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平屋のニーズが高まる時代 MUJI HOUSEが提案する生活者が「編集」する家とは

 良品計画の子会社であるMUJI HOUSEは5年ぶりに新商品「陽の家」を発表した。デザイン監修を担当した無印良品アドバイザリーボードであり、日本デザインセンター社長の原研哉氏によるトークイベントが9月13日に開かれた。「陽の家」は大開口を介して庭とつながる平屋で、ライフスタイルに合わせて“編集”できるのが特徴だ。「上質なスケルトンがあれば自分の空間を自分でつくれます。長く快適に過ごせる家は間取りを自在に変えられる家だと考えました」と原氏。「陽の家」はシンプルを極めた間取りのない家なのだ。

 MUJI HOUSEはこれまで大きな吹き抜け空間のある「木の家」、光と風、そして風景を取り込む「窓の家」、都会の限られた空間を有効に生かす「縦の家」を発表しており、「陽の家」はそれに続く4つ目の商品となる。「陽の家」間口5間半(10.01m)×奥行5.25間(9.555m)タイプの場合、標準仕様本体工事価格は1598万円。ウッドデッキの広さやデザインなど、さまざまな世代と家族構成に合わせてカスタマイズできる商品だ。

 原氏は「陽の家」で少子高齢化が続く未来を見据えた平屋の住みやすさを提案する。「階段がなく、テラスにもそのままつながるワンフロアなので、段差によるストレスがありません」。フラットで、壁や柱により遮断されない大空間のため、車椅子でも移動しやすい動線となった。シンプルな機能美とリーズナブルな価格設定もあり、従来のMUJI HOUSEは30~40代の若い世代に支持されてきた。「しかし平屋の『陽の家』はこれから子育てを始める若い層だけでなく、子育てを終え、終(つい)の棲家として自然と溶け込む暮らしを望む高齢者層にも需要があるのでは」と、原氏とともに登壇したMUJI HOUSE取締役の川内浩司氏は分析する。

 データ上でも平屋のニーズは高まっている。2010年に6.19%だった平屋着工戸数の割合は年々増加傾向にあり、17年には9.3%まで上昇。平屋住宅の豊かさを求める要望が実際増えているという。

 「陽の家」では窓が壁の中に完全に収まる全開可能なサッシとウッドデッキが標準仕様となる。そのため外部とつながる開放的な空間が実現した。「例えばキッチンで調理した後、キャスター付きのダイニングテーブルをそのまま移動し、ウッドテラスで食事を楽しむこともできます」と原氏。

 また階段がない平屋で、廊下も必要としないワンフロアであるため、限られた空間を有効に活用できるのも特徴だ。屋根の形をそのまま生かした吹き抜けのように伸び伸びとした勾配天井のため、閉塞感がない。壁ではなく収納家具でゆるやかに仕切るなど、生活者により間取りを調整でき、家族の成長やライフスタイルの変化に合わせた“編集”が自在な住まいとなった。

 「上質なスケルトンのために必要なのは高い断熱性、耐震性を備えた性能のいい箱。それを実現するのが一棟一棟で構造計算をしている木造SE構法です」と開発担当の川内氏。SE構法はMUJI HOUSEに共同出資しているNCNによる独自の構法で強度が数値化できる集成材を耐久性の高い金物で接合し、構造全体で家を支えている。そのため従来の木造住宅と比較して耐震性が極めて高く、大空間・大開口の一室空間が可能になった。

 また断熱性は軀体の中に断熱材を入れた充塡断熱と外張り断熱を組み合わせたダブル断熱とし、一年を通じて快適な室内環境を実現し、エアコン1台で家全体を暖められるほど気密性が高くなった。ひさしを深くし、太陽の光を取り込みつつ直射日光を遮るなど、自然のエネルギーを活用するパッシブデザインも採用している。「無印良品はこれが常識と考えられている生活をよりよくすることが信条。ローコストだが豊かで、無駄を省きつつもディテールをおろそかにせずに、徹底的に合理性を追求したい」と川内氏。ライフスタイルも多様になり、週末を郊外で過ごす二拠点居住も浸透しつつある。「Villa(山荘)と考えて20棟を建てると宿泊施設になる。大自然の中にローコストでホテルを建てるという需要もこれからあるのではないか。日本の暮らしのリテラシーを柔らかくしていきたい」と原氏は展望を語る。

 千葉県いすみ市に9月21日にオープンするフォレストリビング内には「陽の家」のモデルハウスが建ち、9月21日から29日まで毎週土・日・祝日に、完全予約制で公開される。