フォーカス

ヴァージル初の「LV」は万物を飲み込みレインボーに染める 本人号泣の感動フィナーレ

 時代は変わる。ラグジュアリーの民主化は進んでいるが、それでもまだ崩しきれなかった人種や出自、階級や職業の壁は間もなく一気に瓦解し、きっと“アツい思い”がなによりも大事な世界にファッション業界は変わることができる。ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)による初めての「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、夢かもしれないが、そんな明るい未来を想像させてくれる感動的なものだった。

 ショー会場は、前任キム・ジョーンズ(Kim Jones)と同じ、市内中心部のパレロワイヤル。屋外に設けたショー会場は今季一番の長さで、赤から黄色、緑、そしてブルーと七色にグラデーションする。そこに並ぶのは、全員がフロントロー、つまり最前列でショーを楽しむことができる長い長いベンチと、ランウエイ同様にレインボーカラーのお土産のTシャツ。ベンチの脇には、やっぱり七色のTシャツを着た人たちが大勢並んでいる。聞けば、彼らは会場からほど近い「ルイ・ヴィトン」の本社で働く総勢500人のスタッフたち。ある一人に話を聞くと、「ショーに招かれたのは初めて」とのことで、誇らしげだった。

 ショーは、ヴァージルをファッションの世界に引き込んだ、師とも言えるカニエ・ウェスト(Kanye West)の「I thought about Killing You」で幕を開けた。ファーストルックは、ヴァージルが1カ月前にレッドカーペットでお披露目したスーツ同様の、純白のセットアップ。序盤17ルックは、ヴァージルのピュアな気持ちそのものなのか、それとも「これから何色にも染まることができる、染めることができる」という決意の表れなのか、オールホワイト。フォーマルからカジュアル、スエットからファーまでさまざまだが、純白のルックを着こなすのは皆、黒人モデルだ。

 その後、コレクションは徐々に色を帯び、中盤以降は色彩に溢れる。七色のゼブラ模様を織りで描いたブルゾンなど1着に七色を詰め込んだルックもあれば、パープルのセットアップにグリーンのベストなど奇抜とも思える色合わせで1つのスタイルの中に複数の色を詰め込んだルックもある。ダイバーシティーを象徴する、レインボカラーの使い方は多種多様。ラストルックは、光を七色に乱反射するシルバーのポンチョだ。

 アクセサリーでは、カーフにエンボスのモノグラムを描いたモノトーンのバッグに、ネオンカラーのチェーンをあわせる。前者がモノトーンのラグジュアリーなら、後者はカラフルなチープ素材。相反するものを融合することでレインボー同様のダイバーシティーを表現した。足元は、「ナイキ(NIKE)」の“エア フォース 1(AIR FORCE 1)”を彷彿とさせるハイカットのスニーカーだ。

 フィナーレに登場したヴァージルは、泣き出した。そして最初は、真正面にいたカニエとハグ。すると涙は止まるどころか流れる一方で、ヴァージルは長いランウエイ歩く最中、ずっと涙を止めることができなかった。黒人で、建築を学んだ後に音楽の世界に飛び込んでファッションと出合い、自らのブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH」を立ち上げ、ストリートの急先鋒としてパリメンズに挑戦。ラグジュアリーの「リモワ(RIMOWA)」や「ジミー チュウ(JIMMY CHOO)」からマスの「ナイキ」や「リーバイス(LEVI‘S)」「イケア(IKEA)」とのコラボに挑むなど、努力を重ねてきたヴァージルに万感が押し寄せたのは、想像に難くないだろう。ショーの後、彼は自身の泣いている後ろ姿をインスタグラムにポストし、「You can do it too...(君にもできるさ)」との一文を付け加えた。

 ショー会場で配られたリリースには、今回のショーに参加したモデルの出身地と、彼らの両親が生まれた場所が世界地図の上に●印で描かれていた。北米、南米、欧州、アフリカ、中東、インド、中国、オーストラリア、そして日本。●印の描かれなかった大陸は、南極以外なかった。

 あらゆるジャンルを超越してきたデザイナーはこれから、世界最大のラグジュアリーメゾンからファッション業界をかき回す。ファッション業界は、さらに大きな変革の時代に突入する。