ファッション

麻織物職人、ひんやり感を生む“コンニャク糊付加工”にお熱 滋賀県発の匠の技

「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第7回は、滋賀県を訪れた。


今回の技術は…

蒟蒻麻絲

滋賀県湖東地域は、室町時代から麻織物の産地として知られています。同地に拠点を構える湖東繊維工業協同組合は、そんな伝統技術を受け継ぐ23社が集まり構成。麻糸を知り尽くした職人たちは現在、“蒟蒻麻絲”を使った製品の開発に情熱を注いでいます。

“蒟蒻麻絲”とは、麻糸にコンニャク糊をコーティングした糸のこと。滑らかな肌触りと、ひんやりとした着心地が特徴です。開発がスタートしたのは2021年で、「麻の良さをより多くの人に届けたい」という辻英幸副理事の思いがきっかけでした。麻糸はもともと硬く、コンニャク糊で加工するとさらに強張るため、一般的には編地には不向きと言われています。最初の製品となるスヌードが誕生するまでも、熟練の職人が1年間試行錯誤を繰り返しました。

「マクアケ」で実施したプロジェクトの結果は、納得のいくものでした。しかし、課題は別にありました。スヌードの開発は、ベテラン職人だけが参加する形を取っていたのです。「伝統は、若い世代と一緒に盛り上げたい」。この思いを実現するため、今回のプロジェクトでは、大手アパレル企業に勤めた経験を持ち、1000年続く柿渋染めの継承・発展に力を注ぐ若手職人の水谷真也氏をクリエイティブ・ディレクターに迎えました。「伝統的な職人技と、若者に人気のストリートカルチャーを融合させる」。これまでにないアプローチで、麻の新たな可能性を追求する方向にかじを切りました。

今回開発したTシャツには、 所属する企業ならではの技術を集結させました。例えば、110年以上糊付け加工一筋のユニフルは、麻糸に“コンニャク糊付加工”をすることで、美しい光沢とひんやり感のある着心地を。国内でも数社しかできない希少性の高い加工です。その麻糸を、澤染工が糸の表面のみに色を付ける“ル・ポワン染め”で染め上げました。その後、柿渋染めや暮染めなど、伝統的な染色法を進化させるおおまえが、色が体温で変化する染料を用い手捺染で仕上げています。ストリートカルチャーに着想した、大胆で直感的なデザインが目を引きます。ブランドは「蒟蒻麻絲」と名付け、「麻織物に関わる人全員で“コンニャク糊加工”に取り組もう」という思いを込めました。

6月には、大阪・関西万博にかかる滋賀県主催のイベント「滋賀魅力体験ウィーク~Discover Shiga, Go Biwako~」で、蒟蒻麻絲のTシャツを展示・販売する予定とのこと。今後も若いメンバーで新たな組織を発足させ、継続的に活動していくそうです。

麻の伝統と革新を融合させる4つのポイント

1.コンニャク糊付加工

食材としても親しまれる天然素材のコンニャク芋を使用。職人が指先で糊の濃度を調整しながら、糸を均一にコーティングしています。こうすることで、糸の毛羽立ちを抑え、独特のハリとコシを生むことができます。

2.ル・ポワン染め

澤染工の“ル・ポワン染め”。糸の表面のみに色を付ける染色方法です。内側に白さを残すことで、立体感と奥行きを生み、麻の自然な風合いを引き出しています。

3.クール加工

後加工を生業とする大長が、編み上げた生地をクール加工しています。触った瞬間に従来の麻との違いが分かるひんやり感と、美しい光沢のある生地に仕上がっています。

4.手捺染

色が体温で変化するTシャツも用意。特殊な染料を用い手捺染で丁寧に染め上げました。「特に若い世代に動きに合わせて変わる色を面白がってもらえたら」(担当者)。

滋賀発!
応援購入が高額なプロジェクト3選

“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた滋賀県発のプロジェクトを3つ紹介する。

PICK UP 1 : 応援購入総額1億6176万円

Makuake財布歴代1位!
収納しても最薄を目指す!「il modo Air」

レザーブランド「ステータシー」の長財布“イルモードエア”。極限の薄さを追求しており、収納後の厚さは約12mm。一方で、紙幣20枚、カード8枚、小銭15枚が入る収納スペースも確保。革は、オリジナルの“栃木レザー”を使用している。

PICK UP 2 : 応援購入総額7470万円

NANGA発!快適な睡眠を得ることを追求した、
超軽量ダウン寝袋&エアマット

アウトドアブランド「ナンガ」の760FPの“DXダウン”を採用した“超軽量寝袋&エアマット”のセット。プロジェクト終了後、災害に備えてほしいという思いから、“SONAE BAG”と名付け商品化した。

PICK UP 3 : 応援購入総額953万円

【航空自衛隊 70周年記念】
ブルーインパルス 100本限定 プレミアムモデル!

ブルーインパルスの魅力を詰め込んだ日本製のソーラークロノグラフ。航空自衛隊の創設70周年を記念したモデルで、各色100本のみの限定生産。公式エンブレムの刻印や機体をイメージした針先など、随所にブルーインパルスの要素を取り入れた。

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