ファッション

ケリングのキーマンが語る循環 永遠の価値の創出・技術革新・土壌

 サステナビリティ先進企業として知られるケリング(Kering)。傘下ブランド「グッチ(GUCCI)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」などからは続々と、着実で、時にユニークなサステナビリティ施策が発表されている。その支援を行っているキーマンの一人、ジェラルディン・ヴァレジョ(Geraldine Vallejo)=サステナビリティ・プログラム・ディレクターにケリングが目指すサーキュラリティについてオンラインで話を聞いた。

WWD:ケリングが考えるサーキュラリティとは?

ジェラルディン・ヴァレジョ=サステナビリティ・プログラム・ディレクター(以下、ヴァレジョ):われわれのアプローチは、価値があり、長持ちする製品を作り、その価値をライフサイクルを通じて維持し続けること。それは、耐久性があり、修理ができ、再利用できるようにデザインされ、永遠に価値を保ち、第2、第3の人生でもずっと使用してもらえる製品を意味します。また、適正量を生産することは、循環のループを低速化することにもつながります。AIを用いて販売量を予測し、過剰在庫を回避しています。生産に関しては、再生型の資源を用い、生産工程で危険な化学物質を使わないことを重視しています。

 サーキュラリティは、私たちに革新をもたらす機会だと考えています。そもそもサーキュラリティは、私たちにとって新しい考え方で、新しいクリエイティビティでもあり、ノウハウでもあり、高品質なモノを作るということでもあります。

WWD:サーキュラリティ実現に向けた具体的な実践例は?

ヴァレジョ:ケリングのブランドにはリセールプログラムがあり、「アレキサンダー・マックイーン」や「バレンシアガ」は二次流通のプラットフォーマーであるヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)やリーフラント(REFLAUNT)をパートナーとして、同プログラムを展開しています。また、「グッチ」ではヴィンテージアイテムを丹念に修繕し、「グッチ」の実験的なオンラインスペース“ヴォールト(Vault)”内で再販しています。クリエティブ・ディレクターとグッチの専任アーキビストによって厳選されたヴィンテージアイテムのコレクションで、職人たちによって復元され新たな命が与えられたアイテムたちです。

 商品を(サーキュラリティの)ループ内にとどめ、サーキュラリティへのアプローチに顧客にも加わってもらおうというアイデアであり、同時に新しい顧客にも届く方法でもあります。

 大切なのは、われわれが環境に与えるネガティブな影響を減らし、天然資源を枯渇させることなく、会社にとっても顧客にとっても価値を生み出し続けることなのです。

WWD:「バレンシアガ」や「グッチ」ではデジタルファッションやメタバースなど非物質化へのアプローチも始めている。

ヴァレジョ:メタバースやデジタルは探求しているところです。デジタルユニバースの実際の影響やデジタルファッションの(負荷の)計測に関してもより多くの方法や研究を探っています。また、サンプル制作においては、素材が節約できる方法を確立しています。

WWD:「土壌を枯渇させたらサーキュラリティが実現しない」という考えから、環境再生型農業にも力を入れているとか。

ヴァレジョ:われわれラグジュアリーブランドは、コットン、シルク、ウール、レザー、カシミヤなど天然素材を多く使います。もし正しい方法で生産されれば自然にとっても土にとっても有益になり得ます。そのために、サプライチェーンの初期段階である農場や地域で適切に実践されていることを確実にしなければなりません。環境NGOであるコンサーベーションインターナショナル(Conservation International)とパートナーシップを組み、自然再生基金を立ち上げました。ファッションやラグジュアリーファッションの鍵となる材料のサプライチェーンで100万ヘクタールを再生するというものです。具体的には農家や牧場主を支援し、自然、人、動物と調和した農業へアプローチしています。有機物や生物多様性を回復できれば、その過程で炭素を土壌に閉じ込めることができます。また、土地や水域を回復し、動物福祉を改善させる地域密着型の農業を推進しています。農家自身もよりよい生活を送ることができるようにもサポートしています。この方法を確実にし、さらに規模を拡大していきたい。

WWD:ケリングはスタートアップ企業とのパートナーシップも重視している。

ヴァレジョ:彼らの力がなければサステナビリティは達成できないと考えています。このまま同じようにビジネスを続けると、目標は達成できません。スタートアップ企業には、他の産業の技術を応用してファッション産業に活用する力もあります。今、われわれが焦点を当てているのは、新素材、サーキュラリティとアップサイクリング、染色、プリンティング、フィニッシングなどの加工とトレーサビリティ(追跡可能性)です。

 もっとも将来有望なイノベーションのひとつが、代替素材です。例えば、ラボで育ち、レザーの特性に似ている材料を開発するビトロラボ(VitroLabs)に投資しましたし、マイセリウム(キノコの菌糸体)にも注目しています。

WWD:「バレンシアガ」が2022-23年秋冬に“エッファ(EPHEA)”という菌糸体ベースの材料を用いたコートを発表した。

ヴァレジョ:イタリアのSQIMというスタートアップと開発しました。量や厚みなど均質性を実現し、ここまでハイクオリティなものはファッション分野では初めてではないでしょうか。彼らは素材を、われわれはなめし技術を提供しました。イノベーションと受け継がれてきた技術を組み合わせ、そして「バレンシアガ」との幾度とないやりとりで実現しました。開発には1年以上かかり、素材のコアな部分にはプラスチックも合成物質も使っていません。それこそがわれわれや「バレンシアガ」にとって重要なポイントでした。ただ、一つだけ透明性という意味でお伝えすると、通常レザーには1mm以下の薄いコーティングがされていますが、そこには合成物質を使っています。

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