ファッション

「バーニーズ ニューヨーク」、銀座の旗艦店を刷新 社長が明かす“過去の存在”からの脱却戦略 

バーニーズ ジャパンは9月19日、グローバル旗艦店である銀座本店をリニューアルオープンする。リニューアルは2004年の開業以来初めて。17日にはメディア向けに先行公開し、ペニー・ルオ(Penny Luo)社長は「ブランド力復活のモデル店舗にしたい」と意気込みを語った。

バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」は1923年、ニューヨーク・マンハッタンで創業。ラグジュアリーブランドや気鋭デザイナーを扱う世界有数のスペシャリティーストア(専門店)として、ファッションシーンをけん引してきた。しかし競争激化により2019年に経営破綻、清算を経てアメリカ国内の全店舗を閉鎖した。アメリカから撤退後も日本ではラオックス傘下で運営を継続しているが、グローバルでの知名度低下やコロナ禍の影響もあり、過去の勢いは取り戻せずにいたのが現状だ。ルオ社長は「周りに、『バーニーズ ニューヨーク』で買い物するか?と聞くと、『昔はよく買っていた』と皆さん過去形で表現される。近年は上位顧客の売り上げは伸びても、新規顧客になかなかリーチできないのが課題だった。皆さんの中で、過去の存在になってしまったブランドを原点回帰で復活させたい」と話す。

「ワンダーランド戦略」を掲げ、原点回帰

そこでルオ社長が掲げる戦略が、「ワンダーランド戦略」だ。「映画『セックス・アンド・ザ・シティ』の中で主人公のサラ・ジェシカ・パーカーが、恋愛も仕事もうまくいかなくなった時に『セラピーに行くか、バーニーズに行くか』と迷うシーンがある。私たちが戻るべき原点はここだ。バーニーズはこれまで、社会に揉まれたニューヨーカーが癒しや励ましを求めて来店する存在だった。大人が没頭できるワンダーランドを設計し、商品だけでなく来店そのものを目的化させたい」。

そのモデルケースとなるのが、このほどリニューアルした銀座店だ。「妥協しない商品編集力」「ニューヨークを感じさせる唯一無二の世界観」「顧客との深い接点」が、柱になると言う。大幅に改装した1階はニューヨークのダウンタウンをモチーフにした肝入りエリアだ。例えば、エントランス正面は、「ユニオンスクエア」と名付けたポップアップスペースを新設。「ニューヨークのユニオンスクエアは、ミッドタウンとダウンタウンをつなぐ文化の交流地点。そんな熱気を再現したい」と説明する。第1弾は、山縣良和デザイナーが主宰するファッション表現の実験と学びの場「ここのがっこう」をフィーチャー。3週間かけて、「ここのがっこう」を卒業した日本のデザイナーらの商品を展示・販売する。オープン時は、「ケイスケヨシダ(KEISUKEYOSHIDA)」「シュガーヒル(SUGARHILL)」「ワタル トミナガ(WATARU TOMINAGA)」が参加。2週目には、「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ」を受賞したばかりの「ソウシオオツキ(SOSHIOTSUKI)」も並ぶ。

エントランス横は、「チェルシーのタウンハウスに住むクリエイターが選ぶギフト」をテーマにしたギフトコーナー。ファッションアイテムのほか、ラグやグラス、プレートなどのホームアクセサリー、クッキーやパスタといった食品まで、幅広いジャンルのアイテムをそろえる。さらに、バーカウンターも新設し、オリジナルのスイーツやドリンクも提供する。「NY ソーホーに暮らす粋な大人のコレクションルーム」をテーマに掲げたスペースは、京都で漆塗りと現代文化を交差させたユニークなモノ作りに挑戦する「堤淺吉漆店」や、チャールズ皇太子も愛用する老舗ブランド「マリオ・タラリコ」など、ハイセンスな文化が混ざり合うエリアに。

また新たな試みとして、コンシェルジュカウンターを設置。ここでは、予算に応じたギフト選びのアドバイスやパーソナルスタイリングサービス、また近隣の観光案内など、従来の販売接客の枠にとらわれないサービスで顧客との接点を深めていく。ほかにも、調香師によるオリジナルのフレグランス調香体験や、ポップコーンスタンド、週末には占い師による「お買い物占い」など、ユーモアのあるさまざまなコンテンツを仕掛け、エンターテインメント性を強化した。

従来通り地下1階はメンズフロア、地上2階はウィメンズフロアで構成。ウィメンズフロアは、従来ブランドごとに陳列していた商品を、クロスオーバーさせ「バーニーズ」ならではのスタイリング提案を強化する。新設した「シャネル(CHANEL)」や「エルメス(HERMES)」のビンテージアイテムを扱うコーナーも見所だ。なお、銀座以外の六本木、横浜、神戸、福岡の4店舗は随時リニューアルを行う計画だ。

ルオ社長は「今回のリニューアルは、実店舗の立て直しにすぎない」と言う。目指すは、「『バーニーズ ニューヨーク』のブランド力を生かした、ブランドビジネスだ」と明かす。すでにメキシコで展開しているホテル&レジデンスなどのホスピタリティ事業、パーソナルスタイリングなどのサービス事業、同社の人材を外部に派遣するタレント事業、オリジナル商品のプライベートレーベル事業、会員コミュニティーに向けたメンバーシップ事業などを構想中だという。来月には新規事業として、「プレラブドバイバーニーズ」と名付けたリセールサービスを始動する予定。ルオ社長は、「アジアからグローバルに向けて、ブランド価値をあらためて伝えていきたい」と語った。

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