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特集 繊維商社2025 第4回 / 全10回

繊維商社の働き方改革、男女で議論しなきゃ始まらない! 「子育てと仕事の両立、どうしてる?」

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繊維商社の働き方改革、男女で議論しなきゃ始まらない! 「子育てと仕事の両立、どうしてる?」

繊維商社は近年、女性の総合職採用を積極的に行っている。ただ、その中で課題になっているのが、出産や育児というライフステージの変化に伴う退職者の多さだ。出張の多さや取引先からの突発的な呼び出しなど、ハードワークで知られる繊維商社の業務が、そうした要因になっている。そのため、「働き方をどう変えるか」は重要な経営課題である。既婚・未婚問わず20〜30代の男女6人に集まってもらい、「子育てと仕事の両立」をテーマに体験談や悩みを語ってもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年6月30日号からの抜粋で、無料会員登録で最後まで読めます。会員でない方は下の「0円」のボタンを押してください)

パートナーとの話し合い必須
負担配分は家庭それぞれ

WWD:まずはお子さんのいる方々に聞きたい。第一子誕生後、働き方は変わった?

岡本薫・スタイレム瀧定大阪 経営企画本部 経営企画室(以下、岡本・スタイレム):私には5歳の女児と1歳の男児がいます。長女が生まれて職場復帰する際、社内結婚した夫は営業職で出張が多いこともあり、私の方が時短勤務にしようと自分で決めました。仕事だけでなく子育ても頑張りたかったから。仕事も子育ても、すぐに意思決定をしないとテンポが乱れてしまうので、時短勤務のおかげである意味、メリハリをつけられるようになりましたね。

真鍋滉昌・瀧定名古屋 婦人服地部82課主任(以下、真鍋・瀧定名古屋):僕は1人目が生まれた際、1カ月の 育休 ❶ を取得しました。ただ、今どきのイクメンというわけではありません。瀧定名古屋は本社が愛知県・名古屋にあるんですが、地元を離れて家族と一緒に東京に駐在し妻もバリバリ働いていました。出産直後は子どもの夜泣きがひどく、2人とも寝られず、僕は仕事から帰宅すると疲労困ぱいの妻がいる状態が続いていました。2人とも実家が遠くてお互いの両親に頼るのも難しかった。やむを得ず人事課に相談し、なんとか育休を取得した形です。

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❶「育休」

育児休業の略。原則、1歳未満の子どもを養育するために定められた法的な休業制度のことで、「育児・介護休業法」に位置づけられている。女性は産休終了の翌日から、男性は子どもの誕生の翌日から、1歳の誕生日前日まで取得可能。2022年に「産後パパ育休」が新設され、育休とは別に、出生後8週間以内であれば、最大4週間を2回まで分割して追加取得できるようになった

米村拓也・タキヒヨー ガーメントグループ ベビーセクション グッズチーム(以下、米村・タキヒヨー):僕の子どもは現在8歳。今はタキヒヨーにも在宅勤務やフレックスタイム制の選択肢がありますが、8年前は制度が整う前だったり、(本社のある愛知県から)東京や大阪の取引先との商談のために出張が続いたりで……。子どものことを妻に任せきりにせざるを得ず、後悔しています。とはいえ、今は今でチームを率いる立場にあり、「いざという時にすぐに顧客や部下の要請に対応できるようにしたい」という思いから、在宅勤務の妻に引き続き育児を頼ってしまっている状況なのですが。その分、妻に「友達と飲みに行きたい」と言われれば、週末に息抜きしてもらうようにしています。

WWD:子どもがいない立場からすると、今から何か不安に感じていることはある?

西川七海・豊島 十七部三課(以下、西川・豊島):国内外の出張が1〜2カ月に1度の頻度であるので、出産後も同じように働くのは難しいのでは?と思っています。実際、営業職の女性が 産休 ❷ 明けで仕事に復帰する事例は現時点でなく、私も今は妊娠についてイメージがわかないなと。もしも子どもが生まれた場合、夫が在宅勤務やテレワーク可能な職種なので、そこに頼らざるを得なくなるはず。ただ、彼も転職したいと言っていて、不確定要素が多いです。私だけが働き方を変えることになるのか、パートナーと一緒に変えることになるのか、考えていく必要があります。

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❷「産休」

産前休業と産後休業を併せた休業のこと。パート・アルバイトを含む出産する全ての女性が取得可能で、原則、出産予定日の6週間前から出産翌日からの8週間が休業期間となる。ただし、産前休業は任意のため、妊婦が希望すれば予定日前日まで働くことができる

田中侑里・ヤギ アパレル第一本部 第三事業部 432課(以下、田中侑・ヤギ):私はあまり働き方に関する悩みはないですね。ただ、一般職として働いているものの、属人的な業務内容が少なくありません。先輩が産休・育休に入るタイミングには引き継ぎに時間がかかる様子も見てきました。

田中裕稀・ヤギ アパレル第二本部 第三事業部 427課 販売係長(以下、田中裕・ヤギ):営業職もとても属人的。僕がもしも育休で1年休んだとしたら、今抱えているお客さまのケアができなくなって、その分課の売り上げが減ってしまう。だから自分の成績を維持したい社員からすると、長期休業は現実的でない気がします。

WWD:やはり実際、両立するにはかなり頭を使う必要がある?

真鍋・瀧定名古屋:実は、僕は育休中でも人事課に相談しながら制度上可能な範囲で仕事して、数字を作っていました。育休を取得することを伝えずに、変わらずやり取りしていたお客さまもいます。今振り返ると、育児の疲れもたまってミスを連発していましたが、「やるしかない」と自分を鼓舞して、全方位に迷惑をかけないように全力を尽くしていました。おかげで10キロくらいダイエットできてよかったです(笑)。ただ、これは僕の場合の話。営業部門の先輩女性の中には、産休・育休明けを皮切りに、活躍の形を切り替えた人もいる。自ら直接営業をかけることはなくなったが、代わりに後輩の営業をサポートする“縁の下の力持ち”的な存在となっている。

米村・タキヒヨー:人によるのではないでしょうか。うちも今は定時で帰宅して子どもを保育園に迎えに行く男性もいて、家庭内でうまく育児分担を図る事例が増えている体感があります。早く帰宅することへの抵抗感も社内にないですし。時短勤務・在宅勤務はしやすいですね。

西川・豊島:確かに、私の所属する課の男性課長も週2で在宅勤務しています。課内には女性社員が何人かいるため、いざという場合に女性総合職のためにモデルケースを作りたいようです。デザイナーや制作管理の人と比較すると、営業職は出来上がった製品を細かくチェックするために出社する必要性が低い。納期や全体スケジュールの管理、チームメンバーとの打ち合わせができてさえ入れば、在宅勤務が意外にしやすいポジションではあります。

WWD:子どもの授業参観や運動会といったイベントへの参加は諦めなきゃならない?

一同:そんなことはない。

米村・タキヒヨー:妻に頼りきりの僕でも、そういう時は行事に参加できています。

田中侑・ヤギ:ヤギには子どもの看護休暇制度があるので、入学式や卒業式のときや、子どもが急に体調を崩したときに休みを取る社員も多い。

田中裕・ヤギ:ちょうど昨日、先輩が子どもの運動会で会社を休んでいました!

岡本・スタイレム:まさに今日、夫が保育参観に行っています(笑)。会社の人たちも「行ってあげて」「楽しみだね」と快く後押ししてくれますよ。

真鍋・瀧定名古屋:瀧定名古屋も、子どものイベントごとではみんな休んでいます。1〜2日の有休取得はわけないです。課題は1カ月以上の長期休業だと思います。

営業職は個人戦
顧客情報のチーム共有が課題

田中裕・ヤギ:営業職は個人商店のようなもので、それぞれが独自の顧客を抱えていますからね。お客さまにとっても窓口は一つに絞ってあった方がやりやすいでしょうし。その属人的な性質を変えられたらいいのですが……。例えば、チームメンバー全員が各自のお客さまを知っている状態がかなえられれば、休業で欠員が発生したとしても業務が滞りなく回る気がする。

西川・豊島:全員が把握せずとも、2人体制にするところから始めてもいいのかもしれません。ただ、一人が担当している案件が多いので、それを2人で共有するとなると、仕事量が2倍になり、逆にストレスが増える可能性が高いです。

真鍋・瀧定名古屋:その体制を作るのって難しいですよね。僕の仕事は僕だけが担当しているものなので。先ほども少し話しましたが、僕は育休期間も顧客対応をしていて、お客さまからすれば僕は変わらず働いていた印象だったと思います。いつもよりメールの返信が遅いとか、「今日は有休取得しています」という自動返信が届くとか、その程度。でもこれでなんとかなるのは1カ月が限度なんですよね。ちょうど先日、第二子が生まれたのですが、2カ月以上の休暇が必要になった場合にどうすべきかについては、まだ答えが出せていません。

田中侑・ヤギ:一般職でもそれは同じです。取引先によって、納品の仕方が違うから、業務の処理の方法も変わってくる。システム化やマニュアル化するにしても、統一すべきポイントが膨大なので、業界的にかなり時間がかかると思います。

米村・タキヒヨー:その点で言うと、タキヒヨーでは“仕事の標準化”に取り組んでいる真っ最中です。まだマニュアル化するには至っていませんが、「みんなが何をしているのか?」を共有するために、言語化や“みえる化”を進めています。誰かが抜けたとしても、代わりの人が機能する仕組みを作れれば売り上げも下がらない。

岡本・スタイレム:私が働く経営企画室も、普段からなるべくメンバーと情報共有するようにしています。事業計画立案などのトップサポートから計数管理、コーポレートブランディング・広報業務まで業務の幅が広く、全員が違う領域を担当している中でも、少しずつ重なる部分もあり、最低限知っておかなきゃならない情報が存在しています。

WWD:コロナ禍の時は、出社がままならず、仕事が進まない場面もあったのでは?その対処法は今も生かせないのか?

米村・タキヒヨー:お客さまの要望ありきではありますが、オンラインの商談が選択肢として上がるようになりましたね。当時は「訪問禁止」を掲げている取引先もありましたから。

真鍋・瀧定名古屋:ZoomやTeamsが浸透しましたよね。先輩の女性課長代理は、その変化をうまく使って、商材をオンラインで見せるなどしながら成果をあげています。ただ、僕は「コロナ禍はチャンス」と捉えてしまい、他社が営業に出られない分、顧客回りをしており、今もアナログ派なままです。一般的にいいことだったかと聞かれればそうではないのかもしれないですが……。

田中裕・ヤギ:僕も同じ考えでした。家が会社から近いこともあり、可能な限り出社して、毎日お客さまを訪問して。コロナがひどいときは、週1出社が原則になり、代わりに出社できる人が商材チェックのために会社に赴いていました。僕はその“代わりに出社できる人”であり、例外でしたね。

WWD:なるほど、あまり参考にならない(笑)。今は国や地方自治体も子育て支援制度を拡充しており、「ファミリー・サポート・センター事業(通称:ファミサポ)」の設立や ベビーシッタークーポン ❹ の配布が記憶に新しい。活用したことは?

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❸「ファミサポ」

1994年に厚生労働省の支援を受けスタート。子育て中の労働者や主婦を会員にして、児童預かりの援助を行いたい人と受けたい人をマッチングさせるサービス。2024年時点で、預ける側である依頼会員は60万人、預かる側の提供会員は14万人、両会員は3万人存在する。保育施設や児童館などへの送迎、学校の放課後や冠婚葬祭、買い物時の預かりなどを行う。利用料金は地域差があるが、1時間1000円ほどが相場

❹「ベビーシッタークーポン」

こども家庭庁が配布するベビーシッター利用割引券のこと。「企業主導型内閣府ベビーシッター利用支援事業」の承認事業主である企業が従業員に配布すると、従業員は乳幼児〜小学校3年生の児童のベビーシッター利用時に割引を受けられる。1枚2200円の割引券を、1家庭で1カ月最大24枚まで使用可能

一同:あまり詳しく知らないです。

岡本・スタイレム:私は自治体が提供する産後ケア事業を見つけて、リラクゼーションチケットを使っていました。ただ、周囲で「ファミサポ」やベビーシッターを利用した事例は聞いたことがなくて。

真鍋・瀧定名古屋:第一子誕生後は誰かの手を借りないとどうにもならない状況だったので、関西に住む両親にホテル代を支払って助けに来てもらったこともあります。あくまでも“時々”の話なので、僕は週1で区の無償ベビーシッター制度を依頼していました。

男性にも柔軟な制度活用の権利を
営業職ならではの要望も

WWD:まずは使える制度を自分で調べるところから始めたり、「こんな制度があるよ」と会社の人事担当がアナウンスしてくれたりすると良いかもしれない。皆さんの会社では少しずつ育児支援体制が整い始めているようだが、さらにどういう制度があればいいと思う?

岡本・スタイレム:時短勤務と時差出勤を併用できるようになってほしいです。時々、夫は時差出勤制度を使って子どもを保育園に送ってくれているのですが、時短勤務の人もそれができるようになるとパートナー間でさらに育児の配分が相談しやすい人が増えると思います。

田中侑・ヤギ:知人の夫がIT業界で働いていて、フレックスタイム制度とリモートワークのどちらも使えるようで。一度退勤の打刻をして子どもを保育園に迎えに行った後、夕方からまた商談に行って仕事をするというスタイルも珍しくない。そういうフレキシブルさがあれば、もっと効率的に働けるようになるはず。

真鍋・瀧定名古屋:僕は「パパ育休小分け制度」を強く希望します。営業職はまとまった期間で休業申請するのが現実的に難しいからこそ、「3日休んで5日出勤する」「2日休んで3日働く」というように、さらに細かく分割して自由に休みを取れるようにしてほしい。それで合計3カ月休んだことになるのであれば、繊維商社業界でももっと育休を活用する人が増えるかと。取引先から「今日来て」「明日来て」と連絡を受けることも多い仕事ですし、僕も今ですら「どこにいる?」とメールが来ています(笑)。

西川・豊島:男性側への制度整備と育児参加への理解がさらに進むといいですよね。実際、男性の先輩社員が里帰り出産する奥さんの移動をサポートするためだけに有休を取得していて。まだ生まれる前だったので、奥さんの実家で仕事している状況でもあったんです。在宅勤務として認められればいいのにと感じました。私は女性で、産む立場にあるからこそ、約1カ月前から産休が取得できますが、男性はそうではない。子育てしたい男性にとっては、ある意味女性だけが優遇されている環境になっています。同じ総合職であれば、もっと対等に制度を活用できる環境にしていきたいです。

米村・タキヒヨー:男性も育休を取りやすくなれば、女性にも恩恵がいく。仕事をしたい女性も、これまでと変わらない職域で活躍することができると改めて実感し、ハッとしました。

田中裕・ヤギ:そもそも男性が長期間の育休を取るという話をあまり聞かないことが問題ではないでしょうか。僕の友人にもおそらくいないですし。僕は未婚で、子どももいないけど、自分のような立場の人こそもっと興味を持って、「制度を整えていこう」と発信していくべきだと思いました。今日の座談会では学びがたくさんありました!

PHOTO:MAYUMI HOSOKURA PLACE:GARDE

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