも多くの人に届けたい。
WWD:ICLの、どんな強みを活用してブランドを広げていく?
高下:サザビーリーグとしてオーガニックコスメを手掛けるのは初めてだが、物流などのインフラが整っているので、スピード感をもって事業を拡大できる。また、ブランドのストーリーを伝えるのが得意な、サザビーリーグの知見を生かしたい。譲受を機にブランドコンセプトを「肌が深く満ち 心がほどけるひとときを」に刷新し、統一感がなかったパッケージをよりシンプルで、性別を問わず手に取りやすいデザインに統一する。使ったときに「心がほどける」感覚が一番の強みなので、開けると箱がほどけるパッケージに変更。ブランドロゴのOの切れ目も「ほどける」を表現している。また既に「ネロリラ」の愛称で親しまれていたため、ブランド名を「ネロリラ」に変更する。一方、処方は素晴らしいので、変えない。ビーバイ・イーから開発者も引き継ぎ、かつての人気製品などを復刻しながら、製品ラインアップを拡充したい。
なお顧客のターゲット層が異なるので、「アフタヌーンティー・リビング」の店舗で取り扱うことは現状考えていない。一方で、「ロンハーマン(RON HERMAN)」や「エストネーション(ESTNATION)」での展開は視野に入れている。また「アフタヌーンティー・リビング」では雑貨が作れるので、「ネロリラ」で必要となれば限定ポーチやショッパーならワンストップで開発できる。これまでICLは「アフタヌーンティー・リビング」一本足だったが、そこに並ぶ二本目の柱ができた。「ネロリラ」の独自性を維持しつつ、刺激し合う存在として育てていく。
WWD:これまでの「ネロリラ ボタニカ」の販路は?
高下:ビーバイ・イーの直営店シンシア・ガーデンや、伊勢丹新宿本店のビューティアポセカリー、「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」など、最大全国80店舗ほどで販売していたが、譲受のタイミングで販路は見直した。今後もシンシア・ガーデンや伊勢丹新宿本店には卸しつつ、そのほかでの販売は一度停止する。最初は自社ECを中心に販売し、ポップアップを皮切りに直営店の展開を目指している。中長期的には直営店を数十店舗構え、一人でも多くのお客さまと接点を持ちたい。ポップアップ第1弾は9月25日〜10月3
0日にニュウマン高輪で開催する。ブランドとして単独のポップアップは今回が初めてだ。
ターゲットを広げ、直営店の拡大に着手
WWD:「ネロリラ ボタニカ」は9年間で9SKUと、厳選した展開にこだわってきた。
高下:限定品などは投入しつつも、定番品については、世の中になかった自分たちが納得いくものを何年もかけて試作し、「これだ」というものができたら発売する、という方針だった。今後はSKUを徐々に増やし、ポップアップを重ねてブランドとしての存在感を拡大する。エントリー商材となるハンドクリームやボディーケア製品の発売も視野に入れ、開発のスピードを上げていく。
WWD:ブランドのターゲットは?
高下:これまでの顧客層は30代後半〜50代のオーガニックコスメが好きな人やライフスタイルにこだわりを持つ女性、早坂さんのファンらが中心だった。だが純粋にいい製品なので、今後はコスメを使っている人は全員がターゲット。美容やファッションに関心が高いアーリーアダプターや、美容男子にも積極的にアプローチする。
WWD:近年オーガニック・ナチュラルコスメが苦戦しているという話も聞くが、今後の「ネロリラ」の育成方針は?
高下:オーガニックで推していくつもりはない。スキンケア製品として、品質も使用感もいいことを強調していく。処方にこだわり、原料から工場で作っている製品からは、植物本来の香りやエネルギーを感じられ、滝行の後の心まで澄んだような自宅で味わっているような気分になる。朝晩のルーティンだったスキンケアが心ほどける時間に変わり、自分を大切にしていると実感できるーーそんな体験を届けたい。まずは使ってみてもらえたら、そのよさに気づくと思う。
WWD:今後の展望は?
高下:まずはポップアップで知見を集め、直営店の出店を進める。最初は売り上げ目標を重視せず、5年、10年かけてしっかりとブランドを成長させていきたい。明確な数字は決めていないが、競合他社や日本市場を見たときに、数十億円の規模までビューティ事業を拡大することを一つの目標としている。