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キーマンに聞く「リーバイス」 × グーグルのスマートジャケット製作秘話

 リーバイ・ストラウス ジャパンは、グーグル(GOOGLE)と協業して開発したスマートジャケットの第2弾“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”を10月5日に発売する。価格は2万7500円で、「リーバス(LEVI’S)」ストア全店とオフィシャルオンラインストア、ビームスの一部店舗で販売する。2017年の第1弾はアメリカ国内のみの展開だったため、日本での流通は初めて。同アイテムは「リーバイス」のトラッカージャケットの左袖口にグーグルが開発した導電性の繊維を組み込み、そこに内包したジャカードタグによりトラッカージャケットとスマートフォンをペアリングするもので、4つの簡単な動作で道案内や電話の応答、音楽の再生などをコントロールすることができる。同プロジェクトを先導するポール・ディリンジャー(Paul Dellinger)リーバイ・ストラウス グローバル・プロダクト・イノベーション担当バイス・プレジデントに話を聞いた。

WWD:グーグルと協業した“プロジェクトジャカード”のきっかけについて聞きたい。

ポール・ディリンジャー=リーバイ・ストラウス グローバル・プロダクト・イノベーション担当バイス・プレジデント(以下、ディリンジャー):現代人はスマートフォンと離れることはできない。たとえ気の置けない友人たちとのディナーの際でも、皆がスマホとにらめっこしている。つまり目の前の相手そっちのけで、どこかの誰かとコミュニケーションしていることになる。とてもクレージーだ。しかし、われわれの作ったスマートジャケットがあれば、上司やパートナーなど特別な相手からの着信のみを文字通りスマートに知ることができる。健全なコミュニケーションのための一つの答え、それが“プロジェクトジャカード”による“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”だ。

WWD:つまり行動科学が着想源であると?

ディリンジャー:その通りだ。僕はモノ作りの前に、社会の動きを見極めることを忘れない。

WWD:第1弾の販売経路、さらには店頭でのリアクションについて教えてほしい。

ディリンジャー:アメリカ国内のみの展開で、3つの直営店と3つの卸先(フレッド シーガル、キンフォーク、コンセプト イン ボストン)、オフィシャルオンラインストアに限定した。機能やメッセージをしっかり伝えるためにスタッフの教育も徹底した。結果として、友好的に受け入れられたと信じている。

WWD:そこで得たものを踏まえて第2弾は販路を拡大した。

ディリンジャー:日本をはじめ英国、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドで販売する。アメリカ国内の販路も広げた。それぞれの国の特性を理解し、適切に届けたい。

WWD:デニム最大の魅力である経年変化についても改良がなされた?

ディリンジャー: 12オンス以上あった生地を11.25オンスにした。これによって洗い加工によるリアルな経年変化感が表現できた。

WWD:改良はデザインにも及ぶ?

ディリンジャー:左袖口に組み込まれるスマホ遠隔操作のためのジャカードタグを格段に小さくした。これによってスマートジャケットのカフ幅を小さくすることができた。実は「リーバイス」のトラッカージャケットのカフ幅とウエストバンド幅は同じだ。できるだけこのオリジナルデザインに近づける努力をした。努力をした結果、2cmだけカフ幅が広い。グーグルは操作性アップのためにもっと広くしてほしいと言ってきたが(笑)、これは譲れないポイントだった。だから5mmずつ変えてテストした。あくまでスマートジャケットをファッションとして取り入れてほしかったからだ。17年に、われわれは自信を持って第1弾を発売した。しかし今考えるとテクノロジーに迎合していたと言える。だから第2弾では、それを改善した。トラッカージャケットは「リーバイス」のアイコンであり、その歴史は「リーバイス」そのものだからだ。

WWD:値段も手ごろになった。

ディリンジャー:第1弾は350ドル(約3万7000円)で、第2弾は198ドル(約2万1000円)だ。日本では2万7500円で発売される。

WWD:デニム生地は日本製?

ディリンジャー:糸は日本製だが、国や地域を問わずデニムを織れるようにしている。

WWD:あなたは第2弾の発売に合わせて、「スマホをポケットに入れて、世界にもっと目を向けよう」とのメッセージを発信した。「リーバイス」のテクノロジーを先導する立場のあなたのコメントとしては興味深い。あなたの考えるモノ作り、そして「リーバイス」の未来とは?

ディリンジャー:僕はモノ作りに際して、常に7つのルールを自分に課している。それが、1.水を汚さない 2.公害を起こさない 3.石油由来の素材に頼らない 4.リサイクルを心掛ける 5.リサイクル可能なデザインをする 6.ユーザーをリスペクトして労働者を守るものを作る 7.作り手としてまた企業として責任と透明性を持つ——だ。その上で“質・タフさ・快適性”を届けたい。

WWD:“リサイクル可能なデザイン”とはシンプルということか?

ディリンジャー:そうだ。古くならないデザインを通じて、未来を創造したい。

WWD:あなたはリーバイ・ストラウスでサステイナビリティも担当する。そして以前のサステイナビリティについての取材で、「市場がどう思うかは関係ない。僕らはやるべきことをやるだけだ」と言った。それはもう1つの担当分野であるテクノロジーにおいても当てはまる?

ディリンジャー:おなかを空かせた人がいたとき、彼が「おなかがへった」と言うのを待つのが正解か?答えはNOなはずだ。われわれはジーンズのリーディングカンパニーとして、先回りして答えを示す責任がある。そして今回の主題はスマホだ。ある統計によると、われわれは1年のうち49日間スマホを見ているという。では「リーバイス」は皆が目が見えなくなるまで待つのか?答えはNOだ。スマホにそれだけの価値はない。何となく見てしまう中毒性をジーンズメーカーの立場で解決したい。これがわれわれが行き着いた1つのソリューションだ。自分を信じて、その瞬間瞬間の問題を解決していくのみだ。

WWD:ずばり“リーバイス トラッカージャケット ウィズ ジャカード バイ グーグル”は日本市場に受け入れられる?

ディリンジャー:可能性は大きい。なにより日本人は新しいアイデアが好きだ。

WWD:少し気が早いが、次はわれわれにどんな驚きを与えてくれる?

ディリンジャー:現在、コットン以外でデニムウエアを作る研究をしている。われわれが選んだのはヘンプ(麻)だ。ヘンプは成長が早く、栽培時の水の量は綿の4分の1ほど。生命力が強く、生産も安定的だ。自社のラボ(研究所)で、ヘンプをコットンのように柔らかくする実験をしている。見た目がまるでコットン100%の、ヘンプ混ジーンズを20年の春夏、遅くとも秋冬にはお見せできるだろう。