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米国がEUにも報復関税を発動 ラグジュアリーブランド一時騒然

 米通商代表部(USTR)は10月2日、欧州連合(European Union以下、EU)に対する報復措置として年間75億ドル(約8000億円)相当の輸入品に追加関税をかけることを発表した。民間航空機に10%、ワインやチーズなどの農業製品に25%の関税が上乗せされる。なお、当初発表された対象品目の暫定リストに含まれていた皮革製品や衣類は最終的なリストから外されたため、欧州ラグジュアリーブランドの多くは難を逃れたが、英国製のセーターやスーツ、リネン類などは25%の追加関税の対象となっており、明暗が分かれた格好だ。

 米国は欧航空機メーカーのエアバス(AIRBUS)に対するEUの補助金が米航空機メーカーのボーイングとの公正な競争を阻んでいるとして世界貿易機構(WORLD TRADE ORGANIZATION以下、WTO)に提訴し、18年5月にその不当性を認める判決が出された。判決後に不当性が是正されなかった場合は訴えた側が対抗措置を取ることができるというWTOのルールに基づいて、米国はEUに対する報復関税を認めるようWTOに求めていた。今回、WTOがそれを承認したため、米国は18日にも追加関税を発動するという。米国側はおよそ110億ドル(約1兆1770億円)相当の追加関税を求めていたが、WTOはその8割程度を承認するにとどめた。

 航空機に端を発した米欧の貿易戦争だが、報復関税の暫定リストにはハンドバッグやスーツなども含まれていたため、当初は多くの欧州ラグジュアリーブランドが影響を受けると見られていた。中でも、ファッションと酒類の両方を扱っているLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)は大きな影響を受けると予想されたため、発表当日の株価は前日比3.3%安の345ユーロ(約4万700円)となった。ほかにも、「グッチ(GUCCI)」や「バレンシアガ(BALENCIAGA)」を擁するケリング(KERING)が同3.8%安の436.6ユーロ(約5万1500円)、「ヴェルサーチェ(VERSACE)」を擁するカプリ ホールディングス(CAPRI HOLDINGS)は同4.0%安の30ドル(約3200円)、サルヴァトーレ フェラガモ(SALVATORE FERRAGAMO)は同3.0%安の16.36ユーロ(約1930円)と軒並み株価を下げたが、いずれも正式な品目リストが発表された翌日には値を戻した。

 欧州委員会(European Commission)のセシリア・マルムストローム(Cecilia Malmstrom)貿易担当委員は、「米国がWTOに承認された対抗措置をEUに課するのであれば、EUも同様の措置を取らざるを得なくなる」と警告した。

 今回の追加関税は、ブレグジット(英国のEU離脱問題)に揺れる英国産業界にとって最悪のタイミングだと言えるだろう。英国際貿易省は、「追加関税は英国、EU、そして米国のいずれにとっても得策ではないことは明らかだ。エアバスとボーイングに関する紛争の解決に協力するべく、米国やEUと緊密に連携していく」と表明した。

 英国ファッションおよびテキスタイル連盟(UK Fashion and Textile Association)のアダム・マンセル(Adam Mansell)最高経営責任者(CEO)は、「ブレグジットを恐れて業界の不安定感が増している中で、EU以外の主要市場でこのような追加関税が課せられるのは壊滅的だ。雇用や投資にも影響が出るだろう」と話した。

 英国最大のカシミア製品メーカー「ジョンストンズ オブ エルガン(JOHNSTONS OF ELGIN)」のサイモン・コットン(Simon Cotton)CEOは、「追加関税は、当社をはじめとする英国のニットウエア業界全体に打撃を与える。米国は欧州と日本に続く3番目に大きな市場であり、米国の消費者は質の高い英国製のニットを愛してくれている。英国のメーカーと米国の消費者の双方のために、関係当事者が協力し合って今回の措置を早期に解決することを願っている」と語った。

 一方で、英国最大のラグジュアリーブランドである「バーバリー(BURBERRY)」は、「トレンチコートやスコットランドで生産しているカシミアのスカーフが対象外だったので追加関税の影響はあまりないが、今後も展開を注視していく」とコメントを発表した。

 米中貿易摩擦が激化する中、米国のアパレル業界や小売店はすでに大きな痛手をこうむっている。中国製のハンドバッグには現在25%の関税がかけられており、10月半ばにはこれが30%に引き上げられる予定だ。中国に加えて欧州との対立が続けば、米国で消費意欲が落ち込み、世界経済に影響する恐れがある。