「エルメス(HERMES)」は6月13日、中国・上海で2025-26年秋冬コレクションのチャプター2、第2章と位置付けるコレクションを発表した。他のブランド同様、「エルメス」も近年はパリ以外の都市でランウエイショーを積極的に開催しているが、基本的にパリでのコレクションを踏襲するメンズとは異なり、ウィメンズは洋服も雰囲気も異なっている。
上海では翌日から、他の国でも間もなく発売するコレクションは、パリで発表したダークトーンで力強く、不安で不穏な時代を生きる女性たちを支えたムードの進化系。チャプター1のコレクションにエンパワーメントされて次の時代に向けて走り出した女性の背中を押すような、アクティブでカラフル、プレイフルなコレクションとなった。
上海のウォーターフロントに出現した一夜限りの会場は、対岸の色とりどりに光る高層ビルに呼応するよう、都会的でカラフル、エフォートレスながら強く、メガロポリスのようにモードとアウトドアなどさまざまな要素が入り混じり、エネルギッシュだ。
パリで発表したチャプター1同様、ダークトーンのレザーを多用しながら、ライラックやオレンジ、クレイホワイトなどのカシミヤニットを腰に巻いたり、インナーとしてレイヤードしたり、アームやレッグウォーマーとして活用したりでアクティブな雰囲気を漂わせた。キルティングも格子柄やジグザグなどを縦横無尽に組み合わせて、自由でプレイフルなムードを表現。“バーキン”や“ケリー”“ピコタン”などの人気バッグを肩がけしたりクロスボディにするあたりからも、パリでのコレクションとは異なるアクティブなムードを漂わせる。クロップド丈のスエードブルゾンからシェアリングやブランケットで作るポンチョ、ムートンのライダースや乗馬ブーツと「エルメス」らしいアイテムが基軸ではあるものの、ニットの腰巻や丈感の異なるアイテムを組み合わせたレイヤード、時には暖色に寒色さえ組み合わせる自由奔放なカラーリングはどこまでも楽しい。レザーのキャップにスカーフのスタイリング、乗馬ブーツに敷き詰めたクリスタル、そして鮮やかな色柄で人々を魅了してきた“ドレサージュ・トレサージュ”のスカーフで切り返したウエアなどで表現した自由は、アウトドアのムードを絡めたモードを印象付けたパリの延長線上ではあるもののアウトドアムードを増し、「エルメス」というブランドの多面性を印象付けた。
ナデージュ・ヴァンヘ(Nadege Vanhee)は、「上海は、都会主義と自然が融合し、活気に満ちている。『アウトドアと都会の融合』というコンセプトをさらに推し進めようと思った」と語りつつ、「モジュール」という言葉を用いてアイテムやスタイルの汎用性を追求したと話した。「時代を超越するとは、柔軟なモジュール性があるということ。状況に応じて、4、5の異なるスタイルとして着こなすことができる」と語った。
ショーにはVIP顧客ら約800人のゲストが出席した。“ラグジュアリーの正常化”が叫ばれ、日本でも多くのブランドが前年の売り上げを割り始めているものの、「エルメス」は今年の春節でも売り上げは前年同期比を1%上回ったという。会場には、希少なバッグを抱えた上顧客の姿が目立った。