PROFILE: 佐野川靖/三井不動産 商業施設・スポーツ・エンターテイメント本部 本部長補佐

三井不動産の佐野川靖氏は、日本でアウトレットモールを発展させた立役者である。アウトレットモールがまだ知られてない1990年代末から四半世紀以上にわたって事業に関わり、新しい消費文化を浸透させた。自身の転機になったという三井アウトレットパーク(MOP)ジャズドリーム長島など、その歩みを振り返ってもらった。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月19日号からの抜粋です)
「このままなら長島はつぶれる」
2002年、開業したばかりのジャズドリーム長島(三重県桑名市、現MOPジャズドリーム長島)の担当として名古屋支社に勤務していた佐野川氏は真っ青になった。チェルシージャパン(現三菱地所・サイモン)のプレミアム・アウトレット(PO)が岐阜県土岐市に05年に進出するという情報をえたのだ。当時のジャズドリーム長島は物販、飲食を合わせて80店舗前後で、売上高120億円の中型モール。一方、00年開業の御殿場を大成功させたPOは勢いに乗り、次々に新規出店を打ち出していた。名古屋商圏をおびやかす脅威だった。
佐野川氏は本部に増床企画書を答申した。同社は当時、南大沢や幕張など準郊外で50〜80店舗くらいのアウトレットモールが主体だった。だがその手法では、段階的に増床を重ねて200〜300店舗規模に発展させるPOには勝てない。POは御殿場に代表されるような観光地にラグジュアリーブランドから値頃なカジュアルまでフルラインでそろえる手法に長けており、客はそちらに流れてしまう。さいわいジャズドリーム長島は観光資源に恵まれた立地で、増床は理にかなっているはずだ。
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