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世界一ラグジュアリーなスイスの時計見本市で食らうSUSHI

 「WWDジャパン」時計担当のミサワです。今、僕はS.I.H.H.(「サロン・インターナショナル・オート・オルロジュリ」、通称「ジュネーブサロン」)取材ため、スイス・ジュネーブに来ています。

 S.I.H.H.は、“世界一ラグジュアリーな国際時計見本市”です。この見本市は、ジュネーブから北に約250kmの街、バーゼルで行われる世界最大級の国際時計・宝飾見本市「バーゼル ワールド(BASEL WORLD)」から「カルティエ(CARTIER)」「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「A.ランゲ&ゾーネ(A. LANGE & SOHNE)」などを擁するコンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)が飛び出す形で1991年にスタートしました。飛び出した最大の理由は、「バーゼル ワールド」の貧弱なホスピタリティーに嫌気が差したから。つまり、ラグジュアリーに特化した国際時計見本市こそS.I.H.H.というわけです。ちなみに、時計も10万円以下の商品はほとんどありません。中心価格帯は数百万。億単位の時計だって決して珍しくない――そんな異空間です。

 と、ここまで読んで「私、時計着けないんで……」と脱落気味の皆さんに視点を変えて、S.I.H.H.で振る舞われる“食”をレポートすることで、そのゴージャスぶりをお伝えしたいと思います。

 S.I.H.H.は、世界中から集まったバイヤーやジャーナリスト、上顧客の“胃袋”も全力でサポートします。いくら飲んで食べても無料で、そのどれもがハイクオリティー。そこには超複雑時計やジュエリーウオッチなど数千万~数億円の時計の商談や取材において、少しでも笑顔とリラックスを、というリシュモンの思いが込められている気がします。

 5万5000平方メートルの会場の通路という通路にはバーカウンターが設置され、その周りにはスツールやテーブル、ソファが並べられています。朝8時の開場からパンやコーヒーが用意され、アルコールも常備されているので“朝シャン(朝からシャンパン)”なんてのも可能です!12~15時はランチタイムで前菜、メインコース、デザートのフルコースを堪能できます。

 特に人気なのは「California et Maki, salade d’algues wakame」、つまり「カリフォルニア巻き~ワカメサラダ添え~」なんだそうです。細巻き4本(かっぱ巻き2、鉄火巻き1、サーモン巻き1)と太巻き4本(アボカド入りのものにサーモンを載せたり、とびっこをまぶしたり)の横に、なぜかガリの代わりの紅ショウガ(笑)。さらに、彼らが「ワカメ」と呼ぶ、謎の緑色の細長い海藻のサラダが添えられています。でも、この謎の海藻を含めて、とてもおいしいんです。どれだけおいしいかというと、日本人バイヤーやジャーナリストさえおかわりするほど。海外で寿司を食す場合、ネタ以上に気になるのがシャリなのではないかと思うのですが、そこも「絶妙にねっとり」「ほどよく酢を利かせて」(共に来場者談)いるんです!

 「デザートの後に、前菜をもう1品」なんて、本来お行儀の悪いオーダーにも笑顔で応えてくれて。こういったスタッフのホスピタリティーって、イベントの印象に直結するんですよね。

 S.I.H.H.の2018年の来場者数は2万人。このクラスの大型イベントの場合、オペレーションがいまいち……なんてことも往々にしてありますが、S.I.H.H.については皆無です。スタッフは皆てきぱきと仕事をこなして、「ムッシュ、お決まりでしょうか?」「ムッシュ、デザートはいかがですか?」と絶妙なタイミングで声を掛けてくれます。まさに星付きレストランのごとし。いつしか「ムッシュ」と連呼されることに快感を覚えるようになりました(笑)。

 リシュモンが主導して始めた同見本市は、その姿勢に共鳴して17年からはケリング(KERING)傘下の「ジラール・ペルゴ(GIRARD-PERREGAUX)」「ユリス ナルダン(ULYSSE NARDIN)」、18年からは「エルメス(HERMES)」も参加しています。

 通路には芸術品ともいえる時計がディスプレーされ、それをつまみに皆がワイン片手の時計談義――ラグジュアリーこの上ない光景なのです。

 一方の僕はといえば、今年会期が1日短縮されたことでタイトになったスケジュールをこなすべく、汗をかきかき会場内を行ったり来たり、その合間にこの原稿を書いているという次第です……。