PROFILE: 松栄友希/SmartHRタレントマネジメントプロダクト本部本部長

人事業務の効率化から、活躍人材の特定・育成まで一気通貫で支援するのがSmartHRだ。松栄友希タレントマネジメントプロダクト本部本部長は、人事評価やスキル管理、配置シミュレーションなど、人を育成することと人を生かすことに関わるタレントマネジメント部門のプロダクトを統括。クライアント企業の課題を把握し、ソリューションを考え、それをプロダクトに落としこむこと、効果についての確認をしている。同社でもサーベイサービスを提供する従業員のエンゲージメントについて、その重要性やサーベイの活用法などを聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」2025年11月3日号から抜粋・加筆しています)
WWD:エンゲージメント向上の必要性の高まりについて、この数年の傾向は?
松栄:まず少子高齢化で“採れない”。さらに近年は転職がしやすい環境になっており、“辞めやすい”。いくら採用して教育をしても人財が定着しなければ、組織として発展や改善がなく、悪循環に陥る。特にファッションやビューティの店舗型ビジネスの場合、上位ポストが埋まりやすくキャリアが描きにくい、育休や復帰可否への不安、ブランドの年齢レンジと自身の加齢によるミスマッチなど離職要因が構造的に多い。
では、どうすれば人は会社を辞めないのか。そのためにエンゲージメントという概念があり、それを高めると、退職者が減り、よりクリエイティブに働いてくれるところに注目が集まっている。
WWD:そもそもエンゲージメントとは?
松栄:エンゲージメントとは、つまり“会社・ブランド・仲間への好意とつながりの意識”だ。「このブランドが好き」「うちの会社が好き」「この仲間と一緒に頑張りたい」――だからもっと良くしたいと思う。単純にその方が主体的な改善や提案が行われ、業務の質が上がる。逆に低いと“言われたことだけやる”受動的な働き方になり、生産性も離職率も悪化する。この数年は、危機感を持ち、エンゲージメントを高めるために手を打つ企業と、“従来の延長で”という企業に、はっきりと分かれる傾向にある。
WWD:従業員のエンゲージメントを測るサーベイツールをSmartHRも提供しているが、利用状況は?エンゲージメントを高めるために有効な施策とは?
松栄:人的資本経営の流れもあり、利用企業は右肩上がりで伸びている。が、得た情報をうまく活用できているかは企業によって大きく異なる。まず、サーベイは“取って終わり”にしないのが大前提だ。得た情報から課題を特定し、それを解消してこそ意味がある。そのためには定期的にサーベイを行い、推移を確認できるようにしなければならない。単に会社平均で見るのではなく、ブランド間やエリア間、部署、年齢層、社歴などでの比較や、若手や重要職、早期離職など止めたい離職者層を重点的に見るなど、分析し、アクションをして初めて意味を持つ。悪いところだけでなく、スコアが良いのはなぜか。気持ちよく働けている要因は何かを特定することも大事。できる人事部は、気になる結果が出てきたら、現場に足を運んで個人と面談をするなど、課題や原因の特定に動き始める。
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