ファッション

形状記憶素材をショルダーバッグに応用? 軽量感とフィット感を生み出す兵庫県発の匠の技

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第2回は、兵庫県を訪れた。


今回の技術は…

形状記憶素材のバッグへの応用

アートフィアーは2006年、日本有数のバッグの生産地、兵庫県豊岡市で創業しました。社名を冠したブランドを中心に、移動時の課題を解決するバッグを取り扱っています。そんな同社のアイコンは、フレームを生かしつつ、立体縫製の3Dデザインを実現した“ニューダレスバッグ”です。ビジネスパーソンを中心に支持を集め、09年の発表から10年で累計販売数は1万個を超えました。「マクアケ」でも複数のプロジェクトを実施しており、目標金額を7000%超えたこともあります。

同社が21年に立ち上げたシリーズ“レゾン”は、「ペットボトル並みの軽さ」をテーマに、ビジネスシーンに向けたバッグを打ち出しています。今回、ミニマムなサイズ感で軽量、高い収納力を誇るボディーバッグを新たに開発しました。

開発者の森下拓磨さんが「これまで使っていたバッグに体への負荷を感じた」ことが企画のきっかけになりました。森下開発者は「移動時の負担を軽くすれば、精神的なストレスも軽減する。仕事が楽しくなって、良いアイデアも浮かびやすくなるだろう」と続けます。

ボディーバッグはコンパクトで機動力がありますが、物をたくさん入れると肩を痛める危険性も。「肩の一点に負荷が掛かるため」(森下開発者)に生じる悩みは、特許を取得したショルダーベルト「ゼロジーフィット」で解決を図りました。

“ゼロジーフィット”の開発にあたり目を付けたのは、三井化学の形状記憶素材“ヒューモフィット”。人の体温によって形を変える素材です。同素材を芯材に取り入れることで、ボディーバッグのショルダー部分はユーザーの肩に合わせてフィットするように。通常はバッグに使用しない素材ですが、思い切った採用が功を奏しました。ショルダーバッグの根元に付いているアジャスターは、右掛け・左掛けを問わず、ボディーバッグを自動で最適な位置に設定。耐圧を分散させ、荷物の重さを軽減します。

森下開発者は「実際に通勤している人を観察した。彼らの動きからニーズを分析し、仕様やデザインに落とし込んだ」と語ります。通勤時に使用できるよう、ボディーバッグでありながら、11インチのiPad Proも収納可能なサイズ感を実現しました。

フィジカルとメンタルの負担を軽減する同商品は、アートフィアーのミッション「鞄創造により人生を豊かにする」を体現しています。現在は、手掛けてこなかった旅行用バッグを考案中。急な出張にも役立つ、一つあればどこへでも行けるようなバッグを開発したいそうです。

移動時の負担を軽減させる3つのポイント

1.体にフィットする
独自開発のショルダー

特許取得のオリジナルショルダーベルト“ゼロジーフィット”を開発。芯材には、三井化学の形状記憶素材“ヒューモフィット”を使用しました。体温によって中の素材が変化することで、フィット感を高め、荷重を分散させます。

2.余分なものは排除し
超軽量を実現

重さは約380g。強度を保ちながらも1枚で成形できる軽量なナイロン生地を使用しました。各芯材の使用量も微調整を重ね、最適な量を実現しています。

3.ミニマムなサイズ設計

従来のボディーバッグに抱きがちな「もっと収納できたらいいのに」という願いをかなえるサイズ感。11インチのiPad Proも収納できます。

兵庫発!
応援購入が高額なプロジェクト3選

“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた兵庫発のプロジェクトを3つ紹介する。

PICK UP 1 : 応援購入総額3207万円

バイパスドリップで雑味を抑えた美味しいコーヒーを
「アラジン」コーヒーブリュワー

暖房器具やトースターでおなじみの「アラジン」が、ブランド史上初めて開発したコーヒーメーカー。コーヒー本来のうまみを抽出し、雑味を抑える方式“バイパスドリップ”を採用。4つのテイストによって、トーストと至高のマリアージュを楽しめるこだわりの逸品。

PICK UP 2 : 応援購入総額1117万円

パッと布団から出られる!
温かく気持ちいい、究極のパジャマ“もちはだ”

防寒に特化した肌着やアウターなどを製造・販売するワシオの看板ブランド「もちはだ」から生まれたパジャマ。「冬の布団からパッと出られる」をコンセプトに掲げ、自社開発の鷲尾式特殊起毛で寒い朝の「布団から出たくない」を解決。圧倒的な温かさとストレッチ性が特徴。

PICK UP 3 : 応援購入総額1079万円

アシックス商事の技術をオフィスカジュアルに
本革「品格・快適」ビジネススニーカー

本革で快適・軽量なビジネスシューズを作ってきたアシックス商事の「テクシーリュクス」が、オフィスでも履ける本革仕様のスニーカーを開発。日本人の足形を考慮したオリジナル靴型や立体形成のインナーソールを使用し、デザインと歩きやすさを最適化した。

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