ファッション
連載 編集長・向の今日は誰と会って、何食べた?

編集長はパリコレで何した?Vol.2 「ディオール」と「マリーン セル」の立ち向かう勇気、「サンローラン」のブレない王道パリ

 こんにちは。「WWDジャパン」編集長の向(むこう)千鶴です。パリ2日目は「ディオール(DIOR)」「マリーン セル(MARINE SERRE)」などからサステイナブルなメッセージがドカン!と伝わってきました。そしてエッフェル塔前の「サンローラン(SAINT LAURENT)」の王道ファッションショーはやはり突き抜けていて最高です。

9月24日(火)10:30
人気者「マリーン セル」が
朝から痛烈メッセージ

 この日は一日中、「マリーン セル」の三日月プリントを着ている人を見かけて人気ぶりがうかがえました。モデルのemmaさん、元2NE1のダラさんも来場。似合っています。会場では黒のスタッフコートが気になりました。「あれが欲しい」という声、多そうです。

 自然を生かした演出の全貌を知りたくて、ライブ配信を片手にショーを見たのですが、映画のワンシーンみたいですね~。地球の環境破壊が進み地下で生き延びた種族の物語だとかで、デザイナーの妄想力とそれを具現化する力が半端ない!ショーを見て頭に浮かんだのは、「エルメス(HERMES)」+「プラダ(PRADA)」÷2という計算式です。有名ブランドの真似、という意味では決してなく、「エルメス」から受け取る自然を大切にする大らかなメッセージと、「プラダ」が得意とするユーティリティーの両方をそこに見たからです。まだ若いのに、スケールが大きいデザイナーです。

12:30
「ビクトリア トマス」を出たら
そこはセーヌ川

 パリと言えばエッフェル塔とセーヌ川、エッフェル塔近くのセーヌ川と言えばアレクサンドル3世橋。橋脚を立てることなくセーヌをまたぐアーチ状の美しい橋です。ビクトリア トマス(VICTORIA/TOMAS)」のショーは、その橋の真下の会場で開かれました。カフェを連想するギンガムチェックのワンピースや、パリの街で見かける鉄柵の装飾風刺しゅうなど、ステレオタイプなパリにほんのり風刺を効かせています。

14:30
「ディオール」が地球環境問題に
アクション。その心は

 「ディオール」のマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)がまたブラボー!なショーを見せてくれました。フェミニズムのメッセージに続いて今回は、環境問題へのアクションをうながすメッセージを発信。ロンシャン競馬場内に立てたテント内に森を再現し、木には「♯PlantingForTheFuture」のタグがぶらさがっていました。この演出を手がけたのは園地栽培に取り組むアーティスト集団、アトリエ コロコ。木はショーの後には移設し街づくりに生かされるそうです。そのハッシュタグとともに写真に収まっていた来場者をはじめ、多くの人がファッションと環境の関係を本気で考えるきっかけになったのではないでしょうか。

 こういうメッセージを出すのって、簡単ではありません。なぜならそこには批判的な意見も寄せられがちだから。影響力が大きい立場であればあるほど勇気がいります。「ラグジュアリービジネスをしながら、口だけ何言っちゃてるの」的な批判です。そのことについてバックステージでマリア・グラツィアに聞くと「批判は怖いわ、でも未来はアクションすることからしか生まれない、だから行動する」ときっぱり。彼女は“この人と組みたい”と思ったら、間に代理人を入れたりせず自分自身でアプローチし、直接ひざを詰めて話します。その姿勢故、これだけの大きなプロジェクトを確信を持ちながら次々実行できるのだと思います。マリア・グラツィア、あなたはやっぱりエラい!

17:00
「アンリアレイジ」が世界共通の
知的な(笑)を引き出す

 「アンリアレイジ(ANREALAGE)」は、先シーズンに引き続き今季も“言葉での説明はほぼ不要”な、わかりやすい演出のショーを行いました。3人が同時に歩いてくるモデルの服は、同じアイテムだけど、微妙に形が違います。そこから“最近は写真の影響力が大きいよね、でも写真に納まる服ってカメラのアングルによって形の見え方異なるよね(笑)”というデザイナーの視点を伝えています。そして観客はショーを見て“確かに(笑)”と思います。ポイントは最後の(笑)の存在であり、風刺が効いているから、その場にいるいろいろな国から来た人たちに共通の(笑)が生まれています。

 デザイナーの森永邦彦さんがいつも投げかけてくるのは、セクシーとか、リラックスといった人間の欲望を刺激する服ではなく、“視点を変えてみる”という知的好奇心をそそる服です。名づけるなら“知的カワイイ”服。そのスタンスはずっと変わらないけれど、パリコレで発表するようになってから伝え方がどんどん複雑になっていて、正直難解すぎると思うこともありました。だから知的であると同時にわかりやすい内容にシフトした先シーズンと今シーズンに私は一票。より多くの人に伝えることを目指すのであれば、わかりやすい、って大切なことだと思います。

18:00
平等精神が素晴らしい「コーシェ」

 「コーシェ(KOCHE)」の会場はとにかくでっかい!なぜなら大勢を招待し、全員がフロントローだから。その平等の精神は徹底しています。レースや羽といったオートクチュールの素材と技法を、Tシャツやポロシャツなどのカジュアルアイテムと融合するスタイルはずっと変わらず。変わらないけれど、多くの人が“見たい”と足を運ぶのは、このショーで得られる“平等”なハピネスを体感したいからなんじゃないかな

20:20
エッフェル塔と「サンローラン」は
2つでひとつ

 「サンローラン(SAINT LAURENT)」にとってエッフェル塔は、いなくてはならないパートナーみたいなものではないでしょうか。エッフェル塔は毎時0分になるとダイヤモンドのごとくキラキラと光るのですが、最近の「サンローラン」は20時のキラキラとともにショーをスタートします。加えて今回は約400個の照明が夜空に向かって光を放ち、その間をモデルがウォーキングする豪快な演出で、マラケシュとLAの2つのカルチャーを感じるコレクションを盛り上げました。

 会場は、オープンな作りのため、観光客が周囲に集まりフェス的な様相に。さらにゲストの中にBLACKPINKのロゼの姿があったことから熱狂的なファンたちが「ロゼ~」を連呼して周囲は騒然としていました。女子に愛される女子、ロゼはダンスで鍛えた体に「サンローラン」のマイクロミニスカートが似合っていましたよ。

番外
パリの硬水と「ウカ」の
シャンプーで戦う

 パリは硬水のため、髪がごわごわになり、どうしたってテンションが下がります。という訳でシャンプーは大切。「ウカ(UKA)」のシャンプーとコンディショナーに助けられております。これとヘアアイロンがあれば大丈夫。2週間の海外出張を乗り切れます!

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