
出店する側のファッション企業にとってアウトレットモールはどのような存在で、ビジネスの実情はどのようなものなのか。有力企業3社の店舗開発担当者に匿名を条件にざっくばらんに語り合ってもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月19日号からの抜粋です)
施設の評価、専用品を作るワケ、今後の展望
WWD:テナントから見て最も評価するアウトレットモールはどこでしょう?
熊崎学(以下、熊崎):集客力や売り上げで三菱地所・サイモンの御殿場プレミアム・アウトレット(PO、静岡県)が抜けた存在です。当社でも御殿場POはアウトレットの一番店で、売上高は圧倒的です。全国のプロパー店を含めてもかなりの上位に入ります。
2000年に開業して以降、増床を重ねるごとに事業規模を拡大してきた。ラグジュアリーブランドからカジュアル、スポーツブランドまで人気のブランドがそろい、風光明媚な富士山の裾野のロケーションも相まって人気が高い
猪爪尚也(以下、猪爪):週末に小旅行がてらショッピングに行こうかとなれば、箱根や富士山もあって魅力的です。
鹿山耕一郎(以下、鹿山):当社は御殿場POで1店舗だけ営業しています。他のブランド・業態でも出店したいけど、競争率が激しくてなかなか実現できません。
猪爪:三井不動産の三井アウトレットパーク(MOP)木更津も成長著しい。都心から東京湾のアクアラインを渡って最短で60分前後。御殿場POより近いね。
鹿山:MOP木更津は2012年開業の1期の後、14年の2期、18年の3期と段階的に増床し、ファッション感度の高いお客さまがたくさんリピートするようになりましたね。6月23日には4期の増床オープンを控えているので楽しみです。
猪爪:西武不動産プロパティマネジメントの軽井沢・プリンスショッピングプラザ(軽井沢PSP、長野県)は1995年開業で、現在営業するアウトレットで最も老舗です。こちらも30年間で7回も増床して、ラグジュアリーを含めたブランドを充実させ、認知度を上げてきた。4月に開店したベイクルーズの新しいアウトレット業態など、話題づくりも巧みです。
熊崎:東海エリアではMOPジャズドリーム長島(三重県)も売れる施設です。東名阪自動車道や伊勢湾岸自動車道の便が良い。遊園地の「ナガシマスパーランド」、季節の花々が楽しめる「なばなの里」などのアミューズメント施設、温泉やホテルも近接しているため、ファミリー層がたくさん訪れます。東海3県(愛知、岐阜、三重)では抜きん出た存在ですね。でも同じ三井のMOP岡崎(愛知県)が今年秋に開業するので、既存のMOPジャズドリーム長島や土岐PO(岐阜県)は影響があるかもしれない。
WWD:イオンモールのジアウトレットは?
熊崎:18年に1号店のジアウトレット広島が開業した際、飲食空間の充実に衝撃を受けたし、おおいに期待しました。でも現時点では売り上げ的にはあまり芳しくない。北九州、広島を含めてファッションはあまり強くない印象です。
鹿山:イオンモールはイオンレイクタウン(埼玉県)でもアウトレット棟を営業しており、当社も出店しています。アウトレット棟というよりもプロパーのmori棟とkaze棟と合わせて、広大なイオンレイクタンでの買い回りがうまくいっています。
WWD:2大勢力である三菱地所・サイモンと三井不動産の違いはなんですか?
猪爪:三井はMOP幕張(千葉県)、MOPマリンピア神戸(兵庫県)、MOP横浜ベイサド(神奈川県)といったベッドタウンの駅近施設がけっこうあります。23年開業のMOP門真(大阪府)に至っては、ららぽーと門真との併設でした。一方、三菱は自動車を前提にして都心から遠く離れた高速道路のインターチェンジ近くに施設を構えます。三井はアウトレットとプロパーの境目をなくし、近隣住民の日常使いまで促す。三菱は超広域商圏を狙った米国スタイルを強く打ち出す。
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