
アイウエアブランド「ジンズ(JINS)」の“チークカラーレンズ”が注目を集めている。レンズ下部に色味を加えることで、目下にチーク(頬紅)を塗布したような視覚効果を生むアイテムだ。好きなフレームにプラス3300円で変更でき、カラーはピンク、ピーチピンク、ボルドーの3色。2025年7月の販売枚数は前年同月比で約6倍に増加し、特に20代女性から支持を集めている。マーケティング部PR担当の本田絢乃さんに話を聞いた。
開発のきっかけは、スマホやパソコンによる目の負担を軽減する“ブルーライトカットメガネ”だった。同社を代表するアイテムとして人気だったものの、ある課題を抱えていた。パソコンやスマートフォンのディスプレーの青い光を吸収&反射するため、レンズがやや黄色みを帯びてしまうのだ。「特に女性のお客さまは顔やメイクの映りを気にします。『女性向けのレンズは作れないか』という社内の声が開発を後押しし、“チークカラーレンズ”の企画が動き出したそうです」という。
開発過程では、度なしレンズに問題はなかったものの、度付きレンズならではの課題が浮上した。「度数が高くなるほどレンズの厚みが増し、色味が変わってしまうため、どの厚みでもなじむように濃度の平均値を割り出すのに時間を要したと聞きます」と本田さん。社内の十数人が1〜2週間試着し、視界の快適さやマスク着用時の見え方など細かな使用感まで検証を重ね、最適な色味にたどり着いたという。
恐るべしSNSの拡散力 前年同期間比は約5倍に
“チークカラーレンズ”は21年10月に発売したが、爆発的なヒットになったのは昨年後半からだ。SNSで「中顔面短縮効果がある」「血色感が増す」「小顔に見える」といった投稿が相次ぎ、人気が急上昇した。24年10月〜25年7月までの販売数量は、前年同期間比約5倍に達した。
本田さんは「昨年10月頃から、定番モデル“ジンズ コンビネーション チタニウム(JINS Combination Titanium)”(1万4900円)が『中顔面短縮効果がある』とXで話題になりました。それに“チークカラーレンズ”を組み合わせると“盛れる”と、最強コンビとして取り上げられる機会が増えたのです。弊社のプロモーション強化も重なり、装着率が一気に伸びました」と振り返る。ビューティ業界で人気のメイクテク“中顔面短縮メイク”も追い風になっているようだ。
3色の中でも人気色は「ピンク」だという。柔らかな色味で可愛らしい印象を演出でき、「特に若年層から支持されています。ナチュラルさよりも“盛れる”という点が選ばれる理由だと考えられます」と本田さんは話す。実際、“チークカラーレンズ”を装着したメガネをかけるだけで「時短メイクになる」という声もある。
メイクとメガネの境界が曖昧になる新潮流
これまでのメガネは、視力矯正やUV対策といった機能性が中心だった。しかし、“チークカラーレンズ”はその枠組みを軽やかに飛び越える。頬に血色感を与えたり、顔の余白を埋める錯覚効果があったり。「顔の印象を変える」という発想は、メガネを“かける化粧品”に変えたとも言えるだろう。
“チークカラーレンズ”は、メガネとメイクの境界線を曖昧にし、新たな市場を切り開く可能性を秘めている。将来的には、パーソナルカラー診断と連動したレンズや、化粧品ブランドとコラボレーションするなど、ビューティ業界とのさらなる拡張も期待できる。
「ジンズ」ならではのアプローチで、“視力を補うメガネ”から、“メイクもできるメガネ”へ。“チークカラーレンズ”の今後の展開が楽しみだ。