
「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第3回は、長崎県を訪れた。
今回の技術は…
お酒の味を引き出す焼き物の技術
伊万里陶芸は、1981年に創業しました。日本が世界に誇る伝統的な焼き物の有田焼(佐賀県)と波佐見焼(長崎県)の日用食器を中心に卸・販売しています。
同社で「マクアケ」プロジェクトの責任者を務める友廣俊庸さんは、「時代の変化やお客さまのニーズに合わせて、受け継いだ伝統をアップデートしていくことが大切」と語ります。伊万里陶芸は、大切に育み継承してきた伝統を守りつつ、新たな価値観も取り入れることで、現代の食生活に合う日用食器を生み出しています。
伊万里陶芸は、波佐見焼の独自技術で開発した多孔質セラミックフィルターを活用し、セラミックコーヒーフィルター“コフィル”を生み出しました。半永久的に使えるペーパーレスのフィルターで、“見て美しく使って楽しい”コーヒー生活を提案しています。
“コフィル”は、50ミクロンという毛髪と同じくらい小さな穴が空いているため、紙や布のフィルターが不要です。一方、従来の紙フィルターよりは少し大きい“絶妙な穴”のため、コーヒーのうまみとなる油分をよく通します。セラミックが持つ遠赤外線効果が期待でき、紙フィルターよりもコクが出て、雑味のないキレの良い味わいを楽しめるのが特徴です。「多くのお客さまから反響があった」(友廣さん)ため、“コフィル フジ”や“コフィル フロー”など、商品を続々と拡充しています。
お酒専用に改良したフィルター“蒼い雫”もその一つです。コーヒーフィルターの購入者から「お酒もまろやかになる」「お酒の味が引き立つ」といった感想があり、企画・開発に至りました。コーヒー用のセラミックフィルターの技術を生かしつつも、そのままでは早くろ過されてしまうため、底面の形状を厚めに設計。何度も微調整を重ね、お酒本来のまろやかさを引き出す厚さを実現しました。
友廣さんは「従来のセラミックフィルターは、どうしても目詰まり(コーヒー豆の油分やコーヒー粉などがフィルターの穴に詰まること)を起こしてしまう」と語ります。“蒼い雫”は、職人が釉薬(陶磁器の表面を覆う液体)の溶ける温度を微調整することで、表面の微細な凹凸が撥水性を高める「ロータス効果」を生み出し、目詰まりのしにくさを実現しました。
友廣さんは「『マクアケ』プロジェクトの反響を聞きながら、日本酒以外のアルコール用フィルターなど、商品をもっと充実させたい」と語ります。一方、水のろ過技術への転用の可能性も探り、発展途上国の水質向上に貢献していきたいとのことです。
お酒本来のまろやかさを出す3つのポイント
1.微調整を重ねた
原料の調合
主原料のアルミナ鉱物や副原料の長石などを独自の配合で混ぜ合わせ、50ミクロンという毛髪と同じ大きさの極微細な穴がたくさん空くよう調合しました。
2.機械ろくろ成形の採用
伝統的な波佐見焼の技術と現代の精密加工を融合させる“機械ろくろ成形”を採用しました。フィルターの精密性と均一性を向上させ、ろ過技術を安定化・最適化できるようになりました。
3.厚めに設計した底面の形状

底をコーヒー用フィルターの3倍ほどの厚さにすることで、液体がフィルターと長時間接触するように。その間にじっくりお酒がろ過されるため、まろやかな口当たりになります。
長崎発!
応援購入が高額なプロジェクト3選
“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた長崎県発のプロジェクトを3つ紹介する。
PICK UP 1 : 応援購入総額3441万円

洗える究極のブラックフォーマル誕生
最新技術を使ったサイズレス構造と、身体のラインを拾わないシルエットを追求した“360度体型をカバーするブラックフォーマル”。自宅で洗濯することが可能、畳んでもシワになりにくいなど、手入れのしやすさも特徴。
PICK UP 2 : 応援購入総額310万円

小鳥の声が寄り添う仕掛け徳利&お猪口
明治時代に生まれた“うぐいす徳利”を、今の食空間に合うモダンデザインへとアップデートした「モモカキトキメキ」のプロジェクト。波佐見焼の陶房と製品開発を行い、墨象家の知麻が1点ずつ絵付けした。
PICK UP 3 : 応援購入総額276万円

波佐見焼の「CookDon」
電子レンジで調理できる波佐見焼のどんぶり。調理後、そのまま食卓に出せるので洗い物が少なく済み、モノを増やしたくない人やひとり暮らしの人にぴったり。インスタントラーメンがちょうど入るサイズ感なので、一人鍋にもおすすめ。