
「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」をビジョンに掲げるマクアケによる、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」には、伝統技術を現代的なアイテムに活用したプロジェクトが数多い。この連載では、全国各地の匠の技に注目。実行者の思いとともに、匠の技をどう活用し、どう訴求しているのかを考える。目指すは、47都道府県の匠の技の探訪だ。第6回は、東京都を訪れた。
今回の技術は…
音階やリズムをデザインに変える技術
音階やリズムをストライプ柄に変換するーーそんなユニークなファッションアイテムが生まれました。開発を担うのは、2024年11月に創業したノクターブ。音楽・ファッション・アートの境界を越えた、新たな形のクリエイティブを追求するアーティスト集団です。音にまつわる数々のプロジェクトに携わってきた安藤コウ代表を中心に、ファッションブランド「イン」のデザイナーを務める印致聖(イン・チソン)、3Dファッションのスペシャリスト李在⿓(イ・ジェヨン)という各分野の専門家が集まっています。
最初のプロジェクトは、音階をストライプ柄に変換するシステム“ストライプトラック”を活用したファッションアイテムの製作でした。元となったのは、「『心地良い音に包まれる』という比喩表現を現実にできたら」という安藤代表自身のアイデア。10年ほど前に思い付いたというこのアイデアは、安藤代表が広告代理店に勤めていた際、クライアントに提案したこともあるほど、実現を望んでいたものと言います。今回はまず、友人である印デザイナーにアイデアを相談するところからスタート。その後、3D技術に詳しい李さんもメンバーに加わりました。
こだわったのは、“アーティストの音楽を視覚化させる”こと。初期は、「音階には色調が存在している」という説に着目し、それぞれの音階を表した12色でストライプ柄を作ろうと試みました。しかし、色調だけではアーティストらしさを表現しきれず、色の見え方は人に異なることも判明。こうした課題を踏まえ、制作背景やコンセプトなど、楽曲にまつわる情報を生成AIに学習させ、それらをもとに1枚の“絵画”を作成。その“絵画”から12色を抽出し、色の出現率と音階の使用頻度を対応するようにペアリング。そのペアリングした色で視覚的な模様(柄)を生成する、というプロセスにたどり着きました。
今回、題材にしたのはクラシック音楽の巨匠・ベートーベンの名曲です。「歓喜の歌」「運命」の2曲を使い、ストライプ柄のニットウエアを製作しました。安藤代表は、「彼の楽曲は、曲によってテーマや雰囲気が異なるため、同じストライプ柄でも違いが出やすい」と説明します。4月7日、応援購入サービス「マクアケ」でも先行販売プロジェクトをスタートしました。
安藤代表は「今後は、童謡や民謡、ポップスなど、多くの人々に親しまれている楽曲をファッションアイテムに変換させたい」と展望します。家具のファブリックデザインなど、ファッション以外の分野にも挑戦し、音楽が持つ可能性を広げていきたいとのことです。
デザイン化する際の4つのポイント
1.音楽情報の
取り込みと解析

まず、楽曲に含まれるメロディーやハーモニーのデータを解析します。特に、音階(C、C#、D...B)の使用頻度が重要。各音が全体に占める割合を数値化していきます。
2.生成AIを活用した
絵画制作

音色やテンポ、雰囲気など、楽曲の特徴をもとに、生成AIが“絵画”を作成します。静かな楽曲であれば「柔らかな色合い」、エネルギッシュな楽曲なら「鮮やかな色調」の“絵画”に仕上がります。
3.色の抽出と解析

作成した“絵画”から、使用している色を抽出し、各色の出現率を算出します。それをもとに、“絵画”の色を使用頻度順に並べます。
4.色と音階の対応と
柄の生成

楽曲内の音階と“絵画”内の色の使用頻度を照合し、各音階に対応する色を割り当てます。音階とペアリングした色をもとに、楽曲全体を視覚的な模様(柄)としてデザインします。
東京発!
応援購入が高額なプロジェクト3選
“アタラシイものや体験の応援購入サービス”の「マクアケ」で大きな反響が寄せられた東京都発のプロジェクトを3つ紹介する。
PICK UP 1 : 応援購入総額1億7390万円

消臭機能付きワンタッチふとん乾燥機|cado
「空気をデザインする We design for atmosphere.」をコンセプトに、空気清浄機や加湿器などの開発や販売を手掛けているカドー。消臭機能付きのワンタッチふとん乾燥機“フェーン 001”の好評を受け、“フェーン PRO”と“フェーン 002”の2機種を発表した。オゾン除菌と消臭の機能を追加している。
PICK UP 2 : 応援購入総額6181万円

オンオフ使える2階建て構造-FLOORPACK Flex
“フロアーパック”は、メーンの収納スペースを“2階建て”構造にすることで、荷物を取り出しやすくしたバックパック。累計販売額1億円以上のヒットを記録した。今回、初代をアップデートした“フロアーパック フレックス”が登場。取り外し可能な仕切りパッドを取り入れ、汎用性を高めた。
PICK UP 3 : 応援購入総額4567万円

マットレス・枕・布団が一つになったスリープギア
マットレスと布団、枕が一つになったオールインワンベッド。9割以上が空気という独自のエアループ素材が、寝床内の熱や湿気を逃し、朝まで快適な睡眠を保つ。通常のシングルベッドの2/3、たためば1/20というコンパクトなサイズ感も魅力の一つ。