ファッション

「レスポートサック」COOに聞く2024年のビジネス戦略 クリエイティブ強化や販路の見直しに着手

 ニューヨーク生まれのバッグブランド「レスポ―トサック(LESPORTSAC)」は2024年以降、ブランドイメージの刷新に取り組む。「忙しく動く回るニューヨーカーのために生まれた持ち運びやすい洗練されたアイテムとともに、原点回帰しながら未来を見ていく。ブランドの誕生50周年を迎える2024年に向けて、戦略的な道筋を立てている初期段階にある」と語るのは、金融業界出身で、これまで数々のブランドのコンサルティングに携わってきたトーマス・ベッカー(Thomas Becker)最高執行責任者(COO)。2019年1月から同ブランドを率いる同氏にブランドのこれからを聞いた。

WWD:ブランドのビジネス戦略とは?

トーマス・ベッカーCOO(以下、ベッカーCOO):アメリカ市場で卸売を再開する予定だ。それも、ノードストローム(NORDSTROM)、サックス・フィフス・アヴェニュー(SAKS FIFTH AVENUE)、ブルーミングデールズ(BLOOMINGDALE'S)といった大手百貨店レベルでの取引を目標にしている。ヨーロッパ市場の再強化や、クリエイティブの側面を強化して“文化的価値観”創造のために動いていく。

WWD:卸売に力を入れていく理由とは。

ベッカーCOO:過去に一度は撤退した卸売を再開することで、私たちは“未来に戻っている”。これまでは小売りに集中したことで、ヨーロッパ市場の開拓など自由に動くことができ、ブランドの発展につながる部分も多くあった。アメリカ市場は小売業が発展していて、ブランドも「誰に向けて販売をしているか」というプラットフォームの性格を理解しながら進化をしてきた。ただアメリカで卸売業は露出の機会としてやはり重要なビジネス。多くのブランドはブランドを支える柱となる消費者向けの独自のビジネスを持っているが、卸売にも力を入れてオーディエンスの拡大を補完する必要があると考える。

WWD:製品の魅力はどのように伝えていく予定か。

ベッカーCOO:他ブランドと差別化できる強みは、製品にある。「レスポートサック」が持つ定番品や“エッセンシャルライン”などが卸売では重要な鍵となるだろう。エッセンシャルラインは日々活発な人々に寄り添い、多様な選択肢を持つ。色使いもまた、ユニークだ。市場での再活性化や再出発する際に、重要な役割を持つはずだ。

WWD:新しい顧客層にはどのようにリーチしていく?

ベッカーCOO:オーディエンスの拡大に際して決めたのは、特定の消費者像を細かく見てコミュニケーションをとっていくということ。幅広く“みんな”に向けて発信をすると、誰にも届かないと考えるからだ。実際データでは、若年層が一番少ない予算を持ちながら、積極的にラグジュアリーアイテムを購入しているのが見られる。然るべき製品をそろえれば、それだけの情熱を生めるはずだ。ブランドのプレイフルな側面を発信しながら、歴史や思いを届ける動画キャンペーンなども作成した。製品の広告だけでなく、いかにアイデアや感情を伝搬できるか、に重きを置いていく。

WWD:ブランドはどのような局地を迎える?

ベッカーCOO:コロナ禍にいたことで、戦略的な準備をする時間が生まれた。「レスポートサック」は世界的に混乱の時代の中でも、うまくブランドの舵を切ってきた。具体的な数字の公表は控えるが、業績は多くの地域で昨年比でプラスに転じている。この状況から生まれた日米コラボやクリエイターらとのつながりは、「レスポートサック」が達成したいレベルを迎えるための深い関係の構築に生かされているはず。今は“はじまりの終わり”を過ぎた段階だ。24年はわれわれにとって多くのことが動く重要な年。この一年で取り組む事柄の成果が24〜25年にかけて見えてくるだろう。

コンサル経験を生かしてクリエイティブとビジネスを両立

WWD:これまでのキャリアは現職にどう生きている?

ベッカーCOO:両親が商品販売やサービス提供を行うビジネスに30年以上携わっていたので、幼い頃からそういったものに触れる環境で育ってきた。アメリカン・エキスプレス(American Express)では、ブランド構築の基礎を学んだ。「トム ブラウン(THOM BROWNE)」では「大事なのは、何を伝えようとしているかが明確であること」を学んだ。「意見が異なること」より大変なのは、「意見が何か分からないこと」。この経験は、この10年間、私自身のコンサルタント業の一つとして、メディアであれ広告であれ、幅広い業務の助けとなった。「レスポートサック」でもブランドの真髄とは何かを自問し、考えを統一していくことからはじめた。それができれば、自然にどう行動すべきかが見えてくる。一番難しいのは、ビジネスで「何にノーと言えばいいのか」「何をすべきではないのか」「デザインで注力すべきところ」「時間をかけて何にイエスと言えばいいのか」を知ること。舵を切る上で、これまでの経験を生かして、ビジネスの面で何をすべきか、どうすべきかという現実を理解している。そして、私たちが取り組んでいる計画を誰もが理解できるように、そしてなぜそれに価値があるのかをわかりやすく、関係者らとコミュニケーションをとっていくことができる。クリエイティブにもビジネスの視点は必須で、その両立が大事と考える。

WWD:2019年に就任して見えたブランドのDNAは?

ベッカーCOO:“ライトネス(=軽さ)”は、ブランドを構成する大事な要素。ニューヨーク生まれのDNAを軸に、ヨーロッパ的で洗練された感性も取り込みながら進化をしてきた。「トム ブラウン」での経験でも感じたが、アメリカのテイラーやクラフトマンシップはアメリカブランドの重要なアイデンティティーにつながっている。「レスポートサック」の製品はアメリカのニーズ、ヨーロッパの感性、スポーティーさを融合させて、グローバルブランドに成長した背景がある。軽量でありながら、耐久性にも優れている。“アメリカのブランド”ということが強く意識されていなくても目まぐるしく変わるニューヨークで約50年間存在感を保ち続けたのは、この都市が持つ魅力にも根ざしているからだろう。活動的で移動の多いニューヨーク市民のエネルギーに触発されて、ブランドの哲学も発展してきた。

WWD:“ライトネス”のコンセプトとは。

ベッカーCOO:改めて“ライトネス”というのは、ただ製品が軽量であることにとどまらない価値観を持っている。19年にブランドにジョインしたときに再考した部分で、製品の色使いから使用シーンまで、ブランドの発するデザイン的言語に幅広く影響を持っているコンセプトだ。(22年11月にニューヨークのソーホーエリアにオープンした)新店舗でも、“ライトネス”のコンセプトを取り入れ、自然光が入る窓やクリエイティブスタジオを兼ねた空間作りを徹底し、“心が軽くなる”ような場所となっている。

WWD:アメリカでのブランドの立ち位置・顧客層は?

ベッカーCOO:「レスポートサック」と同じ1974年に生まれたので、人生を通してブランドの歴史を感じてきた。スポーティーなブランドアティチュードが、アメリカで多くのポジティブな連鎖を生んでいると思う。長い間ブランドベースでキャリアを築いてきたが、これほどポジティブでノスタルジーを持ったブランドに出合ったことはない。人生の多くの場面で選ばれ、影響を与えてきたと思う。顧客層は20代後半や30代前半がメインで、やや女性の方が多くを占めている。ただ、創業当初からジェンダーニュートラルな製品を手掛けてきた。日々の活動や動き、旅行時に活躍するバッグ、という大きな括りのもとで、ここ数年は年齢や性別を超えて愛されてきたユニークな側面がある。

日本市場とも密に連携 50年後をどう見据える?

WWD:日米コラボアイテムも好調だ。

ベッカーCOO:日本チームは素晴らしいパートナー。クリエイティブチームがブランドアイデンティティーをよく理解し、今回日米共同開発の“レスポートサック アトリエ”ラインが誕生した。同ラインをスタートさせたとき、いかにクリエイティビティーを刺激するプラットフォームを築けるか、を考えた。デザインに制約もないし、ブランドの性質的に価格帯も柔軟に設定ができる。アイデアを持って冒険するための基盤となっていくだろう。使用するカラーから素材、届けたいオーディエンスまで、自由に遊べる企画となっている。

WWD:他国とコラボの予定は?

ベッカーCOO:きっともっと生まれるだろう。ただ、重要なのは「そのコラボに意味があるかどうか」。日米の関係性を参考に、他国とも交流が増えるかもしれない。

WWD:日本市場に期待することは?

ベッカーCOO:日本市場は消費者がデザインや品質、クラフトマンシップ、ヘリテージをよく理解している唯一無二の存在だ。クリエイティブなブランドとしての立ち位置を強化していく上で、鍵を握る。日本チームとはコロナ禍で深い関係性とコミュニケーションが多く生まれた。クリエイティブにもコミットして、ビジョンを共有しながらやってきた。

WWD:50周年を迎えるが、この先50年のビジョンは?

ベッカーCOO:われわれはこの50年間、時間をかけて着実に進化してきたと思う。今後50年間は、前の50年と同じくらい、“面白い”ブランドであり続けることが願いだ。さまざまなカテゴリーに進出するのを見てきたが、これからの課題は、どのカテゴリーが適切かを吟味していくこと。そして、どのようにして正しい方法で届けられるか。クリエイティブなデザインハウスという原点を意識して、ビジネスを展開していくことが大事だ。その余白はたくさんある。

WWD:バッグ以外も手掛ける可能性がある?

ベッカーCOO:もちろん。大事なのは、いつ・どのようなカテゴリーを、どのように拡大するか。消費者にとって予想外かもしれないけど、生活に馴染むような視点と共に手掛けていきたい。ブランドのルーツに通じていることが重要だ。クリエイティブに面白いことを手掛けるには、ビジネスの視点も必須。新たに開拓するのはアパレルかもしれないし、他のカテゴリーかもしれない。挑戦するスペースはたくさんあるので、試行錯誤していくつもりだ。

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