三井不動産は台湾で5つの大型ショッピングセンターを運営する。その皮切りになったのが、2016年に開業した三井アウトレットパーク(MOP)台湾林口である。自動車で台北市中心部から約30分、桃園国際空港から約20分、MRT「林口」駅からも徒歩5分という利便性のいい立地だ。商圏人口は5km圏内に21万人、自動車で30分圏内に約670万人、60分圏内に約1020万人。林口エリアの人口は、同施設の進出が検討され始めた12年からこれまでに1.5倍に増えた。住宅の価格も大幅に上昇している。(この記事は「WWDJAPAN」2025年5月19日号からの抜粋です)
日本式アウトレットモールの手法を
アジアに移植
24年12月期の売上高は前期比11%増の約88億台湾ドル(約422億円)だった。昨年11月に増床しており、従来の1.5倍の約300店舗になった。店舗面積は4万5000㎡だったのが、7万2000㎡に拡大した。約25%が日系のテナントとなる。
増床のポイントはアウトレット店舗だけでなく、プロパー店舗を数多く入れたことだ。新設されたⅡ館は1階と3階のプロパー店舗中心のフロアが、2階のアウトレット店舗中心のフロアを挟み込む構成となる。これは23年に大阪で開業したMOP門真と同じ手法である(門真の場合、プロパー店舗はららぽーと門真の屋号で運営)。広域から人を集めるアウトレットモールとしての機能に加えて、増加する近隣住民の普段使いのニーズに応える。「16年の開業後、周辺のマンション開発が進み、徒歩圏のお客さまの利用が30%を超えている」(三井不動産の台湾法人の村原良祐氏)からだ。
実は近隣には台湾最大のアウトレットモール「グロリア・アウトレット(GLORIA OUTLETS)」が15年から営業する。こちらはラグジュアリーブランドなど高額品に強みを持っており、三井としては差別化が課題だった。普段使いできる「ユニクロ(UNIQLO)」「無印良品」「ダイソー(DAISO)」「スタンダードプロダクツ(STANDARD PRODUCTS)」「アカチャンホンポ」「ニトリ(NITORI)」「ニコアンド(NIKO AND...)」といった日本の有力専門店で来店頻度を高める作戦に出た。併設型のMOP門真やその他のベッドタウン立地のMOPで培ってきたノウハウを台湾に移植した格好だ。
25年12月期は124億台湾ドル(約595億円)を計画する。日本のMOPやららぽーとと並べても上位にランクする売り上げ規模になる。