
「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第5回は、京都府を訪れた。
今回の技術は…
極薄財布の設計術
キャッシュレス決済の普及で現金を持ち歩かない人が増えている昨今、コンパクトな財布の需要が高まっています。応援購入サービス「マクアケ」も例に漏れず、縦8.6cm、横8.9cm、カードを入れても厚さは約1cmという小さな二つ折り財布が大きな反響を集めています。開発しているのは、京都に拠点を置く工房アルテジャーノです。
縄田真悟代表は大学を卒業後、ハンドメイドウオッチの製造会社に入社しました。2年で退職した後は、独学でレザークラフトを開始。2016年には、「見た目以上にたくさん入る」三つ折り財布“コレット”を製作し、「マクアケ」でプロジェクトも実施しました。
実は、このプロジェクトでは、想定していたほどの成果は得られませんでした。悔しく思った縄田代表は、雑誌の財布特集を見たり、ライフスタイルの変化を調査したりと、「今の時代に合った財布の形」の研究を重ねていきました。その中で誕生したのが、コンパクトかつ使い勝手の良い二つ折り財布“ウスハ”です。カードとコインの収納スペースを分けて配置することで厚みを軽減。一切ステッチ幅を設けないことで、コンパクトなサイズ感を実現しています。
“ウスハ”は、「マクアケ」のプロジェクトでも好評を博し、800万円以上の応援購入が集まりました。勢いに乗った縄田代表は、その後も細かな改良を繰り返し、全てのパーツにコードバン(馬の臀部の皮から作る高級なめし革)を使用した最新作“ニューウスハ3”を制作。3月7日から、「マクアケ」で先行予約販売プロジェクトを実行しています。
“ニューウスハ3”は、今までで最も“薄さ”にこだわった財布です。革の重なりを最小限にしているほか、ボタンの代わりにギボシ(主にレザークラフトで使用するネジ式の金具)を使用することで、一般の財布より厚みを抑えています。前作ではオマケだった “札押さえパーツ”も財布と一体化させ、とことん薄さを追求しました。一方、最大収納数はカード6枚、コイン15枚、お札15枚と、収納力も担保。カードを出し入れしやすくしたり、一目で全ての硬貨が見えるよう小銭入れを浅めに設計したりと、キャッシュレス派・現金派を問わず使用できるよう工夫を凝らしています。
縄田代表は、「財布を持ち替えることなく、スムーズに収納物を出し入れできるよう随所に細かいこだわりを詰め込んだ」と語ります。今後は、“ウスハ”以外の商品ラインアップを増やしていきたいとのこと。「次はファスナーの長財布かな」と夢を膨らませます。
薄さと堅牢さを両立する3つのポイント
1.デッドスペースがない設計

コインとカードが重なる構造にし、デッドスペースがない最大限の収納力を実現しました。二つ折り財布はサイドに1cmの縫製を施すことが一般的ですが、“ニューウスハ3”は一枚革を巻き込む形で“縫製せずに”設計しており、その分コンパクトなサイズ感を実現しています。
2.薄さの限界値を見極めた革すき

耐久性を考えた上で極限の薄さである0.7mmですきますが、どうしても0.1mm程度の誤差が生まれることも。その時は、パーツごとにふさわしい厚みを見極め、最適な革を選定・使用しています。
3.コバは染料磨き

“ニューウスハ3”のコバは、色を入れながら磨いていく“染料磨き”という技術を駆使しており、使い込んでもボロボロになりにくくなっています。1mmにも満たないコバの部分を手磨きで染めています。
京都発!
応援購入が高額なプロジェクト3選
“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた京都府発のプロジェクトを3つ紹介する。
PICK UP 1 : 応援購入総額5162万円

窓型スマートディスプレイ「Atmoph Window 2」
縦長のディスプレーに、1000種類以上の風景を映すことができるスマートウインドー。映像だけでなく、画面全体から響くサウンドも楽しめる。映し出される風景は全て、4Kのプロフェッショナルカメラで、音声は高性能マイクで撮り下ろした。
PICK UP 2 : 応援購入総額3390万円

薄くて洗える「フェアリーノヴァ掛け布団」
NASAが宇宙服に使用している断熱素材の技術を応用し、3cmの薄さでありながら高い防寒性を誇る掛け布団。臭いや汚れが気になったときは、洗濯機で丸洗いもできる。持ち運びができる収納袋付きで、キャンプや車内泊をする人にもおすすめ。
PICK UP 3 : 応援購入総額1785万円

メテオライト(隕石)日本製自動巻き腕時計
希少価値が高いメテオライト(宇宙から地球へ飛来した隕石の総称)を文字盤に用いた日本製の腕時計。メテオライトの美しい網目状の模様を形成するには、100万年以上の時間を要する。まるで小宇宙が手元にあるような神秘的な逸品。